部活の地域移行問題

 教師不足を改善するために必須なこととして書くつもりだったが、「部活動は「本当に地域移行できるのか」問題のカギ 教員の「善意・ただ働き」という前提から脱却を」という記事が出され、部活の地域移行の難しさについて書かれているので、そこに絞って書くことにした。
 
 教師不足の改善に必須なことは、第一に教師に対する行政側の教師侮蔑的政策をやめることを前回書いたが、あとは具体的に、教師にとって、必須とはいえない、過剰な労力を必要とする仕事をやめることである。そして、その第一候補が部活に他ならない。部活指導をやめるのではなく、部活そのものを廃止するということだ。部活指導を地域の指導者に移管するなどという中途半端なことは、さまざまな部活問題を解決することにはならないし、また、教師の過重労働を改善することにもならない。

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日本テニス協会は何のためにあるのか

 テニスの全仏オープンで、ボールをボール・ガールにあててしまって、失格(さらに賞金とポイントの剥奪、そして罰金)となった加藤選手に対して、「処分は受け入れざるをえない」という声明を、日本テニス協会がだしたということで、ネット上ではたいへんな批判が巻き起こっている。私も、「テニス協会」って、なんのためにあるのか、と疑問をもたざるをえなかった。ルールにしたがって、ということらしいので、どのように説明されているのかを、元のものを見る必要があると思った。テニス協会のホームページにいくと、たしかに、以下のような声明文があった。全文を引用しておく。
 
加藤未唯選手が、困難な状況を乗り越え、全仏オープンのミックスダブルスで優勝しました。
日本テニス界にとっては、昨年の柴原瑛菜選手に続く快挙です。加藤選手のプレー、そして
ティム・プッツ選手とのコンビネーションは、とても素晴らしく感動的でした。温かい
ご声援を頂いた日本中のファンの皆さまには、心より感謝申し上げます。

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スポーツマンシップは死語に? 全仏テニスの裁定

 大学院時代からしばらくは、近くのテニスクラブやテニスコートでテニスをしていたので、4大大会などをテレビでよくみていたが、転居してからすっかりテニスからは遠のいてしまった。だから、あまり見なくなっていたが、全仏の加藤失格問題には驚いた。ダブルスの試合中、相手側にボールを返したときに、そのボールがボールガールの頭部にあたって、審判は警告をしたのだが、相手の選手が、それに対して抗議をして、ボールガールが泣いている、そして血がでていると主張して、結果的に、加藤組が失格になったというものだ。日本での報道だから、すべて正しいかどうかはわからないが、その処分に対して、猛烈な抗議が寄せられ、テニス協会も処分の撤回を求めているし、本人も訴えているという。この場合の撤回を求めている処分とは、それまでの全仏での勝利による賞金と獲得ポイントを没収するというものだ。試合を再度やりなおすというのは、非現実的なのだろうが、獲得賞金とポイントはもとに戻すことができるから、当然の主張であろう。
 
 多くのひとと同じことになるだろうが、驚いたことが3つある。

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藤浪再び 気持ちではなく技術・訓練

 藤浪晋太郎の話題は、もういいと思っていたのだが、藤浪の談話にびっくりしたのと、私がいいたいことを、すごく明確に示してくれる映像があったので、再度書くことにした。
 びっくりした藤浪の談話というのは、最初にストライクをとれるようになれば大丈夫だ、ということと、4分割でコントロールするのはとても無理で、2分割でできるように頑張りたいということだ。最初にストライクをとろうと思っていても、とれないから、プロ生活の大半を苦労してきているのだろうと思うのだが、いまだに、なにかのきっかけで、最初にストライクをとれるかのように思っているらしいこと。そして、4分割のコントロールが無理だというのは、正直なのかも知れないが、私はプロの野球では、投手として通用しませんといっているようなものではないか。まともなプロ野球の投手であれば、9分割でのコントロールを意図し、せめて6分割で確実にコントロールできる状態だろう。2分割でコントロールしたいということは、それもできていないということだから、アマチュアレベルだということになる。
 
