木原官房副長官に関する文春記事

 木原官房副長官の隠し子疑惑なる記事を、週刊文春が書いていたことは知っていたが、そういうことには関心がないので、放置していたところ、関心をもたざるをえない話題で、文春記事がでた。これを知るきっかけは「一月万冊」だった。清水・安富両氏の対談で詳しくこの記事について語っており、また、佐藤章氏が、この記事の特ダネ性と政治的背景について語っていた。やはり、これは記事を読まなければならないと思って、購入し、早速読んでみた。内容は清水氏が紹介していた通りだったが、木原氏は、今本当に困っていると思う。名誉毀損で刑事告訴すると、文春関係者を脅しているそうだが、実際には無理だろう。
 
 記事の内容をごく簡単に整理すると
・木原氏の妻は、前の夫が不審死しており、一時再捜査の対象になっていた。
・前の夫がいた頃不倫していた男が、彼女が夫を殺してしまったと自分に告白していたと、証言している。

・不審死した前の夫の父親が、当日、貸していた車をとりに、夜中息子の家にいったところ死んでいた。彼はずっと不信を抱いている。
 
 この記事を読むかぎり、木原氏の妻の容疑はかなり確実性が高いと感じさせる。しかし、断固として否定していること、夫が政府の要人であること、などから、捜査は事実上、停止しているようだ。
 木原氏にとっては、かなり痛い記事であることは間違いないが、誤解してはならないのは、木原氏自身は、何も悪いことはしていないという点だ。悪いことをした可能性があるのは、現在の夫人である。もしかしたら、実際に妻を疑っているかも知れないし、その場合知っていてかばっているという点で、犯人隠匿罪の可能性がある、という人もいるが、家族を匿うのは、いってみれば当たり前のことで、その場合、隠匿罪の適用はほとんどなされないと、前に読んだことがある。むしろ、夫人の前夫が死んだときに、徹底捜査してくれていたら、あいつと結婚しないで済んだ、などといっているそうだから、ある意味非常に正直だし、また、逆に通常の感覚とは違う人なのだろうと思う。
 この記事が、木原氏にとって痛いのは、彼が政府の要人という政治家だからだ。たとえ、彼自身が悪事を働いていなくても、家族が、そうであれば、すくなくとも、政治家として地位を保持することは難しいだろう。
 
 この記事を読んで驚いたことは、木原氏のような経歴と、社会的地位を持った人が、通常ありえないような女性と結婚していたことだ。まさしく華麗なる一族である木原家の一員で、小さいころから外国生活をし、名門私立中高から東大法学部、大蔵省という、エリート街道を歩むべくして歩んでいる人である。そういう人の多くは、結婚は閨閥形成の一環である。現在、自民党の二世・三世議員で、有力議員である人は、ほとんどが有力政治家、大企業の経営者等々の娘と結婚している。そうすることで、政治家としての地位を昇っていくわけだ。もちろん、そうしない人もいるが、かなり遊び歩き、結婚も遅かったということだから、やはり、人間的感性が他とは違うようだ。別に批判的にいっているのではないのだが。
 木原氏が落選中に、親身になって支えてくれた人だったらしく、それに応えたということかも知れないが、一族がよく許したなあとも思う。「議員は、落選すればただの人」どころではなく、人によっては生活も大変になる。まさか、木原家の人だから、生活に困るようなことはなかっただろうが、彼女がホステスをしながら、生活を支えたようだ。
 
 そして、記事自体が主張していることだが、やはり、大物政治家の妻であるが故に、重要な犯罪の容疑者であるにもかかわらず、守られているということは、おかしなことではないだろうか。犯罪が事実だったとしても、木原氏と知り合うずっと前のことであり、木原氏自身は何ら関係がないことは、先述した通りだ。日本の殺人事件のかなりの部分が、家族や親族間、知人間のトラブルが原因だとされているが、まさに、そうした夫婦関係のこじれが原因であって、厳格に捜査される必要があることだ。しかし、現在の夫が政府の要人であることで、捜査が躊躇されるのならば、やはり、国民として納得できないだろう。
 
 岸田首相は、この件をどのように扱うのだろうか。一月万冊の佐藤章氏によれば、これは、完全に自民党内の反岸田派が、文春に密告したものであって、要は政争の一種であるという。こういう捜査情報は、通常の取材では決して明らかにならないと、佐藤氏はいっていた。だから、後追い記事もでないので、そのうち忘れられていく可能性もある。岸田氏は、それを待っているのだろうか。
 しかし、かなり高い可能性で容疑者である配偶者をかばい続ける人、あるいはかばうことをやめて、決着をつけられない人、そういう人が、一国の政治指導者の懐刀であるということは、いかにも日本の政治の劣化を感じさせてしまう。
 紙の保険証をなくしてしまうことは、変更なしだ、などと強弁して、国民の怒りをかっている人物だから、むしろ岸田政権にとっても、マイナスの人物になりつつある。切らざるをえなくなるだろう。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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