今後どうなるかはわからないが、ウクライナを応援するひとたちのほとんどが期待してきた事態が、少しずつ生じつつある。バフムトから撤退したワグネル舞台が、いよいよロシア領内にはいり、政府と、表面的には激しい対立状態になっている。報道によれば、ワグネルはロストフ州にはいり、そこの庁舎等の建物を占拠しており、また、プリゴジンは、ロシア側から攻撃をうけ、多数が死亡したと主張しているという。それにたいして、ロシア政府は、それはデマで、攻撃などしていない、としつつ、しかし、刑事犯としての捜査を開始したとのべているという。
また、ワグネル側は、ロシア軍のヘリコプターを撃墜したとも主張しているようだ。
こうした事態が報道されている以上、実際には何もないのに、フェイク報道がなされているとは到底考えられないだろう。あわせて、モスクワ市内では、装甲車が走り、厳戒体制が敷かれているという。やはり、小規模ではあるが内戦状態に突入しつつあると考えられる。ただ、ワグネルがはいったロシア領であるロストフは、アゾフ海の東端に位置するところで、ロシアの最南部のほうである。したがって、モスクワにはそうとう遠い。プリゴジンが、とりあえず、モスクワから遠く、攻められにくい地域を占領して、地方権力を樹立しつつ、モスクワと妥協の道を探ろうとしていると考えることもできる。
しかし、これだけ露骨に謀叛といえる軍事行動を起こされれば、政府としてもだまっていることはできない。おそらく、軍事行動を起こしたか、その準備をしていることは事実のはずである。ネットの意見をみると、プルゴジンが逮捕されるような予想をしている者もいるが、プリゴジンは、当然、ワグネル部隊に守られているはずであり、ワグネルは、ロシア正規軍よりは、強力な軍隊(ただし、装備は劣るだろう)だから、簡単に逮捕されるはずはない。実際に、そういう行動に政府がでたら、ますます内戦状態になるに違いない。
ワグネルは、民間傭兵組織のひとつであり、ロシア国内には、30もの同種の軍事組織があると、以前報道されていた。正規軍のなかに、プリゴジンを支持する者も少なくないとされているから、ワグネル、正規軍、軍事会社が、それぞれ思い思いに軍事行動に突入し、内戦状態がおこり、ウクライナに進駐しているロシア兵たちが、一切に帰国するという事態になることが、最も望まれるわけである。
プーチンとのできレースという見方もある。しかし、当初はそのつもりだったが、途中から、本当に対立に発展してしまうことは十分にありうる。ワグネルは、空港と軍の施設を接収したということなので、軍は抵抗しなかったようだ。いまロシアにいる軍隊など、バフムトで死闘をずっとやってきた軍隊にかなうはずがないから、いうことを聞かざるをえなかったのだろう。映像によるロストフの街は、静かな感じだ。しかし、これから刻々と情勢が変化していくのだろう。
ここ数日の動きをみると、意外に近く、ロシア兵の撤退が起きる可能性もでてきた。