教職員の懲戒 横浜の事例から2

 新聞で報道された事例2は、以下の小学校教諭である。
 まず、教育委員会の公表を見てみる。
 
教職員の懲戒処分について
所 属 小学校
当 該 者 1 教諭(男性 40代)
2 校長(男性・50代)
処 分 日 令和4年3月25日(金)
処 分 内 容 1 懲戒免職(退職手当等全額不支給)
2 減給 10 分の1 3月
事 案 概 要
当該教諭は、令和2年度に担任していた学級において、配付物を配らない、
給食を極めて少量しか盛り付けないなど、特定の複数の児童に対する差別的取
扱を行った。

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戦後のロシア人が真実を知ったとき

 普段は見ないが「サンデージャポン」が、ロシアの状況を扱うというので、少しみていた。子どもの頃から日本で育ったロシア人が解説していたが、現在のロシアの状況が映像で示されていた。プーチンを讃える歌を広場で歌う高齢者たち、それにくってかかる若い女性(直ぐに逮捕されて連行されていった)、教室でZマークの入った紙を配られて喜んでいる子どもたち、隊列でZマークを形成する子どもたち、つまり、プーチンを熱烈に支持しているひとたちの映像だ。そして、テレビでは徹底的に、ロシアの戦争の正当性が解説され、そして、ウクライナからロシアに連れてこられたひとたちが、ウクライナで酷い目にあっていたが、ロシア人が助けてくれたと語るのを、放映しているということだった。
 要するに、我々が日常見ているニュース映像とは、全く逆の「事実」を知らされている。完全に洗脳されているといってよいだろう。希望的観測ともなるが、やがてプーチンは敗北、没落するだろう。そのときに、全く逆の真実が、ロシア人たちに示される日が来る。そのとき、ロシア人たちが、どのような反応を示すのか、非常に興味深い。

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教職員の処分 横浜の事例から1

 横浜市で、小学校教師が、特定の子どもに、配布物を渡さない、給食を減らす、試験を受けさせないなどを行ったので、懲戒免職にしたという記事があり、横浜市教育委員会のホームページをみてみた。他にもいろいろな処分事由があったので、ふたつを選んで、教職員の懲戒処分について考えてみたい。
 
 まずは、ある校長に対する「戒告」処分である。
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被 処 分 者 校長(60代・男性)
概 要
当該校長は、自身の印を副校長に預けて管理させ、事務職員が発注伺に押印すること
を黙認していたほか、発注伺を確認していなかった。そのため、事務職員が口頭発注等
を行ったことに気づくことができなかった。
また、当該校長は事務職員に自身のID及びパスワードを教え、決裁事務の一部につ
いて代行させていた。

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「ウクライナ侵攻はありえない」論はどこが外れていたか

 ウクライナ戦線は膠着状態になっている感じがあるが、つい先日、ウクライナ侵攻はありえないと断定していた文章を見つけた。もちろん、そういう予想はいくらでもあったが、書名入りで、詳細な文章として見通しを書いているのは、あまりなかったような気がする。
 「ロシアのウクライナ侵攻はあり得ない、これだけの理由 ウクライナの悲劇と茶番劇」杉浦敏広 2022.1.26 JBpressである。
 この文章を検討してみたいと思ったのは、別に間違ったことを揶揄するためではなく、どこに予想が外れて、間違ったことを書いてしまったのか、その判断のどこが事実と異なって、予想と異なる事態が進展してしまったのかを探るためである。混沌とした事態の先を、正確に予想することなどは、ほとんど不可能なのだから、間違うこと自体は、私はそれほど不名誉なことではないし、また、訂正しながら、正しい認識に近づいていくのだと思う。しかし、やはり、冷静に間違いの所以を検討することが必要だろう。こうして文章を書いている私自身にとっても、他山の石とみなすべき文章だ。
 本人からの、現時点でどう考えているかの投稿はないようだ。

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ゼレンスキー演説への批判の検討

 昨日(3月23日)に、ウクライナ・ゼレンスキー大統領の、日本に対する演説が国会議員会館を通じて、オンラインで行われ、リアルタイムで全国に放映された。私ももちろん最初から終わりまで見たが、予想された強いものではなく、むしろ落ち着いた内容の、とても訴える力の強い演説だったと思う。私には、一番の力点は、ロシアに対する経済政策の継続と、戦後のウクライナ復興に対する援助を期待することだったと理解した。十分、ウクライナ情勢を理解している人にとっては納得できることだろう。もっとも、ロシアに対する経済制裁については、日本はそれほど徹底しているようには思えないので、今後、議論になるところではないだろうか。
 それはさておき、この演説の前後に、ネガティブな見解も出されていたので、それに対する意見を書いておきたい。
 
