最近の韓国騒動で思うこと

 結論からいえば、日本はなんてだらしない国家になったのだろう、ということだ。今回の騒動の発端は、よく言われているように徴用工に関する韓国の最高裁判決という前提で考える。長い歴史があるから、その判決もひとつの展開点に過ぎないわけだが。
完全かつ最終的解決とは
 徴用工判決については、私も大方不当だと思っている。しかし、100%日本が正しいとは思っていない。日本の報道では簡単に言葉だけで済まされている1965年の日韓条約の「 財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」には、「両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。」と書いてある。これが、「完全かつ最終的」の根拠であるが、この協定そのものには書かれていないのだが、議事録(当時は公開されなかったが、大分たってから公開された。)に、韓国人への個人補償は、日本からの支払いのなかから、韓国政府が行うという確認があるわけである。しかし、それは正式な条文には書かれていない。双方が確認したのに何故条文に盛り込まなかったのかはわからない。おそらく、韓国政府は、個人補償に使う気はなかったのだろう。実際に、極めてわずかしか個人補償にはまわさず、経済発展のための投資に資金をまわしたのである。 “最近の韓国騒動で思うこと” の続きを読む

いじめでの教師懲戒が再び問題になっているが(2) 親の対応

 前回は、学校での検証作業こそ大事であり、それを実行するための条件について書いた。今回は、親に関して書く。
 天童市の事例に限らず、いじめによる大きな被害があったとき、「学校がもっと真剣に対応してくれれば、こんなことにはならなかった」と被害者の家族は述べる。天童市の事例でも、そのような発言がしばしば紹介されている。このように発言することは、間違いではないし、確かに、学校がもっと真剣に対応すれば、悲劇はもっと減るだろう。しかし、悲劇を避ける手段を、最も確実にとりうるのは、親なのである。このことは間違いない。
ハンナ・アレントの場合
 20世紀後半の最も偉大な政治哲学者であるハンナ・アレントは、ユダヤ人であるために、学校で日常的な差別にあっていた。当時のユダヤ人差別は、今のいじめより、はるかに酷いものだった。そのとき、アレントの母親は、学校に適切な対応を求め、それが実質的にとられない限り、娘を学校に行かせないという対応をとった。そのために、学校は真剣な対応をとらざるをえなくなり、アレントは再び通学できるようになったのであるが、このときの母親のとった行動が、アレントが教育問題について考える基本になっている。「リトルロックについて考える」という短い文章のなかで、「子どもはまず何よりも家族と家庭に属する存在である」と書いている。 “いじめでの教師懲戒が再び問題になっているが(2) 親の対応” の続きを読む

いじめでの教師懲戒がふたたび懸案になっているが、必要なのは当事者たちによる真摯な検証だ

 昨年の12月に、「いじめ防止対策推進法」の改正案として、いじめの疑いを把握しながら放置した場合、その教師を懲戒処分にするという提案がなされ、多くの反対によって、とりあえず提案としては取り下げられた形になっているが、ふたたび、懲戒規定を設けるべきであるという動きがあると報道されている。この問題について、以前にも書いたが、新しい動きということで、再度検討したい。新たな動きといっても、論点そのものはそれほど変わっていないだろう。

 懲戒処分の推進を主張しているひと達(「いじめから子供を守ろう!ネットワーク」)が、高く評価する懲戒事例がある。
 いじめを受けて大怪我をした中学一年の男子を病院に連れて行く教師に対して、顧問が「階段で転んだことにしろ」と隠蔽の指示をしたという。被害生徒自身がそれを聞いていたので、自分もそのように病院で述べ、全治1カ月との診断だった。ところが、副顧問が、学校側に「いじめによるけがだった。教諭から虚偽の説明を指示された」と報告したために、顧問の指示はすぐにばれてしまい、大会への出場を禁じたが、顧問はこれを無視して出場させた。加害者たちは、以前にも下級生に対するいじめや暴力をしていたことが判明していた。この顧問の教諭が停職6カ月の処分を受けたということである。 “いじめでの教師懲戒がふたたび懸案になっているが、必要なのは当事者たちによる真摯な検証だ” の続きを読む

安倍内閣の外交音痴

 日韓の対立がますます激化しているが、日本政府の予想を超えて、韓国が、日韓軍事情報包括保護協定を破棄する決定をして、日本政府は衝撃を受けていると報道されている。佐藤正久外務副大臣は、BSフジの番組で、「愚かだ。間違った判断だ。安全保障環境を考えればありえない。」と韓国を厳しく批判したそうだ。(時事通信2019.8.22)
 しかし、韓国による徴用工判決以来の安倍内閣のやり方をみていると、まるで生徒会のようだと感じる者は少なくないのではないか。安倍首相は、外交が得意だと自分たちでは宣伝しているが、私の見る限り、外交が最も苦手な首相である。内閣としても、外交は極めてお粗末というべきだろう。 “安倍内閣の外交音痴” の続きを読む

今日は日航ジャンボ機事故の日だが

 34年前の今日、日航ジャンボ機が御巣鷹山に墜落した。その年は、私が大学に就職した年で、初めての講義などの準備で忙しかったせいか、細目は憶えていないのだが、とにかく大事故だったし、有名人が多く犠牲になったり、また、生存者がいたりということで、ずっと話題になっていた。しかし、肝心の事故原因については、当時から既に公表されたことについては、多くの疑問があり、しかも、今日まできちんと明らかにされたことがない。事故当日から既に、さまざまな疑問が投げかけられ、政府も、日航も、またボーイング社も、まともな調査とその公表をしたとは、考えられていない。 “今日は日航ジャンボ機事故の日だが” の続きを読む

