ロシアのウクライナ侵略戦争が、単なる軍事的な問題だけではなく、人間の心を腐敗させている現象が顕著に見られるようになった。もちろん、侵略戦争を起こしたロシアのエリートや、それに協力した北朝鮮の指導層は、もともと腐敗しているわけだが、それが民衆のなかにも浸透しているということだ。
「兵士の命を「金に換える」女たち…ロシア戦争経済が生んだ怪物「ブラックウィドウ」が社会問題化」
https://news.yahoo.co.jp/articles/c04c0915b417c75c96f515f9a586162935ed9e61
という記事は、ロシアの貧困層を中心とした腐敗と、ある意味そうせざるをえないほど追い込まれている彼らの悲惨さを鮮明に表わしている。
この記事は、ブラック・ウィドウと呼ばれる女性たちの話だが、兵士として応募できそうな男性と結婚し、その男性が兵士として応募し、ウクライナ戦線に送られる。そうして戦死、あるいは重傷を負う。そうすると、政府から慰問金等が支払われる。結婚したばかりの女性がそれを受けとるというわけだ。個人的に行うばかりではなく、斡旋業者までいるという。
記事によると、そうした莫大な実利をともなった結婚詐欺ともいうべき行為は、やはり、ウクライナ戦争によって現われたのだそうだ。
近代社会になってからの戦争を担っていたのは職業軍人と徴兵された兵士たちだ。したがって、戦死したときに慰問金が払われるとしても、莫大な金額ではなかったろうし、もともと徴兵制度だから、自分の意志で戦地に赴くわけではなく、あくまで選抜され強制されるわけである。しかし、ウクライナ戦争は、徴兵された兵士は、戦地に行かせないと、実態はともあれ、公的には表明されている。実際にウクライナ侵略の現場に派遣されるのは、主に、応募した兵士たちである。そして、絶対的ともいえる兵士不足だから、応募すれば、ほぼ確実に採用され、そして、かなりの確率で死亡する。そんな悪条件でも応募させるには、多額の金銭的保障を約束する以外にはない。実際に支払われる保障が100%とはいえないにしても、とにかく、まったくの空約束ではない。ここに、最初から戦死慰問金をあてにして、形だけの結婚をする女性が現われる基盤がある。もともとの家族の一員として出兵する場合は、貧困から家族を守るために自分が犠牲になる、という覚悟は、まったく理解できない、というわけではないが、独身男性が、そうした女性からの誘いに応じるのは、なかなか理解が難しい。生きてかえって、幸福な結婚生活を営めるという期待なのだろうか。
とにかく、ウクライナ戦争は、ロシアという国家が、国民をこれ以上ないほどの精神的腐敗をもたらしたことを、否定することはできないだろう。
さて、別の面での腐敗は、北朝鮮だ。金正恩が、ロシアに派兵したのに、約束の金銭を受けとっていないと不平をもらし、北朝鮮内部での不満が、兵士家族等にも広まっているという情報があったが、その具体的事例として、以下の記事があった。
「クルスクの地雷撤去のため派遣された工兵に「何の報酬も代価も払われていない」と金総書記が不満を吐露?」
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/5884d0a53cde0af758c2e682f474171bb20350f0
この場合、兵士たちは選抜されて派遣されるのだろうし、家族たちは、兵士がどうなっても利益をえることはないようだが、金正恩は違う。彼はもともと、ロシアに兵を派遣してえられる金銭は、ほとんど自分のものにしようと考えているという。国家的政策を実施する費用にもあてるのだろうが、自分の家族やエリート層の懐に入るものが多いに違いない。兵士たちの戦場での頑張り(給与)や戦死(慰問金)を横取りする政権の腐敗をどう表現したらよいかわからないほどだ。
金正恩ほどではないにせよ、権力者たちが腐敗することは、まったく珍しいことではない。しかし、国民も腐敗することは、時折見られる。自然災害などの際に、略奪が横行することなどは、そうした腐敗現象のひとつだろう。日本はそうした略奪が起きないことで、世界から驚かれているが、関東大震災のときには、かなり略奪があったと言われている。だから、堅固な民族性とはいえない。
また、団体旅行などで、旅先でのマナーの善し悪しで、日本人はマナーがよく、中国人は悪い、と言われることがあるが、私が小さいころは、日本人の旅行マナーが悪いという批判が頻繁にあった。「旅の恥は掻き捨て」などということばもよく言われていた。やはりこうした腐敗やマナーは、社会の環境によって変化するものだろう。貧富の格差が大きくないこと、生活できない極貧相がいないことなどが最低の条件になるように思われる。日本が批判されるような国にならないようにしなければならない。