 この間、藤浪話題での元プロ野球選手のyoutubeなどをたくさんみたが、野球の科学というようなことが、いかに遅れているかを実感した。そして、いかに精神論的感覚をもっているひとが、プロ野球で、それなりの実績を残したひとでも多いことを感じた。藤浪の問題は、絶対に精神的な問題ではない。技術的なことだ。しかし、どういう技術で、どういうトレーニングをすればよいのか、まだまだ未確立なのだとわかった。
 前にも書いたが、投手の投球は、勢い(力・速度・曲がり方の鋭さ)とコントロールというふたつの要素がある。そして、勢いのほうは、小さいころからずっと練習しているなかで、身につけやすいものだ。基本的には腕を振るスピードが大きければ、速い球になるだろう。もちろん、投げ方によっても差がつくが、基本は腕振りのスピードである。だから、速く振ろうと努力して投げれば、少しずつ速い球を投げられるようになる。そして、その感覚は、小さいころからやってきたなかで、つかんでいるといえる。
 しかし、特に、若い速球投手でコントロールが優れているひとが少ないのは、コントロールをつけるために必要なことは、なかなかわからないし、また、わかったとしても、長い時間がかかるような気がする。正確なコントロールを身につけるということは、低めの外角すれすれのストライクを投げるときの、すべての身体の動きが、投球動作の流れのなかで一定の形を常に保持できることによって実現するはずである。そういうコントロールは、キャッチャーに同じところにミットを構えてもらい、そこにたとえば20球続けて正確に投げられるまで、練習する、というようなことで身につけてきた。そういうやり方をすることが多い。そうして、そういう身体の感覚を覚えていくわけである。そして、内角高め、内角から外に逃げるカーブ、等々、自分で投げられる種類の変化球ごとに、身体に覚えさせる。コントロールというのが難しいのは、それぞれの異なった種類のボールを違ったところに投げわけるのは、当然微妙に体型が違うのだが、あまりに違えば、どういう球がくるか、打者にわかってしまうから、できるだけ、投げ方を近づけなければならない。極端にいえば、違う球種の違うコースを投げわける一定の身体形態の種類を、できるだけ同じ形にする必要がある。だから、多種の球種をほとんど見分けのつかない同じフォームで投げることのできる投手は、滅多にいないことになる。それだけ難しいことだが、しかし、科学的なトレーニング方法が確立すれば、コントロールがよいことは、投手にとって当たり前のことになるはずである。
 
 前には、そうした体型維持のためのトレーニングとして、クラシックバレエがあると書いたが、もっと分かりやすい映像をみつけた。
 井原高校の新体操演技の映像だ。これをみれば誰にでもわかることだが、激しい動きをしているが、絶対に形が崩れてはいけない。そして、何度も練習して、かならず決められた動きを正確にできなければならない。それは、その動作を繰り返すことだけでは、決して実現できないはずであり、それぞれの動作をするために必要な筋肉を、効果的に鍛えるトレーニング方法を採用しているはずである。そして、かなりダイナミックな動きの連続だから、瞬発力も必要だ。一定の体制を保つための保持力、飛んだり回転したりする瞬発力、そして、動作を次々に変化させて、一定のスピードで実現できる力、そうしたことがすべて揃わなければ、この演技はできないが、投球も基本的には同じである。投球はわずか1秒程度で終了するが、それを100回同じように繰り返すことができて、一流の先発ローテンション投手ということになる。
 
 日本の野球も、ぜひ早く、こうした科学的トレーニングの方法を確立してほしいものだ。藤浪に期待するのは酷だろうが。
https://youtu.be/mqm1lDPIn6g

高い目標をもつこと(大谷とエル・システマ)

 今日は、普段雑多に考えていることについて書く。
 大谷翔平は、誰にも大きな驚きを与える存在だが、私が最も驚くのは、生活のすべてを野球の向上のために使い、常識的な付き合いすら断ってしまうほどの、ストイックさである。日ハムの新人としてはいったときに、先輩の食事の誘いを断ったとか、それは今年ヌートバーと再開して、食事に誘われたときにも、「寝るから」といって断ったというように、一貫した姿勢であり、ニューヨークで試合のためにいっても、まったく街にでないので、街の印象もないという徹底ぶりだ。それだけではなく、食事も、完全に野球のためのものにして、定期的に血液検査をし、それに基づいて栄養を考えるのだそうだ。味はほとんど気にしないとか。練習方法も、おそらく専門のスタッフがいるのだろうが、二刀流の実現するための必要なトレーニングを開発し、無駄なことはしないのだそうだ。

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藤浪のノーコンは、合理的なトレーニングが確立していないからではないか

 藤浪が先発ローテーションから外れ、リリーフに回されてから、2回出場したが、いずれも、これまで同様の荒れ具合で、ますますひどい評価になっているようだ。高校時代の実績では、藤浪のほうが大谷より上だったのに、この天と地ほどの相違がなぜ生まれたのかは、やはり、人間の成長に関して普段から考えている身としては、興味をもたざるをえない。
 そこで、藤浪にとって屈辱的であり、以後まったく浮上できなくなってしまったきっかけであるといわれる、161球の投球をみてみた。便利な世の中になったもので、この全投球をコンパクトにまとめている映像がyoutubeにある。これは、非常に興味深い映像だった。
 藤浪の球は、映像で見ている限りでも、非常に威力があることが感じられる。そして、まったく打者が手が出ないような球も、たくさん投げている。もちろん、四球はたくさん出していて、死球もあった。とんでもない暴投もある。なにしろ、近年161球も投げさせるようなことは、まずないから、これはかなり貴重な場面だ。8回まで投げているので、普通であれば、6回くらいで交代させている。それを交代させなかった金本監督が、見せしめにしたのだ、とか、懲罰的に投げさせたのだ、とか言われている。金本監督の顔も何度も映されるが、とにかく、厳しい顔つきをしている。確かに、この乱調に怒っている雰囲気が、ひしひしと伝わってくる。

