安倍元首相狙撃事件から1年

 昨日は、安倍元首相が、選挙演説の最中に狙撃されて亡くなってから1年であった。そして、この一年間は、安倍氏が存在しなくなったことが原因と思われる、多くの出来事が生じたように思われる。そして、間もなく、犯人とされる山上容疑者に対する裁判が始まることになるだろう。
 私は、犯人が山上であることに、現在でも疑問をもっているのだが、大手メディアの報道については、心底不思議な感情をもってみていた。山上犯人説を否定する論は、簡単に「陰謀論」などと片づけている人が多いのだが、さまざまな情報をみれば、山上が犯人であるということへの疑問はたくさんあるのであって、そこに疑問をいだかないことのほうが、私には不思議に思われ、山上犯人決めつけ論こそ、陰謀論ではないか、とも思えてくる。大手かどうかわからないが、週刊文春だけが、山上犯人説への疑問記事を何度か掲載したが、その後他のマスコミがおいかけ記事をのせることもなく、なんとなく立ち消えになってしまった。とくに、私にとって不可解なのは、リベラルというひとたちは、山上犯人説をまったく疑っていないらしいことだ。疑問を強く押し出しているのは、確かに、非常に右寄りのひとたちが目立つ。しかし、政治的立場は不明の科学者もいる。リベラルというのは、自由な思考をし、単純にものごとをきめつけないひとたちであると思うのだが、この安倍銃撃事件については、公式にいわれていることを、まったく疑わず、その延長上で考えているひとたちばかりである。このブログを読んでいるひとたちはわかるはずだが、私は、もちろんリベラル派である。だから、不思議なのである。

 
 さて、私が、山上犯人説を疑っているのは、当日の映像を注意深くみたことがきっかけであるが、その後の捜査状況や、治療にあたった医師の発表と、司法解剖とされる発表とが、まったく矛盾していること、その他さまざまな理由からである。とりあえず、再度整理しておこう。
 
1 安倍氏が山上に撃たれたのであれば、横からの撃たれたのだから、その反対側に一瞬身体がふれるはずであるが、そういう動きはまったくなかった。
2 山上は、確かに発砲しているが、実に無造作に撃っていて、あのような撃ちかたで命中するのだろうか、という素朴な疑問、そして、手製の銃で正確に命中して命を奪えるのか。この点については、警察が山上の銃で検証をしたはずであるが、その結果は、公表されていない。
3 治療にあたった医師たちは、安倍氏は右側から撃たれたと発表したが、司法解剖は、左側から撃たれたとしている。しかし、司法解剖の見解だと、弾の動きに極めて不自然なところがある。
4 通常の手続からすると、司法解剖が本当に行われたのかも疑問がもたれる。遺体は、すぐに夫人にわたされ、東京に戻っている。司法解剖には、もっと日数がかかるとされている。
5 警察の護衛が、信じがたいほどにずさんなものであって、当日、映像をみたあとすぐに、私でもわかるほど、ぬけた護衛だった。あそこまで、おかしな護衛は、自然になされたと考えるのも妙な気がする。
6 犯罪が行われれば、すぐに警察は現場を封鎖、立ち入り禁止にして、入念に証拠の収集を行うものである。しかし、あのときは、数日間まったく現場を放置し、たしか5日後くらいに、封鎖して、山上が撃ったとされる弾の収集をして、数発発見したと発表している。もっとずっと軽い犯罪でも、現場封鎖して厳重な調べをするのに、日本の重要政治家が殺害されたのに、そうした通常の捜査手順をふんでいない。
7 弁護団がまだ何も要求していない段階で、早期に鑑定留置に踏み切り、しかも、通常の倍以上の期間を設定した。
 
 以上のように、山上が犯人であるかに関しても、また、山上をさておいても、警護や捜査、逮捕後の措置についても、たくさんの疑問点がある事件なのである。そして、統一協会に恨みをもった人間が、なぜ、一国の、最大実力者ともいうべき政治家を殺害しようとするのか。たしかに、安倍元首相は、統一協会との関係が強かったし、統一協会の伸長に協力した面はあるだろうが、母親から財産を吸いつくしたのは統一協会であって、安倍氏ではない。山上個人には、安倍氏を殺害する動機があったとするのは、無理がある。
 そもそも、歴史をみても、総理大臣や有力政治家を殺害した事件は、いくつもあるが、まったく政治的背景のない個人的な恨みからの犯行は、私の知るかぎり一件もないのである。まず、背景になんらかの組織があるものだ。政治家なのだから、政治的に対立する組織が、だれかに託して殺害をはかるのが通常だ。まして、山上の恨みの対象は、違う組織であり、また、山上の背後に、政治的組織があるようには報道されていない。
 
 もちろん、現在本当のことはわからない。また、永久にわからないかも知れない。しかし、裁判で、山上が自分はやっていないといいだす可能性が皆無ではないとも思う。おそらく、犯人でない場合には、なんらかの組織が背後にあるわけだから、そのような告白をしないように、つよく圧力をかけているだろうが。
 ただ、本当のことはわからない、ということは、自覚しておくべきことなのではないだろうか。山上を単純に犯人として、なんの疑問ももたないことのほうが、大きな問題である。
 

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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