教職員の懲戒 横浜の事例から2

 新聞で報道された事例2は、以下の小学校教諭である。
 まず、教育委員会の公表を見てみる。
 
教職員の懲戒処分について
所 属 小学校
当 該 者 1 教諭(男性 40代)
2 校長(男性・50代)
処 分 日 令和4年3月25日(金)
処 分 内 容 1 懲戒免職(退職手当等全額不支給)
2 減給 10 分の1 3月
事 案 概 要
当該教諭は、令和2年度に担任していた学級において、配付物を配らない、
給食を極めて少量しか盛り付けないなど、特定の複数の児童に対する差別的取
扱を行った。

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教職員の処分 横浜の事例から1

 横浜市で、小学校教師が、特定の子どもに、配布物を渡さない、給食を減らす、試験を受けさせないなどを行ったので、懲戒免職にしたという記事があり、横浜市教育委員会のホームページをみてみた。他にもいろいろな処分事由があったので、ふたつを選んで、教職員の懲戒処分について考えてみたい。
 
 まずは、ある校長に対する「戒告」処分である。
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被 処 分 者 校長(60代・男性)
概 要
当該校長は、自身の印を副校長に預けて管理させ、事務職員が発注伺に押印すること
を黙認していたほか、発注伺を確認していなかった。そのため、事務職員が口頭発注等
を行ったことに気づくことができなかった。
また、当該校長は事務職員に自身のID及びパスワードを教え、決裁事務の一部につ
いて代行させていた。

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教育の公共性・多様性・選択

 佐藤年明氏による提起のなかに、公共性に関することがあった。昨日の回答では、あまり詳しく書かなかったので、この点に絞って、再度考察したい。
 「公共性」とか「公」という概念は、かなり人によって異なる意味に使われており、どれが正しいと決めるわけにもいかない。
 実は、教育学において「公」のつく言葉は、多様な意味に使われている。
 「公教育」と「公立学校」では、「公」の意味は明らかに異なる。「公立学校」は「私立学校」に対する意味で、自治体あるいは国家が設立した学校という意味であるが、「公教育」には、公立学校も私立学校も含むから、より広い意味、「全体に関わる」というような意味になる。しかし、その「全体」にしても、文字通り「教育全体」なのか、あるいは、「家庭教育」などを除外するのか、人によってイメージが異なるに違いない。
 そこで、教育における「公共性」概念について整理をするとともに、そこにある本当の論点は何なのかを考察していきたい。 

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佐藤年明氏の批判に応える 学校選択と公共性

 昨日、コメント欄に、佐藤年明氏から、私の大日方氏の『教育』論文批判に関するコメントに疑問、批判をされた旨の知らせがあったので、早速読ませてもらい、回答しなければならないと思い、長くなるので、コメント欄ではなく、ここに書かせていただきます。批判への回答のため、「である調」ではなく、「ですます調」にします。
 佐藤氏がとりあげているのは、私がこのブログに書いた「『教育』2021年11月号を読む 教育の私事性論は、どこに弱点があったのか」についてです。
 佐藤氏の批判は以下にあります。
 最初に、私の文章に対して丁寧なコメント、批判を寄せていただいたことに感謝を申し上げます。
 
 誤解もあるかも知れませんが、佐藤氏の指摘を、以下のように整理をしてみます。
1 国民の教育権論は、自爆したという表現があるから、使命を終えたのか、再建が可能、必要だと思っているか、明らかでない。
2 「どんなに熱意のない、学級通信などまったく作成する気もない教師にあたったからといって、委託してはいないから、本当に委託したい教師に自分の子どもを任せたいといっても、聞き入れられないのだし、国民の教育権論者は、そうした意識を受けとめなかったのである。」と書いているが、国民の教育権論は、「委託したのだから」などと説明していたのか。そんな国民の教育権論者はいないのではないか。
3 大日方氏の私事の組織化から公共性が実現するという論理をどう考えるか。

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入試問題ミス 全員加点は正しいのか? 名古屋大学でも

 名古屋大学の入学試験で、世界史の問題にミスがでたという。いろいろと疑問に思うところがある。
 毎日新聞(2020.2.27)によると、「名古屋大によると、ミスがあったのは中国史に関する文章に(3)~(15)の番号が付けられた空欄があり、該当する語句を埋めたり、関連の歴史事実を解答したりする問題。空欄に割り振った番号を誤り、結果として、四つの問題で解答が導き出せなくなった。」ということのようだが、二次試験なのに、穴埋め問題なのかとまず驚いた。149人の受験生なのだから、全問記述式でだすべきなのではないかと、まず私は思った。共通試験の記述問題導入が大きな騒ぎになったが、共通試験のような50万人も受ける試験では、当然コンピューター採点以外ありえないので、選択式だが、その代わり、二次試験で記述試験にするべきなのである。

