ロシアの凍結資産をウクライナ復興に使うということについて、日本政府が否定しているという記事がある。
https://www.ukrinform.jp/rubric-polytics/4067565-ri-ben-zheng-funiyoruroshia-dong-jie-zi-channoukurainanotameno-huo-yong-ti-anwo-ju-foubao-dao.html
EU加盟国のベルギーが、戦後ロシアに賠償・返還を求められたときに困るという懸念から、G7各国に対して見解を求めたというのである。その理由は、G7が賛成していれば、ベルギーに返還要求が強く求められることはないだろうという思惑だというのだが、それはいいとして、片山蔵相が不承知であると発言しているという記事である。しかし、記事の最後には、片山氏自身が否定したということを否定している、つまり否定する発言などしていないといっているというので、真相はわからない。
おそらくトランプが否定していることは、ありそうなことである。アメリカに加えて日本が否定すれば、やはり、G7としても、そしてEUとしてもまとまりにくいことになることはたしかだろう。トランプが否定する理由はわかる。当然ロシアの立場にたっているといってもいいトランプだから、ロシアに決定的に不利になるようなことに賛成しないのは自然だろう。それがトランプの本質を現してもいる。
しかし、日本はなぜ否定するのか。日本が管理しているロシアの凍結資産の使用については、多少の懸念があるとしても、ヨーロッパがおさえている資産をウクライナ復興にあてることは、極めて合理的である。日本はウクライナを一貫して支持してきたはずである。
ウクライナ戦争は、明確にロシアによる侵略戦争であり、しかも、ロシアはウクライナの民間施設に対する爆撃を多用している。つまり、国際法に禁じられている侵略と民間への攻撃という二重の違犯をしており、少なくとも戦後その賠償をウクライナはロシアに対して要求する権利があるといえる。この権利を否定したら、軍事力によって他国の領土を侵してはならないという原則は、意味をなさないことになる。戦争によって不当に失われた物的損失に対して、賠償を求めることは、これまで否定されていない。賠償請求を放棄した事例はあるが、それは個別的な事例である。
ただし、いつの段階でそうした賠償責任を認定するのか、どこがするのか、という問題は残る。したがって、ベルギーの懸念は仕方ないともいえる。そうした懸念を除くためには、できるだけ多数の国、とくに有力な国が足並みを揃えて、しかるべき組織で決定することが必要なのだろう。日本政府は、そのことに前向きであるべきである。ロシアが負うべきことは、賠償責任だけではなく、既に告発されているように、戦争犯罪に対する厳正な処罰もきちんと行うべきである。