NHKスクランブル放送化を考える

 N国党が当選者を出すことによって、NHKをめぐる状況が変わっていくだろう。通勤で使う駅で時々演説していたので、パンフももらったし、存在はよく知っていた。しかし、あまり賛成はできないと常々思っていたが、いよいよ現実的な課題になり、また、NHKのスクランブル放送化に関する世論調査も行われた。だいたい賛否が3割ずつで、拮抗しているらしい。政党では規制の主な政党はだいたい反対の姿勢なので、当分N国党の主張が通ることは、しばらくの間ないだろう。
 スクランブル放送とは、許可した者だけが視聴できる仕組みで、NHKの受信料を支払った者だけが視聴できるということだ。スカパーがそうだ。アナログ放送では不可能だが、現在のテレビ放送はすべてデジタル化しているので、技術的に可能になっている。私はデジタル化した理由が、スクランブル化のためだと思っていたので、もっと早く問題になるのかと思っていたが、これは私の判断ミスだった。しかし、技術的に可能なことは、必ず実行しようとする者が現れるし、大きな流れで見れば、実現の方向に進んでいくものだ。
 考えてみると、現在の放送の料金システムは実に奇妙なものだ。NHKは見ていないのに料金をとられることになっている。他方民放は、いくら見ても無料。通常の商品は、利用したら料金をとられるのに、放送は、公共放送も民放もその原則から外れていて、しかも真逆だ。民間企業が行っているメディア産業の新聞は、もちろん料金を払って講読する。民放は、広告収入で事業が支えられているから、スクランブルなどにして利用者が減るよりも、母数を大きくしておくことによって、広告収入の単価をあげることができるという判断なのだろう。民放もCS放送で、スクランブル放送を実施している。もちろん、広告もあるが、おそらく単価が安いだろう。また、CSの民放は、地デジやアナログ放送の再放送が圧倒的に多いから、費用もそれほどかからない。
 民放はさておき、NHKのスクランブル化について、長短を考えてみよう。
 NHKにとっては、大部分マイナスだろう。圧倒的に収入が減ってしまうことは明らかだ。現在でも払っていない人はいるだろうが、それが大幅に増加することは目に見えている。しかも、堂々と見ていないから払わないと主張できるわけだ。 
 プラスになることはあまり考えつかないが、視聴料の徴収コストがかなりなくなり、トラブルなども激減するに違いない。しかし、このプラスよりは、収入減のほうが圧倒的に大きいだろう。
 では、視聴者にとってはどうなのか。
 私のように、NHKをそれなりに評価している者にとっては、どちらでもよい。払っているし、NHKの番組は多く見ている。ドキュメント番組やクラシック音楽番組は、民放には期待できないレベルである。また災害時の情報提供は、民放よりも丁寧であることも事実だろう。やりすぎだと思うこともあるが。しかし、スクランブル化によって、収入が減り、番組の質が低下するのは、望ましくない。
 では、普段NHKを見ていない人にとってはどうなのか。その前に、テレビを普段見ているのに、NHKを絶対にみない人が、どのくらいいるのだろうか。近年のテレビは、実は私はあまりみないほうなので、多少ずれているかも知れないが、民放は似たような番組を制作し、NHKは民放的な番組も含みつつ、民放ではつくれないようなお金のかかる番組をつくっている。そういう意味で、番組の多様性という意味で、NHKは民放を圧倒しているように思われる。テレビなどもっていない若者は多いが、そういう人は別としては、テレビを普段から見ている人が、NHKを全くみることがない、というのは、N国党のような、かなり意識的な人に限られるのではないかと、私は考えている。しかし、スクランブル化すれば、NHKには、自分にとって見るべきよい番組があると、積極的に支持しているわけではない人の少なからぬ部分は、契約しない可能性が高いはずである。そうすれば、まったく見られなくなるわけで、見ないでいるうちに、特に不便を感じなくなるかも知れない。
 インターネットはどうだろう。
 NHKは、インターネットにも番組をリアルタイムで流すことで、パソコンやスマホを所有している人にも、料金を課すと考えているようだ。ネットフリックス等の配信サイトがたくさんあるから、技術的には既に確立している。NHKはオンデマンドで既に、部分的に実施しているわけだ。NHKオンデマンドは、スクンランブルである。
 私自身詳しくないが、NHKが考えているのは、現在の料金体系をそのままにして、ネット利用者に自動的に支払い義務を課すというものだろう。スマホをもっていれば、NHKを見るはずだというのは、私は無理があると思う。
 インターネットでNHKを見られることを、私は歓迎する。現行のままの料金で、インターネットでも見られるというのが、個人的には望みである。インターネットは別途契約で通常テレビよりは安価にし、両方みたければ、両方の契約をということになったら、どうするか迷うに違いない。オンデマンド機能を合体し、かつオンデマンドでも録画可能になれば、前向きに考えるが、インターネットで全放送が視聴できるなら、テレビのほうは解約するかも知れない。テレビの画面で見たければ、パソコンから送ればよい。
 別々に課金するのではなく、インターネットに接続すれば、NHKの視聴料を払うべきだと、おそらくNHKは考えているようだ。スクランブル化する方法としない方法があるが、NHKはスクランブルかをしないまま、インターネットに接続していれば、払うようにさせることを目指しているのだろう。私自身は、インターネットでも見られるようにして、課金するのは、個人的にはよいと思っている。しかし、スマホのみでのインターネット接続の場合は除外すべきではないだろうか。
 パソコンの主要なソフト、マイクロソフトオフィスなどのようなものは、PC用は有料だが、スマホ用はほとんど無料である。スマホでは、フルに機能を使いこなすことはできないこともあるだろうし、一種の宣伝的機能をもたせているのだろう。スマホで今や大型化が進んでいるテレビ番組を堪能することは無理なのだから、スマホへの課金は除外すべきであろう。
 詳しい議論はこれから進んでいくのだろうが、私としては、
1 スクランブル化は反対である。
2 NHKは、公平にみて民法より、見るに値する番組が多いと思うし、また、自然災害時の情報提供という意味で、国民的な支えが必要だと思う。首都圏にいるとあまり感じないが、地方にいけば、民放のチャンネルは限られてくるので、全国どこにいっても見ることができるNHKが、災害時の情報提供の中心になることは自然なことだろう。
3 すべてのNHKの番組をインターネットで、リアルタイムで流すようになった場合、パソコンを所有している者は、視聴料を払う対象にすることについて、反対ではない。その形態は、テレビ、ネット一括が望ましい。更に、現在のオンデマンドは、無料にすべきであり、かつ、4000などという枠を拡大すべきであり、かつ、録画可能にすべきだ。

 もちろん、いろいろな人がいろいろな理由でNHKに批判的になっている。私も、現在のNHKに不満なところはある。しかし、それでも現在のような料金で支えていく必要はあるように思われる。
 みなさんはどう思われるだろうか。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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