今日(6月10日)の新聞(毎日、朝日等)は、在日エジプト大使館が、小池百合子氏の卒業証書は正式のものであって、週刊誌等の記事は、カイロ大学への名誉棄損であるとする声明を発表したことを報じた。一応共同通信の配信とされる毎日新聞の記事の一部を引用する。
「モハンマド・エルホシュト学長名の声明は「卒業証書はカイロ大の正式な手続きにより発行された」とし、日本のジャーナリストが証書の信ぴょう性に疑義を示したことは「大学と卒業生への名誉毀損で看過できない」としている。
カイロ大広報担当者は電話取材に「小池氏はカイロ大を卒業している。議論の余地はない」と強調した。(共同)」
小池氏のカイロ卒業問題は、本当にずいぶん前から折に触れ話題になっているが、今年に入って、まず黒木亮氏が、JBpressに何度も詳細な記事を書き、そして、最近、石井妙子氏の『女帝 小池百合子』という著書が出版されて話題になっている。更に追い打ちをかけるように週刊文春の記事である。
そういうなかで、今回のエジプト大使館を通してのカイロ大学の声明ということだが、この声明はどうもよくわからない点がいくつかある。
在日エジプト大使館のfacebookに声明が掲載されているということだが、かなりの在日大使館のfacebookは見ることができたが、エジプト大使館のものは見ることができなかった。制限がかかっているのだろうか。大使館としての日本人への広報機関だから、制限することに意味があるのだろうか。だから、オリジナルの声明文は読むことができなかった。
カイロ大学の学長の声明が、なぜ大使館のfacebookに掲載されるのかもよくわからない。
次に、一連のジャーナリストの記事は、大学と卒業生への名誉棄損であるとしている点である。他の記事には、法的措置をとる可能性を示唆してさえいる。しかし、私が読む限り、一連の記事が名誉棄損になるとは思えない。まず、小池氏の卒業問題は、国会議員選挙や都知事選に立候補するに際して、公表された学歴であり、まさしく扱っている内容が、公共の利益にかかわることであるし、また、調査によってかなりの真実性を感じさせるものであること、そして、これが真実であれば、小池氏は、公職選挙法に違反していることになるわけだ。こうしたことを考慮すれば、名誉棄損が成立するはずがないのであり、これが名誉棄損だったら、犯罪報道はすべて名誉棄損になってしまう。
もちろん、小池氏がカイロ大学を卒業したという取材記事を掲載している文章もある。プレジデントDigitalの2020.5.27「カイロ大学卒業は本当・小池百合子東京都知事の学歴詐称疑惑」と題する文章である。ここでは、現地のカイロ大学当局、当時の友人、当時や現在の教授に広く取材したところ、みんな、小池百合子は卒業している、しっかり勉強していた、卒論は必修ではなかった、試験で落第しても4年生で取り直すことが可能だった、などと、疑惑の論を一々反論している。そして、更に、疑惑派の人たちも、現地取材については、すべてが「小池氏は卒業した」との回答を得ているという点で共通しているというのである。
しかし、黒木氏の記事には、カイロ大学のいいかげんさについてもかなり厳しい指摘がある。事実、疑われるようなことがあるのだから、本当にカイロ大学が適切な試験を経て、小池氏が卒業したのならば、その資料を公表することで、小池氏の名誉も守ることかできるし、大学の名誉を守ることもできる。何人もの問い合わせがあったが、資料等を示しての回答はなかったようだ。本当に、大学が記事が名誉棄損であり、法的措置をとるというのならば、実行すべきだろう。出版社が責任をもって本にしたり、記事にしたのだから、裁判は覚悟の上だろう。しかし、裁判になれば、おそらく大学側が厳正な資料を提出せざるをえなくなるだろう。単位認定等の資料を提出せずに、卒業は正式だ、などというだけなら、それこそが大学の名誉を汚すものだ。
私は一連の文章を読んで、小池氏のカイロ大学の卒業は詐称だとの主張に、より説得力を感じる。
しかし、そのことと小池氏の政治家としての評価とは別である。もちろん、「学歴詐称するような人間だ」という評価は、つきまとう。本来、政治家にとって学歴は特別な意味をもっているわけではない。義務教育修了の資格だった田中角栄を考えればわかる。政治家は、あくまで政治家として何をしたのか、という点で評価されるべきだ。
そういう意味で、小池百合子氏は、政治家としてどうなのか。
私は、たんなるはったりの政治家だとしか思えない。一時マスコミにいたせいもあるのか、とにかく、自分を売り出す術においては、おそらく天才的な感覚をもっているといえる。コロナ騒動が起きているにもかかわらず、何もしないまま過ぎ、東京都が備蓄していた医療用のマスクや防護服を莫大な量、中国に寄贈してしまい、その後の医療機関の危機を招いた罪は免れないだろう。しかし、東京オリンピックが延期となるや、がぜんコロナ対策をなりふり構わずやるようになり、ちゃっかりと毎日自分がテレビに出るような宣伝まで作り出した。これを都知事選までつなげようという魂胆なのだろう。では、本当に、小池知事は、都知事として、しっかりした仕事をしてきたのか。私は東京都民ではないので、リアルにはわからないが、報道等で見る限り、混乱をさせることはたくさんあっても、成果をあげたことは、ほとんどないのではなかろうか。
たしかに、コロナ禍が深刻になったときの、キャッチフレーズなどは印象的であり、政府を動かすような雰囲気があったが、実際に都が実施したことは、言葉通りではないとも言われている。
何よりも、小池知事の仕事への疑問は、豊洲・築地問題だろう。豊洲は混乱させただけともいえるし、築地については、公約をほとんど守っていないようだ。
オリンピックについても、開催都市の知事でありながら、指導力を発揮しているとはいえない。競技の一部を地方にもっていこうとしたことがあったが、実現しなかった。
このように考えれば、小池知事の評価は自ずと決まっていく。ただし、メディア操作の上手なことは確かであり、票を獲得するのは、確実だろう。
しかし、そういう情報操作に長けた人たちが政権をとって、世界が酷い目になったことが、かつてあった。
何人かが指摘しているが、卒業証書や大学関係者の「証言」などよりも、本当に小池氏がカイロ大学を卒業しているかどうかを確認するには、カイロ大学の講義で使用しているアラビア語を確実に使える人に頼んで、小池氏に話しかけてもらうことだろう。大学での講義を完全に理解し、試験に合格するレベルの語学を習得していれば、その後、完全に忘れてしまうことはないだろう。まして、小池氏は、カイロ大学卒業を売りにしてきたのだから、折に触れてアラビア語に触れているはずだから、かなり流暢なアラビア語で対応するのではないだろうか。「形式」を不正で入手することはできるが、「実力」を不正で入手することは、絶対にできない。