大学スポーツ国際大会へのソマリア代表参加 アスリートへの侮辱か

 少し前から、大学スポーツ国際大会の女子100メートルで、ソマリア代表が、断トツの遅さでゴールインしたことが、話題になっていた。それが、今日、サンデーモーニングで、中畑清が、アスリートを侮辱している、大喝だ、と気焰をあげていたのだ。早速記事にもなっている。「中畑清さんが大喝!大学スポーツ国際大会の陸上“素人出場問題”に「アスリートへの侮辱…許せない」」
 私自身、このレースの映像を何度もみたが、途中で、あまりに遅いので、画面から消えてしまい、一人だけゴールした場面が、あとに出てくるというものだ。けっこう肥満体で、とても陸上選手とは思えないことは、この映像でわかる。そして、当初から「素人」なのに出た、と書かれているので、おかしなこと書くなあとは思っていた。大学生たちの大会なのだから、みなプロではないはずで、そういう意味ではみな素人ではないか、と。

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水泳界で、再びトラブルか

 2大会連続のオリンピック代表選手だった五十嵐千尋という選手が、ツイッターで、水泳連盟を批判したということで、話題になっている。「「日本は世界から出遅れている」五十嵐千尋が日本水泳連盟を糾弾!声を上げられない現実に訴え「もっと選手の意見に耳を傾けるべき」」という記事だ。
 これで、すぐに思い出すのは、千葉すず選手の訴えだ。自由形の選手だった千葉すず氏が、表にでている規準によれば、当然代表選手に選ばれるはずであるのに、選ばれなかったことを不服として、仲裁委員会に提訴したのだったと記憶している。これには賛否両論あり、千葉を非難する人も少なくなかったし、正しいことをいっていると応援する人もまた多かった。私自身は、応援派だった。スポーツの世界で、幹部やコーチを批判することは、かなり難しいのだろう。私自身は、スポーツ、とくに野球が好きで、若いころはずっとやっていたが、あくまで草野球の世界で、部活にはいったことはないので、詳しいことはわからないが、ただ、部活などのとんでもない非常識な階層社会的なことが嫌で、部活にははいらなかったわけだ。たとえば、当時中学の野球部では、1年生はボールを握ることもできず、ただ先輩たちの練習を遠くからみていて、声をだすだけということだった。本格的に野球ができるようになるのは、2年生になったからだというのだ。そんな世界に入りたくなかったので、そのまま草野球を続けた。
 それは、部活のスポーツは、他の種目でも似たようなものだった。それだけ不合理なことが横行している世界だから、上を批判するなどということは、とんでもないことだったに違いない。そういう意味では、千葉すず氏の訴えは、非常に勇気があるものだったし、そして、事実その後の水泳連盟の運営が変わり、それによって、不振だった日本の水泳界に活気が戻り、世界大会でメダルがとれるようになったのである。

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部活の地域移管問題 2 

 前回は、スポーツや文化は多様になっているので、多様な要求に学校の部活という形態は対応できないものになっていて、弊害が多くなってきたことをのべた。その解決としては、地域に多様なクラブを設立して、自分の求める形態の活動をしているクラブを選択して参加するようにすればよい、という主張であった。
 今回は、もうひとつの部活の問題である、教師の無償労働の問題を考える。
 
 部活は学校の内部的な活動として行われるが、正規の学校教育の一環ではないので、その指導にかかわる教師は、どんなに長時間指導しても、その対価が支払われることは、つい最近までなかった。近年では、ごくごくわずかな手当がだされるようになっているようだが、到底、指導にかかる労働に見合うものではない。そして、問題は、無償労働であるにもかかわらず、何か事故があったときには、責任を問われるのである。もちろん、民事的な損害賠償責任を負うのは、国家だから、そうした責任を教師個人が負うことはないが、不注意による行政処分などは十分にありうる。不十分ながらの手当がだされるようになった経緯は、詳細には知らないが、教師の過重労働が社会問題化し、その大きな要因が部活指導になることが、大きく問題になったから、せめて手当を出すということになったのだろう。残念ながら、サービスをうける側からの提起はあまりなかったようである。

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部活の地域移行問題

 教師不足を改善するために必須なこととして書くつもりだったが、「部活動は「本当に地域移行できるのか」問題のカギ 教員の「善意・ただ働き」という前提から脱却を」という記事が出され、部活の地域移行の難しさについて書かれているので、そこに絞って書くことにした。
 
 教師不足の改善に必須なことは、第一に教師に対する行政側の教師侮蔑的政策をやめることを前回書いたが、あとは具体的に、教師にとって、必須とはいえない、過剰な労力を必要とする仕事をやめることである。そして、その第一候補が部活に他ならない。部活指導をやめるのではなく、部活そのものを廃止するということだ。部活指導を地域の指導者に移管するなどという中途半端なことは、さまざまな部活問題を解決することにはならないし、また、教師の過重労働を改善することにもならない。

