安倍元首相狙撃考察5 山上は本当に犯人か?

 安倍元首相の殺害については、大きな疑問が当初からあった。そして、それはほとんど解決されていない。つまり、解明するような情報が提供されていないということだ。
 安倍氏に致命傷を与えたにもかかわらず、一度に6発の弾が発射される他の4弾で、誰も怪我をしていない。流れ弾に被弾する人が必ずいるような状況であるにもかかわらずだ。だから、あの銃は実際には空砲であって、弾はでないのではないかという推理も存在する。
 それから、一発目の射撃があって、安倍氏が振り向くが、二発目は、テレビではまったく映像が切られてしまう。当然二発目の状況も、もとの素材には映されているはずであるのに。これまで、私は、撃たれた瞬間だから、残酷な映像であるとしてテレビではカットしているのだと思っていたが、どうやら違うようだ。
 しかし、ネットには二発目が撃たれたときの安倍氏の状況の映像がある。

 これを見ると、実は二発目はあたっていないと考えられる。致命傷になるような被弾をすれば、そのまま崩れ落ちるとか、衝撃があるはずだが、安倍氏は自分で降りて、うずくまるようにしている。安全確保のために、そこまでは自分の意思で行動しているように見えるのである。そして、致命傷ではなくても、実際に被弾すれば、反射的な動作があると思うが、それもない。つまり、実際には、安倍氏は山上の射撃を受けていないというのが、この映像でえられる強い印象である。
 そこで山上の銃は実際には弾を発射していないという可能性が高くなる。だから、流れ弾にあたった人もいないのだと、合理的に推察することができる。
 
 こうした疑問にひとつの答えを与えるものが、山上は犯人ではなく、他の人が射殺したのだという説だ。
 正しいかどうかは別として、ここに明確な回答をあたえているのが、副島隆彦氏である。
 詳細は読んでほしいが、山上が犯人ではない、というのは、上の映像をみての結論であり、そのことは私も同意する。しかし、そのあとは、すべて副島氏の推測であって、私としては、首をひねるところがほとんどだ。
 とにかく、副島氏の推測を整理すると、
・安倍氏がかがみ込んだあと、防御するために、複数のひとたちが安倍氏を覆うようにした。SPと警護のひとたちだ。そして、SPが非常に小型の銃で、安倍氏の首筋から下に向けて2発撃った。消音器付きであったことと、大混乱のなかだったので、気付かれなかった。
・CIAとバイデンの意思で実行された。
・岸田はそのことを知っていて、アメリカから3兆円の武器購入で合意した。
・安倍はCIAと統一教会からご用済みになったために殺害された。
 
