高市首相は9条に頼るか

 高市首相の訪米にあわせて、トランプのホルムズ海峡防衛のための軍隊派遣要請を、日本はどうするのか、議論が高まっている。普段威勢のいいと思われるひとたちからも、絶好の機会だから軍艦を派遣せよというような声は、ほとんど見られない。せいぜい、トランプに強く言われたら断れないのではないか、という程度のものだ。つまり、積極的に派遣すべしという議論はほとんどないといっていいだろう。
 イラン戦争はイスラエルとアメリカが勝手にはじめたものであり、国際法違犯という声も強い。イランが対抗措置をとるのは、仕方ないといえるのである。圧倒的に軍事力の弱いイランがとれる少ない対抗措置がホルムズ海峡の閉鎖だ。イランを攻撃すれば、その対応は確実なものとして予想できたものだ。
 トランプは当初アメリカだけで、閉鎖させず、無事に海峡を船舶が通れるようにできると考えていたようだが、アメリカ海軍当局が無理だといったために、同盟国に軍艦派遣を要請したわけである。実に身勝手、見とおしの甘さが露呈した状況である。そして、EU諸国を中心に、消極的ではあっても、派遣しないという意思表明が続いている。そういう中で、日米首脳会談が設定されていたために、日本が踏み絵を踏まされる状況になっているわけである。
 さて、国益上、そして国民の期待上、高市首相としては、トランプの要請を断る必要がある。トランプをなんとかなだめつつ、要請を断ることができず、実際に軍艦を派遣でもしたら、今後の悪影響は長く続くことになるだろう。高市氏もそれはわかっているはずである。
 では、どういう論理で断るのか。これまでの国会答弁では、派遣は現行法上認められる範囲ではない、と答えていた。しかし、集団的自衛権を容認したのではないか、とトランプに突っ込まれた場合はどうなるのか。結局、最終的には、憲法に頼らざるをえないのではないかと、私は思うのである。
 もっとも強力な憲法改訂論者である高市氏が、トランプとの交渉のなかで、憲法を使わざるをえなくなるとしたら、これほど皮肉な場面はない。高市氏も、憲法九条のありがたみを、しみじみと味わうことになるのだろうか。
 「国際紛争解決の手段としての戦争」の放棄という条項は、絶対に変えてはならないということを、今進行中のイラン戦争は示しているように思われる。
 そして、アメリカは速やかに「勝利宣言」して撤退すべきである。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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