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日本テニス協会は何のためにあるのか

 テニスの全仏オープンで、ボールをボール・ガールにあててしまって、失格(さらに賞金とポイントの剥奪、そして罰金)となった加藤選手に対して、「処分は受け入れざるをえない」という声明を、日本テニス協会がだしたということで、ネット上ではたいへんな批判が巻き起こっている。私も、「テニス協会」って、なんのためにあるのか、と疑問をもたざるをえなかった。ルールにしたがって、ということらしいので、どのように説明されているのかを、元のものを見る必要があると思った。テニス協会のホームページにいくと、たしかに、以下のような声明文があった。全文を引用しておく。
 
加藤未唯選手が、困難な状況を乗り越え、全仏オープンのミックスダブルスで優勝しました。
日本テニス界にとっては、昨年の柴原瑛菜選手に続く快挙です。加藤選手のプレー、そして
ティム・プッツ選手とのコンビネーションは、とても素晴らしく感動的でした。温かい
ご声援を頂いた日本中のファンの皆さまには、心より感謝申し上げます。

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スポーツマンシップは死語に? 全仏テニスの裁定

 大学院時代からしばらくは、近くのテニスクラブやテニスコートでテニスをしていたので、4大大会などをテレビでよくみていたが、転居してからすっかりテニスからは遠のいてしまった。だから、あまり見なくなっていたが、全仏の加藤失格問題には驚いた。ダブルスの試合中、相手側にボールを返したときに、そのボールがボールガールの頭部にあたって、審判は警告をしたのだが、相手の選手が、それに対して抗議をして、ボールガールが泣いている、そして血がでていると主張して、結果的に、加藤組が失格になったというものだ。日本での報道だから、すべて正しいかどうかはわからないが、その処分に対して、猛烈な抗議が寄せられ、テニス協会も処分の撤回を求めているし、本人も訴えているという。この場合の撤回を求めている処分とは、それまでの全仏での勝利による賞金と獲得ポイントを没収するというものだ。試合を再度やりなおすというのは、非現実的なのだろうが、獲得賞金とポイントはもとに戻すことができるから、当然の主張であろう。
 
 多くのひとと同じことになるだろうが、驚いたことが3つある。

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藤浪再び 気持ちではなく技術・訓練

 藤浪晋太郎の話題は、もういいと思っていたのだが、藤浪の談話にびっくりしたのと、私がいいたいことを、すごく明確に示してくれる映像があったので、再度書くことにした。
 びっくりした藤浪の談話というのは、最初にストライクをとれるようになれば大丈夫だ、ということと、4分割でコントロールするのはとても無理で、2分割でできるように頑張りたいということだ。最初にストライクをとろうと思っていても、とれないから、プロ生活の大半を苦労してきているのだろうと思うのだが、いまだに、なにかのきっかけで、最初にストライクをとれるかのように思っているらしいこと。そして、4分割のコントロールが無理だというのは、正直なのかも知れないが、私はプロの野球では、投手として通用しませんといっているようなものではないか。まともなプロ野球の投手であれば、9分割でのコントロールを意図し、せめて6分割で確実にコントロールできる状態だろう。2分割でコントロールしたいということは、それもできていないということだから、アマチュアレベルだということになる。
 
 この間、藤浪話題での元プロ野球選手のyoutubeなどをたくさんみたが、野球の科学というようなことが、いかに遅れているかを実感した。そして、いかに精神論的感覚をもっているひとが、プロ野球で、それなりの実績を残したひとでも多いことを感じた。藤浪の問題は、絶対に精神的な問題ではない。技術的なことだ。しかし、どういう技術で、どういうトレーニングをすればよいのか、まだまだ未確立なのだとわかった。
 前にも書いたが、投手の投球は、勢い(力・速度・曲がり方の鋭さ)とコントロールというふたつの要素がある。そして、勢いのほうは、小さいころからずっと練習しているなかで、身につけやすいものだ。基本的には腕を振るスピードが大きければ、速い球になるだろう。もちろん、投げ方によっても差がつくが、基本は腕振りのスピードである。だから、速く振ろうと努力して投げれば、少しずつ速い球を投げられるようになる。そして、その感覚は、小さいころからやってきたなかで、つかんでいるといえる。
 しかし、特に、若い速球投手でコントロールが優れているひとが少ないのは、コントロールをつけるために必要なことは、なかなかわからないし、また、わかったとしても、長い時間がかかるような気がする。正確なコントロールを身につけるということは、低めの外角すれすれのストライクを投げるときの、すべての身体の動きが、投球動作の流れのなかで一定の形を常に保持できることによって実現するはずである。そういうコントロールは、キャッチャーに同じところにミットを構えてもらい、そこにたとえば20球続けて正確に投げられるまで、練習する、というようなことで身につけてきた。そういうやり方をすることが多い。そうして、そういう身体の感覚を覚えていくわけである。そして、内角高め、内角から外に逃げるカーブ、等々、自分で投げられる種類の変化球ごとに、身体に覚えさせる。コントロールというのが難しいのは、それぞれの異なった種類のボールを違ったところに投げわけるのは、当然微妙に体型が違うのだが、あまりに違えば、どういう球がくるか、打者にわかってしまうから、できるだけ、投げ方を近づけなければならない。極端にいえば、違う球種の違うコースを投げわける一定の身体形態の種類を、できるだけ同じ形にする必要がある。だから、多種の球種をほとんど見分けのつかない同じフォームで投げることのできる投手は、滅多にいないことになる。それだけ難しいことだが、しかし、科学的なトレーニング方法が確立すれば、コントロールがよいことは、投手にとって当たり前のことになるはずである。
 