 これがだいたいの骨子である。そして、この見方は、前に紹介した一月万冊の佐藤章氏と完全に逆である。佐藤氏は、安倍氏はアメリカの意図を日本で実現するための代理人(ストロングマン)であり、それを失ったバイデンとブリンケンには大きな痛手であると語っていた。
 どちらが正しいのだろうか。あるいはどちらも間違っているのか。
 佐藤氏の認識は、安倍氏とアメリカの関係については、常識的なものであり、納得できるが、山上が犯人であるという前提にたっている。しかし、映像を見る限り山上が撃ったと考えるのは無理がある。だから、犯人は誰かという問題が生じてしまう。それに対して、副島氏は、山上が犯人ではないことから出発しているが、SPが射殺したとか、それを命じたのがCIAであるというのは、完全に憶測であり、安倍氏がアメリカから用済み、つまり、目障りな人間になったというのだが、その具体的な事例はあげていない。そして、何よりも、アメリカ政府は、政府の要人の暗殺を禁止しており、アメリカによって殺害されたオサマ・ビン・ラディン等は、明確にテロリストの首謀であるという位置づけだから、政府の要人ではない。プーチンや金正恩すら暗殺しようとはしていない。何故安倍氏が暗殺されねばならないのか、説得的な根拠をあげていないから、そこはあまり説得力がない。通常の日本人には、安倍氏がアメリカに都合のよい政策をどんどん岸田政権に迫っていたように見える。防衛費の増大や憲法改正、そしてかつては集団的自衛権の容認など。だから、安倍氏はアメリカにとって、重要人物であったとみる方が自然である。もちろん、それは表面的なことで、裏では違うのだ、ということはありうるが、副島氏は、その具体的根拠をあげていないのだから、かなり突飛な推論にみえてしまう。
 しかし、山上のではない銃で殺害されたとしたら、覆い被さった護衛たちの誰かが撃った以外はありえないだろう。高いビルから正確に狙える銃で撃ったということも、理屈上はありえるが、安倍氏は台から降りて、うずくまり、警護のひとたちが覆っていたのだから、安倍氏に命中させることはまず無理だろう。警護にあたってしまう。しかし、警護は誰も怪我をしていないのだ。だから、SPと警護がぐるになって射殺したという可能性が、どうしても推察としてでてくる。
 そこで、SPが単独で実行し、あたかも山上が撃った弾があたったかのように、その場で皆に思わせて、その後の対応策をみなでとったのか、あるいは、そこにいたSP、奈良県警の警護担当者、そして、自民党関係者がみなぐるだったのか、という問題が出てくる。しかし、後者のような想定は、かなり無理がある。命令者が誰かということは別に問題となるが、誰にせよ、複数の団体の、誰が当日来るかわからない(特に奈良県警の担当者は急遽決まったはずだ)人すべてが、安倍暗殺という極秘任務を、多くの人がみている前で正確に実行できるとは思えないし、そうした意志統一ができるとも思えない。必ず通報者がいるはずだ。とすると、SPが単独で実行し、皆に山上の弾があたったと思い込ませたという可能性しか残らない。しかし、誰がどういう行動をとり、誰がみているかわからないときに、誰にも悟られずに、安倍氏を小さな銃を身体に接した形で撃つなどということが可能なのか。もしそうだとしたら、かなりの能力をもち、かなりの訓練をしていたのだろう。やはり、想定しにくいことだ。ちなみに副島氏は、みなぐるだという説だ。
 
 では、その命令者は誰なのか。いくつかの条件が必要だ。
・実行部隊が警察の人間であるのだから、警察の上層部、あるいは警察を動かすことができるひとたちである。
・安倍氏に、存在してもらっては絶対的に困るほど、利害が対立しているか、あるいは安倍氏を憎んでいる勢力である。
 警察のトップは、有名な安倍引き立て人事で長官になった人物であり、警察機構が安倍氏の暗殺を計画するだろうか。また、検察はかなり安倍氏に恨みをもっているとしても、それならは、暗殺するよりは逮捕起訴したほうが、合法的に安倍氏を政治的に葬り去ることができる。また、安倍氏への強烈な批判意識をせっているリベラル派が、暗殺という手段をとるとは思えないし、また、警察官に命令など絶対にできないだろう。
 CIAは可能だと思うが、私はどうしてもCIAがやったとは考えにくいと思う。それは、安倍氏が用済みになったのならば、政治的権力を奪えばいいだけではないか。アメリカ政府は、日本の首相の何人かを失脚させているのだから、安倍氏を政治的に失脚させることなど、簡単にできるはずである。安倍氏にはスキャンダルはいくらでもあるのだから、それをどんどん宣伝させて、検察を動かせばよい。むしろ、そういうスキャンダルがあっても、安倍氏を守ってきたわけだ。用済みになったとしても、暗殺する以外の手段がいくらでもある。
 
 もっとも、SP個人の犯行だということもありうる。個人としてのSPがCIAなどの命令を受けてか、あるいは個人的恨みで実行したということも、理屈上はありうる。その場合には、当然既に、逮捕されているのではないか。警察庁をあげて調査しているのだから、すぐに割り出されるだろう。少なくとも、これまでの発表では、そうした事実は明らかになっていない。
 
 もうひとつ、山上とどのように連携できるか、ということが残っているが、インターネットで調べれば、安倍に敵愾心をもっている人物を探し出して、励まし、けしかけるなどは、組織力を駆使すれば、十分に可能だろう。
 
 ということを考えていくと、わかることは、山上が撃ったわけではないと考えざるをえない点以外は、すべて闇のなかという感じなのだ。推理をしても、必ず不合理が出てくる。真相が明らかになることはあるのだろうか。
 
 

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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