旅行者にとっての安全性ランキングという記事があり、とても興味深かった。「2026年、旅行先として「世界で最も安全な国」トップ15 日本は9位」という記事だ。筆者は
Laura Begley Bloom。
https://forbesjapan.com/articles/detail/86702
詳細は記事を読んでほしいが、いくつか感じたことがある。
ここで一位となったのはオランダだが、昨年は１４位だったそうだ。こうしたランク付けで、１４位から１位になるというのは、記事にも書かれていたが、まったく異例だそうだ。安全性への配慮のための施策が１年で飛躍的に進むということは考えられない。とすると、判断の指標の変化なのだろうか。記事では、オランダが急にトップになった理由は書かれていないのが残念だが、推測するに、おそらく指標の変化ではないか。
私は、ずいぶん前のことだが、オランダには１年ずつ２回生活したことがある。留学という形だが、特別な義務があるわけではないので（もちろん倫理的な研究義務はある）、やりたいことをやって暮らした。そして、たしかにオランダは一般的に安全な国だという印象はあるし、間違いないだろう。しかし、それでも、気をつけなさいと言われたことは、いくつかあった。
レストランや駅などで、ちょっと場を外すときには、かならず荷物はもっていくこと、置いたままだと、盗まれる危険がある、繁華街の夜は、概して安全だが、危険な地区はあるので注意が必要等々。
またオランダ社会全体としても、９１１以降は、イスラム教徒への嫌がらせなどもけっこうあり、移民に対する優等生という評価も、一時揺らいだ感があった。
しかし、私が滞在していた時期（１９９２年から、２００２年から一年）には、確かに殺人事件などの凶悪犯罪は、ほとんど報道されることがなかったと思う。特殊事例だが、政治家のフォルタインという人が、４００年ぶりの政治的暗殺で殺害された事件があった。しかし、オランダは、銃規制が厳しいので、凶悪犯罪は少ないが、窃盗などは多いと聞いていた。
日本が９位というのも少々驚いた。もっと上なのかと思っていたのだ。しかし、日本より上位の国をみて、納得した。国名をあげると、順に、オランダ、オーストラリア、オーストリア、アイスランド、カナダ、ニュージーランド、アラブ首長国連邦、スイス、日本、アイルランド、ベルギー、ポルトガル、フランス、英国、デンマークとなっている。人口が一億を超える国は日本だけであり、フランスと英国以外は、人口という点では、極めて小さい国ばかりである。部門別で、暴力犯罪と交通安全では、日本はトップになっている。
やはり、人口の多い国としては、日本は断トツ安全な国であり、それは旅行者にとってもそうなのだ、ということは確認できた。
旅行者と居住者では安全にとって重要なことに違いはあるかも知れないが、やはり基本的なことは同じだろう。犯罪が少ない、交通状況が整然としている、医療や事故等の緊急対策がしっかりしている、そして、差別などがなく、安心していられる、というようなことだろうか。そういう点では、日本は極めて安全な国だが、災害という点でみると、極めて危険が潜んでいるといえる。最近は熊に悩まされているが、旅行者にとっても居住者にとっても、熊の脅威は増えている。観光地を選べときに思いうかべる要素でもある。
すべての点で安全だということはなかなか難しいことのようだ。戦争に巻き込まれなければ、日本は今後も世界的に安全な国のひとつとして評価されつづけるだろうし、そうあってほしいものだ。