 前には、そうした体型維持のためのトレーニングとして、クラシックバレエがあると書いたが、もっと分かりやすい映像をみつけた。
 井原高校の新体操演技の映像だ。これをみれば誰にでもわかることだが、激しい動きをしているが、絶対に形が崩れてはいけない。そして、何度も練習して、かならず決められた動きを正確にできなければならない。それは、その動作を繰り返すことだけでは、決して実現できないはずであり、それぞれの動作をするために必要な筋肉を、効果的に鍛えるトレーニング方法を採用しているはずである。そして、かなりダイナミックな動きの連続だから、瞬発力も必要だ。一定の体制を保つための保持力、飛んだり回転したりする瞬発力、そして、動作を次々に変化させて、一定のスピードで実現できる力、そうしたことがすべて揃わなければ、この演技はできないが、投球も基本的には同じである。投球はわずか1秒程度で終了するが、それを100回同じように繰り返すことができて、一流の先発ローテンション投手ということになる。
 
 日本の野球も、ぜひ早く、こうした科学的トレーニングの方法を確立してほしいものだ。藤浪に期待するのは酷だろうが。
https://youtu.be/mqm1lDPIn6g

高い目標をもつこと(大谷とエル・システマ)

 今日は、普段雑多に考えていることについて書く。
 大谷翔平は、誰にも大きな驚きを与える存在だが、私が最も驚くのは、生活のすべてを野球の向上のために使い、常識的な付き合いすら断ってしまうほどの、ストイックさである。日ハムの新人としてはいったときに、先輩の食事の誘いを断ったとか、それは今年ヌートバーと再開して、食事に誘われたときにも、「寝るから」といって断ったというように、一貫した姿勢であり、ニューヨークで試合のためにいっても、まったく街にでないので、街の印象もないという徹底ぶりだ。それだけではなく、食事も、完全に野球のためのものにして、定期的に血液検査をし、それに基づいて栄養を考えるのだそうだ。味はほとんど気にしないとか。練習方法も、おそらく専門のスタッフがいるのだろうが、二刀流の実現するための必要なトレーニングを開発し、無駄なことはしないのだそうだ。

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藤浪のノーコンは、合理的なトレーニングが確立していないからではないか

 藤浪が先発ローテーションから外れ、リリーフに回されてから、2回出場したが、いずれも、これまで同様の荒れ具合で、ますますひどい評価になっているようだ。高校時代の実績では、藤浪のほうが大谷より上だったのに、この天と地ほどの相違がなぜ生まれたのかは、やはり、人間の成長に関して普段から考えている身としては、興味をもたざるをえない。
 そこで、藤浪にとって屈辱的であり、以後まったく浮上できなくなってしまったきっかけであるといわれる、161球の投球をみてみた。便利な世の中になったもので、この全投球をコンパクトにまとめている映像がyoutubeにある。これは、非常に興味深い映像だった。
 藤浪の球は、映像で見ている限りでも、非常に威力があることが感じられる。そして、まったく打者が手が出ないような球も、たくさん投げている。もちろん、四球はたくさん出していて、死球もあった。とんでもない暴投もある。なにしろ、近年161球も投げさせるようなことは、まずないから、これはかなり貴重な場面だ。8回まで投げているので、普通であれば、6回くらいで交代させている。それを交代させなかった金本監督が、見せしめにしたのだ、とか、懲罰的に投げさせたのだ、とか言われている。金本監督の顔も何度も映されるが、とにかく、厳しい顔つきをしている。確かに、この乱調に怒っている雰囲気が、ひしひしと伝わってくる。

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大谷の顔面への投球は

 4月24日(日本時間では25日)の試合で、大谷翔平に対して、うまくよけなければ、確実に顔を直撃する投球があった。何度もビデオをみたが、本当にきわどいタイミングでよけており、大谷の反射神経のよさを印象づけるものでもあった。あたったら、かなり深刻な事態になった可能性すらあった。
 投手が退場になるのかと思ったが、まったくそんな雰囲気もなく、審判もとくに注意したようにはみえなかった。日本なら、確実に危険球判定で退場ではないだろうか。しかし、大リーグはここらの考えが違うようだ。日本では、とにかく、頭部近くの危険な投球をしたら、危険球とみなされて、退場になることがある。しかし、大リーグでは、危険球であるかどうかは関係なく、報復死球とみなされると退場になるようだ。そうした映像を集めたものが、youtubeにあるが、投球が打者にあたったと同時に、躊躇することなく、球審は退場を指示している。そして、そのほとんどが、特に危険な箇所にあたったものではなく、あてられた打者も、特別痛がっている風でもない。つまり、危険な投球ではなく、「報復」をしたことが退場になるのだという。

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