 まず事前の批判として、鳥越俊太郎氏が、戦争の一方の当事者であるウクライナ大統領にだけ、国会演説の場を提供するのは、公正ではないと批判していたことについて。

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ゼレンスキー大統領演説に、注目したいこと

 本日、ウクライナ大統領ゼレンスキーの、日本向け演説が行われる予定になっている。演説を聞いての感想は明日にして、その前に思うところを簡単に記しておきたい。
 何より注意して聴く必要があるのは、ウクライナの状況を知ることだ。直接日本人に語ることは、これまでなかったわけで、ウクライナの状況は、すべて報道によって知ってきた。しかし、報道には、必ずバイアスがかかっている。
 一番気になるところは、ウクライナは本当に大丈夫なのか、という点だ。キエフに対する前進が止まっていることは、ウクライナ軍が進攻を抑えているからだ、という報道がある。しかし、マリウポリは容赦なく攻撃されている。だが、やがてウクライナ軍が優勢になって、ロシア軍も損害が激しく、士気も低いので、やがて押し返されていくだろうという見通しも語られている。アメリカ筋から、さかんにそうした情報がもたらされている。

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『教育』を読む(2022・4) 都立高校の男女別定員を考える

    杉浦孝雄氏が「『都立高校男女別定員』問われていることは」という文章を書いている。私も昨年6月に、この問題について書いた。「都立高校入試のジェンダー平等を求める弁護士の会」が声明をだして、毎日新聞が記事にしたことかきっかけだった。
 そこで書いたことと、多少重なる部分もあるが、できるだけ視点を変えて、再度論じたい。6月の時点では、弁護士の会が、東京都教育委員会への要請を行ったのだが、その後9月に、東京都は、最終的には要求を受け入れ、3段階で男女合同定員に完全に移行することを決めたと、杉浦氏は書いている。
 杉浦氏の基本的立場は、男女別定員の設定は、歴史的な経緯もあり、また、むしろ女子の入学を守るアファーマティブ・アクションという側面もあり、また、男女が比較的同数に近く在籍していることの教育的利点もあるのだから、多角的に検討して、拙速に一律の方法を押しつけるべきではないというものだろう。

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読書ノート『プーチン 内政的考察』木村汎3 ロシア民衆はなぜプーチンを支持するのか

 ロシアのウクライナ侵攻が始まってから、ずっと、ロシア民衆の動向に注目が集まっている。結局、ロシアの民衆が立ち上がって反プーチンで力を発揮するか、あるいはプーチン側近のなかでの宮廷クーデターしか、この侵攻を止めることはできないのではないか、という期待のような予想があるからだろう。しかし、現時点では、オリガルヒの一部が戦争反対を控え目に述べたり、あるいは国外に逃げている人が出たりする程度で、宮廷クーデターという規模とはほど遠いようだ。 国民のプーチン支持は高く、また、ウクライナへの侵攻も支持率が高いといわれている。民衆の場合には、プーチン政権による徹底的なメディア支配のために、正確な情報に接することができず、プーチンによるプロパガンダしか見ることができないからだと説明されることが多いが、オリガルヒの場合には、おそらくロシアがウクライナで何をしているかは、ほぼ正確にわかっているだろう。にもかかわらず、多くはプーチンを支持しているように見える。不思議な現象のように見える。

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地下鉄サリン事件から27年

 今日は、27年前に地下鉄サリン事件が起きた日だ。1995年は、1月に阪神淡路大震災があり、3月にサリン事件、そしてその後の長いオウム捜査が始まった。windows95が、ネット接続を組み込んだために、それまでは研究機関等の限られた人でなければ、使いにくかったインターネットが、簡単に一般人も使えるようになった年でもある。
 松本サリン事件や坂本弁護士家族の失踪事件で捜査対象となっていたオウムの本部に、強制捜査の予定だったのが、オウムに漏れ、その前に地下鉄サリン事件が起こされたといわれているが、捜査は22日に行われ、ずっとテレビ中継された。サティアンなどと呼ばれた建造物が大勢の機動隊によって調べられ、当時小学生だった3女のアーチャリーが、機動隊に食ってかかっているような写真が新聞にのり、話題になったものだ。
 地下鉄サリン事件の捜査はなかなか進まなかったが、あるとき、心臓外科医としても有名な林郁夫が、別件で逮捕されていて、突然サリン事件の自白をしたようだ。それでサリン事件のほぼ全容がわかり、次々と実行犯が逮捕された。

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BBC受信料問題とNHK

 今年の1月に、イギリスのジョンソン首相が、BBCの受信料の制度改革を提起したことが、各国で議論になっているようだ。日本でもNHKの受信料をめぐっては、大きな問題となっている。各国の公共放送の受信料のあり方については、BBCが原型となっているということで、BBCが制度変更すれば、大きな影響を各国に与えるに違いない。ただし、ジョンソン首相にしても、また、日本の受信料否定論の場合も、ある意味リベラルな放送姿勢に対する保守的な立場からの拒否的姿勢が影響していることに注意する必要がある。BBCにしても、NHKにしても、それほどリベラルであるかについては、疑問があるが、政権の広報機関になりきっていないことは確かだ。根本的には、受信料を払って支える「公共放送」が必要であるかどうかが問題だろうが、その前にまずは各国の状況を踏まえておく必要がある。
 総務省の「公共放送の在り方に関する検討分科会事務局」が作成して「諸外国の公共放送の受信料制度の状況」という文書がある。

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