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大谷の顔面への投球は

 4月24日(日本時間では25日)の試合で、大谷翔平に対して、うまくよけなければ、確実に顔を直撃する投球があった。何度もビデオをみたが、本当にきわどいタイミングでよけており、大谷の反射神経のよさを印象づけるものでもあった。あたったら、かなり深刻な事態になった可能性すらあった。
 投手が退場になるのかと思ったが、まったくそんな雰囲気もなく、審判もとくに注意したようにはみえなかった。日本なら、確実に危険球判定で退場ではないだろうか。しかし、大リーグはここらの考えが違うようだ。日本では、とにかく、頭部近くの危険な投球をしたら、危険球とみなされて、退場になることがある。しかし、大リーグでは、危険球であるかどうかは関係なく、報復死球とみなされると退場になるようだ。そうした映像を集めたものが、youtubeにあるが、投球が打者にあたったと同時に、躊躇することなく、球審は退場を指示している。そして、そのほとんどが、特に危険な箇所にあたったものではなく、あてられた打者も、特別痛がっている風でもない。つまり、危険な投球ではなく、「報復」をしたことが退場になるのだという。

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月並みだが、大谷と藤浪の違い

 ヤフーニュースが、4月21日は大谷翔平、22日は藤浪晋太郎の記事で大賑わいになったという。もちろん、大谷は称賛の渦、藤浪は非難の渦と、正反対なのだが。それぞれ単独はもちろん、二人の比較も散々に書かれ、語られている。なにしろ同じ年齢で、同時に高校野球の時代から、話題の選手であり、とにも、プロにはいって、当初はライバルであったのは事実だ。藤浪もプロの最初の2,3年は、阪神の中心的な投手として活躍したのだから。しかし、金本監督になって、まったく活躍できなくなって、そのまま大リーグに挑戦したので、大リーグで藤浪を獲得するチームがあるのか、と当初は信じられなかったほど、日本では低迷していた。それに対して、大谷は、大リーグ2年目あたりで肘の故障が見つかり、手術を受けるなど、大変な時期もあったが、それ以外は、極めて順調に成長してきた。大谷ほどの選手で、これほど、年々成長し続けている人も珍しい。二人を比べるのもおこがましいし、散々されているけれども、自分自身で重要なことを確認したいという目的で、二人の違いを比較してみたい。
 
 結論になってしまうが、すべての日常性が、二人の相違を作り出しているということだろう。

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野手が投手として救援

 普段野球中継のテレビは見ないので、当然記事で知ったのだが、ネットでニュースをみていたところ、次の記事かあった。
「江夏豊氏 “原采配”野手の投手起用を厳しく批判「果たしてそれがプロの姿なのか」」
 要するに、巨人・阪神戦で、大差がつけられたところで、原監督が、二塁手である増田を投手として投げさせたことに対して、江夏が客に対して失礼であるという批判をしているということだ。どういうことだったのか、検索してみたが、全投球をみることができる映像があったので見てみた。(URLを記入すると、youtube動画が直接出てしまうので、問題があるかもしれないと思い、記入しないことにした。「増田大輝 投手」で検索すると、見られるので、興味ある人はみてほしい)

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巨人の低迷 原因は

 私の若いころは、プロ野球は、「人気のセ、実力のパ」と言われていた。ただし、巨人のV9時代は、実力でもセリーグがパリーグを上まわっていた。なんといっても、巨人が9年間も日本シリーズを制していたのだから、実力はセ側にあった。現在は、明らかに「人気のパ、実力もパ」というのが、大方のひとの実感だろう。実力がパリーグが上であることは、交流戦や日本シリーズでわかるが、人気も明らかにパリーグのほうが上だろう。その証拠のひとつが、テレビのCMに出る野球選手である。ほとんどがパリーグの選手、あるいはパリーグ出身の選手で、最近村上がでているのが、久しぶりのセリーグの選手という感じだ。巨人の選手がCMに採用されなくなって、ずいぶん経つ。CM起用は、人気があることが絶対条件だから、巨人の選手がでないということは、人気が明らかに落ちている証拠になる。

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