韓国で救急車とタクシーの事故 国民請願で厳罰要求


 ハフポスト日本版2020.7.10に「「救急車を足止めで、患者死亡」 処罰求める請願に約50万人 韓国」という記事が出ていて、非常に興味深かった。私自身、あまり韓国事情を知らないせいもあったのだが。(https://www.msn.com/ja-jp/news/national/救急車を足止めで-患者死亡-処罰求める請願に約50万人-韓国/ar-BB16zr5m?ocid=spartandhp)
 記事は、ソウルの話だが、胸の痛みを訴えた高齢者を運んでいた民間の救急車が、タクシーと接触事故を起こし、後で事故処理をすると主張した救急車に対して、タクシー運転者がすぐに対応せよと主張。そのために、病院への到着が遅れ、6時間後に亡くなった。すると、青瓦台の国民請願に、タクシー運転者を厳重に処罰せよという請願が、2日で50万集まったという内容だ。
 救急車に民間のものがあるのか。
 救急車とタクシーが接触して、タクシー側がクレームをつけることがあるのか。
 青瓦台の国民請願とは何か。
 遅れたのは12分だそうだが、遅れなければ、亡くなることはなかったのか。
 以上のような疑問が生じた。
 大分前だが、日本では救急車が来たら、ほとんどの車はきちんとよけて、救急車を優先的に通す習慣がドライバーに徹底しているのだが、韓国では、救急車に譲らない車がけっこうたくさんあるというような記事を読んだ記憶がある。本当にそうなのかと思って、ネット上の映像を調べると、いろいろな国の救急車走行映像があった。これはもちろん、常にそうだというものではないだろうが、何となく傾向がわかる。中国やインドでは、救急車へ譲る気配がほとんどない。あまりに車が密集しており、譲りようがないという面もあるようだ。ロシアやカナダは、譲る雰囲気はあるのだが、それを待たずに、救急車がどんどん進んで、救急車のドライブレコーダの映像だが、ぶつかりそうな場面がいくつもある。救急車の運転技術が高いのだろう。一番譲る運転が徹底しているように見えたのは、日本とドイツだった。日本は、ほとんどの車が譲った上で停車している。他の国は、停車せずに、動きながら譲ろうとするので、かなり救急車の進行が阻害される場面がある。韓国は、中間的な感じだった。譲らないのではないが、日本やドイツのようにきっちり譲る感じではない。ちなみに、その映像は、韓国人がアップしているものだと思う。(ハングルと英語で国名が書かれている。)
 民間救急車に驚いた私が認識不足だったようで、韓国では増えているという情報があり、また、日本でも民間救急車があることがわかった。当然、有料で、公的救急車とは違って、緊急走行はできず、通常通りの信号に従う。だから、緊急の患者ではなく、病気の人を安全に運ぶためのものだ。しかし、韓国の民間救急車の映像を見ると、サイレンを鳴らしてかなりのスピードで走行していた。記事から推測すると、通常の公共の救急車と同じように、救急患者を病院に搬送することが、韓国ではあるのだろう。もしかしたら、民間救急車だから、タクシー運転手もその場の対応を要求したのかも知れない。
 青瓦台の国民請願というのは、文政権が始めたもので、請願が20万を越えると、青瓦台からの回答があるということだ。もちろん、請願がそのまま受け入れられるわけではないが、回答義務を政府が自ら課している。しかも、ホームページ上で行われるので、公開である。吉宗の「目役箱」のような秘密の訴えではない。だから、とんでもない検討違いの要求もあるらしい。国民の声を吸い上げる、しかも公開で自由に請願でき、一定数になれば、公式の回答がある、というのは、民主主義的な政治としては、かなり思いきったもので、政権としては、かなりの覚悟が必要だろう。おかしなシステムとは思わない。日本でも考えていいのではないか。(以下に実態の紹介がある。https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52419?pd=all )

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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