小泉環境相のニューヨーク訪問 ステーキを毎日食べたいって?

 追加の記事なので、簡単に。どうしても必要だと思ったので。
 小泉環境相は、期待されているようだし、大きく取り上げられている。国連の会議出席のためにニューヨークを訪れたと、今日ニュースで報道していた。いろいろと勉強して、吸収したいと語っていたそうで、それはとてもよいのだが、気になるのは、ステーキを毎日でも食べたいと述べ、早速、ステーキ店を訪れて食べたというのである。
 おいおい、という風に思った人は、環境問題を真剣に考えている人だろう。
 現在の環境問題のもっとも大きな柱のひとつが、温暖化を抑えることである。そのために必要だとされていることはたくさんあるが、牛肉問題もその主要なひとつだ。人々は豊かになると、牛肉を食べるようになる。グローバル化が進んで、牛肉は地球規模で食べられている。そのために、膨大な量の牛が飼育されている。しかし、他の動物と違って、牛の飼育は、地球環境を壊す様々な要素がある。だから、温暖化に敏感なヨーロッパでは、牛肉の消費量が目立って減少しているのである。
 では、どういう問題があるのか。
 まず、肉をとるための牛は、できるならば、放牧が望ましい。そのためには、広大な放牧場が必要である。そのために、アメリカの大資本は、アマゾンを切り開いて、放牧場や、もっと効率的な牛舎を建設している。アマゾンは、地球最大の熱帯雨林で、この熱帯雨林の伐採が、温暖化にとって深刻な要因となっていることは、周知の事実である。もちろん、現地の人たちの畑のためや、都市化するための伐採もあるが、それはそれとして問題であるが、アメリカ資本中心の牛肉産業界の伐採が、最もアマゾンを危機に陥れている。
 第二に、牛は、大量の餌を消費する。例えば、牛の餌のためのトーモロコシを、人間用のトーモロコシに切り換えて、人間が食べるとすると、その栄養効率は比較にならないくらい、改善される。つまり、莫大な餌を牛に与えて、わずかな牛肉を得ているのである。
 第三に、牛のだす様々な排泄物が、環境を汚染する。排泄物を再利用する仕組みもあるが、かなりの部分は、川や海に流れ込み、重大な汚染の要因となっているのである。なかでも、牛のだすガスは、二酸化炭素よりも温暖化に悪影響があると言われている。
 このような状況から、先述したように、環境問題にまじめな姿勢をもって生活している人は、次第に牛肉を食べなくなっているのである。極端にいえば、植物性蛋白からつくった、ビーフステーキまがいを食べている人もいる。私も、店でビーフステーキを注文することはない。家でもほとんど食べない。
 別に食べることを批判するつもりはないが、環境大臣という地位にある人が、毎日でもステーキを食べたいといって、それをニュースに流させるということは、どういうことだろうか。ほんとうに地球環境問題に取り組む意志があるのか、と若干疑ってしまう。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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