ドイツの自転車道事情

Der Tagesspiegel(2019.7.20)が、ベルリンの自転車道問題を扱っている。(Mit dem Rad gegen die Wand 自転車で壁に)日本でも、自転車はかなり問題になっている。日本では、どこを走るのか、歩道になったり、車道になったり時代によって変わってしまう。また、歩道がないときに、右側通行なのか左側通行なのか。これも時代によって変化したと思う。私は、自転車には乗らなくなったが、車を運転しているときには、自転車にはかなり気をつかう。逆に歩行者として、危ない目にあったこともある。歩道を歩いていたら、角になっているところを、猛スピードで走ってきた自転車に危うくぶつかりそうになった。ぶつかったら大怪我をしていたろう。最近では、自転車とぶつかっての死亡事故もある。 
 肝心の法律が変わるというのは、本当に問題だ。一番気をつけてルールを学んだときの感覚が、ルールが変わっても引きずられるからだ。 “ドイツの自転車道事情” の続きを読む

犯罪加害者の表現の自由3 『止まった時計』

 少し視点を変えてみよう。『絶歌』は、犯罪加害者本人であり、『少年A この子を生んで』は、未成年であったAの保護責任者である親が執筆したものであり、謝罪のための本である。では、直接本人に責任のない加害者の家族の著作はどうなのだろう。
 『止まった時計』はオウム真理教の麻原彰晃の三女が書いた自伝である。
 この本が出たとき、私はブログに、「津下四郎左衛門」を読むべきだと書いた。当人がそのブログを読んだことは、あとで確認した。しかし、残念ながら、その趣旨は伝わっていないし、活かされているとはいえない。長いが、当時かなり力をいれた書いたものなので、再度ここに掲載することにする。(biglobe のウェブリログからの転載) “犯罪加害者の表現の自由3 『止まった時計』” の続きを読む

皇室問題を考える3 小室氏から考えてみると

 小室問題は、ほとんど皇室の側にたった発想で論じられているものがほとんどであるように思われる。しかし、相手がいる以上、相手の立場はどうなのか、という視点も必要だろう。もちろん、個人的に知っているわけではないので、あくまで仮定による議論である。
 小室圭氏は、散々な言われ方をしているが、別に悪事を働いたわけではない。女性が白馬の騎士の出現や、玉の輿結婚を望む人がいるように、男性が逆玉結婚を望んでも、別に非難されることではないだろう。むしろ、同一大学に内親王がいることを知って、巧みに近づき、プロポーズして承諾を受けるというのは、並大抵の手腕ではない。平凡な男性には思いもつかないだろうし、思っても行動をとれないのではないか。そういう意味では、小さいころから、他人の援助を利用して、様々なスキルを身につけ、社会的に上昇しようとしてきた生い立ちを見ると、この行動は、その延長上にあるといえる。 “皇室問題を考える3 小室氏から考えてみると” の続きを読む

皇室問題を考える2 国民の総意への疑問が起きたら?

男系男子論への疑問
 現在の皇室典範は、男系男子で皇統が継承されることが規定されている。そして、これを絶対視する人たちは、日本の皇室は万世一系男系で継承されてきたからこそ、今日まで続いてきたのであり、それを壊すと、皇室制度そのものが破壊されてしまう。だから絶対にやってらならないことだと主張する。
 しかし、男系で続いてきたことは、系図等で見る限り事実だと思われるが、万世一系はかなり大きな疑問符がつく。万世一系は広辞苑で「永遠に同一の系統がつづくこと。多く皇統についていわれた」と書かれている。「同一の系統」とは、どこまでを同一と認めるのか。皇位は、政治的争い、武力衝突などによって争われたことは何度もある。壬申の乱はその代表だろう。これで天智系から天武系が移ったわけであるが、これも万世一系、同一の系統といえるか。称徳天皇で天武系の後継者がいなくなり、天智系の光仁天皇に移るが、系図的にみると、これでも同一の系統というのは、無理があるように思われる。鎌倉時代末期の大覚寺統系と持明院統系の両統迭立は、どうだろう。 “皇室問題を考える2 国民の総意への疑問が起きたら?” の続きを読む

ダイヤモンド・オンライン(草薙厚子氏)の安楽死記事の批判

 ダイヤモンド・オンラインに「日本人への安楽死適用が難しい理由、Nスペ安楽死のジャーナリストが語る」と題する草薙厚子氏の文章が掲載されている。https://diamond.jp/articles/-/207969?utm_source=daily&utm_medium=email&utm_campaign=doleditor&utm_content=free
 NHKスペシャルで放映された「彼女は安楽死を選んだ」という番組制作に取材した宮下洋一氏にインタビューをしての記事である。私は、最近ほとんどテレビをみなくなってしまったので、残念ながらこの番組を見ていないが、記事の紹介でだいたいはわかった。治療方法のない、確実に死亡する難病にかかった日本人の女性が、唯一外国人に安楽死の措置をすることが認められているスイスで、安楽死を実行した、そのドキュメンタリー番組である。
 しかし、この記事には、いくつかの勘違いと思われる部分があるので、それを指摘しておきたい。今週、私の授業で、安楽死を扱うことになっているという事情もあるのだが。 “ダイヤモンド・オンライン(草薙厚子氏)の安楽死記事の批判” の続きを読む