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金沢大学医学部のトラブルとその報道への疑問

 読売新聞2022年2月23日に「准教授、連絡メールを「迷惑」扱い・緊急性ないのに警察通報…出勤停止3か月」と題する記事が出た。参考までに短いので全文を引用しておく。https://www.yomiuri.co.jp/national/20220223-OYT1T50079/
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 金沢大学は22日、同大の医薬保健研究域医学系の50歳代の男性准教授を出勤停止3か月の懲戒処分にしたと発表した。処分は14日付。
 発表によると、准教授は山崎光悦学長からの出頭命令を拒否し、連絡のメールを迷惑メール扱いとして開封しないなど業務放棄を行った。また、数年間にわたって同大職員に強圧的な言動を取り、緊急性がないのに警察に通報して職場秩序を乱した。

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大学での単位認定2 研究とオンライン

 オンラインが大学の単位認定に与える影響を前回考察したが、研究と教育についてを宿題にしていた。前回の続きの前に、昨日の毎日新聞に「博士課程院生への支援 学術への尊敬あるか=長谷川眞理子・総合研究大学院大学長」という記事があった。
 趣旨は単純で、日本政府が、大学院の博士後期課程に在学する院生に、経済的援助をする取り組みを導入し始めたが、これは欧米では以前から当たり前のことになっている。しかし、日本では授業料を払わねばならないから、勝負にならない。しかも、就職が困難だ。そのために、博士課程の院生が急激に減っている。それを打開するために、導入されるのだが、既存の分野をまたいだ研究に挑戦していることが条件だ。それはよいが、根本的に、日本は学術を尊敬する文化的土壌があるのか。
 こういう内容だ。
 この文章にはいろいろと批判したいところがあるが、ただ二点のみ指摘しておきたい。

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悠仁親王作文とワリエワドーピング問題の共通性

 筑附受験騒動が、とりあえず合格発表で、一区切りついたと思ったら、今度は作文問題だ。本当に忙しいひとたちで、メディアのネタを提供してくれているという意味で、メディアからは大いに感謝されているに違いない。ということはさておき、この問題をどのように考えるか。
 とりあえず、事実経過を整理しておくと、
 お茶の水女子大附属中学のときに書いた作文「小笠原諸島を訪ねて」が、優れていると学校が評価したということで、北九州市主催の「子どもノンフィクション文学賞」に応募し、佳作となっていた。それが、中に含まれる文章のなかに、参考文献を明示しない引用があったということで、週刊誌が暴露した。そして、異例なことに、宮内庁を通して、不十分な点があったことを認め、指摘に感謝するという回答があったというのだ。そして、コンクールの条件として、参考文献の明示等、著作権法に規定されている内容が、注意事項として明記されていたとされる。しかし、作文コンクールの主催者からは、無効にはしないという決定があったと報道されている。

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大学での単位認定 早稲田でのトラブルを考える

 早稲田大学のある授業で、オンライン講義での単位認定において、オンデマンドビデオを一度に複数ビデオを視聴していることが判明したので、単位を落したという報道がある。
 ビデオをきちんとみることが条件で、マシンを操作して、同時に複数のビデオを流すことができるようにしていることは、きちんと見ていないことが明らかだ、だから、授業を聴講したとはいえないという理屈である。それはそれなりに筋が通っているが、例によってコメントがたくさんついていて、賛否両論だ。
 事実だとしたら確かに問題だと思われるのは、その学部の学生で、春学期にも同様なことがあったが、そのときには、注意だけで単位は認定されたのに、秋学期に急に不合格にしたのは、継続性という点で問題があるという指摘があった。もし、なんの事前の説明もなく、対応を変えたのならば、確かに是認できないというのも理解できる。

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「吃音は誰が直す?」を読んで

 毎日新聞に『「きつ音」は誰が直す?女の子が帰宅を拒んだ理由」という青山さくら氏(児童相談支援専門職員)の文章が掲載されている。興味深い内容だ。
 小学校5年生で、吃音の女の子が、担任に「家に帰りたくない」と言ったので、学校が児童相談所に連絡、筆者が呼ばれた。一時保護を考えたが、そのうち「帰りたい」といったので、一緒に家までいき、事情を聞いた。
 大きな家だったそうだが、英語力をいかしてCAをやっていた母親が、週3回英会話教室に通わせ、言語聴覚士に頼んで、吃音を直そうとしていたことがわかる。母親は、無理をさせていることはわかっているが、将来のために、親としてトレーニングさせることは当たり前のことだ、と筆者に語った。実は筆者も、吃音の傾向があって、教室に通った経験があったそうだが、そういう治療はほとんど効果がなかったようだ。

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