昨日から、メディアを賑わせている「流山いじめ放置事件」とでもいう事態について、触れないわけにはいかない。私自身、流山の住民だから。まだ、詳細はわからないが、流山市の小学校で、6年生が酷いいじめを受けた。犯罪ともいえるようなこともあったらしい。学校への対応を保護者は求めたが、適切な措置はとられず、重大事態として届ける義務がある欠席30日以上に該当したにもかかわらず、届出をせず、事実と異なる23日欠席という記録にしていた。卒業して、中学に進学してもいじめは継続し、自殺を考えたほど深刻な状況が継続していた。市のいじめ問題を調査する専門家会議の責任者であった千葉大学の藤川教授が、申し入れをして初めて、重大事態と認めたが、それでも第三者委員会を開かず放置したために、藤川教授が記者会見を開いて明らかにしたという経緯のようだ。 “流山のいじめ放置” の続きを読む
カテゴリー: 時事問題
新学習指導要領で「鎖国」がなくなるというが
いろいろなところで、新学習指導要領になると、当たり前のように教えられてきた「鎖国」が教えられなくなる、「鎖国」という言葉は消えると書かれている。何故、そう書かれたりするのか、私には、ちょっと理解できないでいる。
念のため、平成29年に改訂され、平成32年(令和2年)から施行される中学校の学習指導要領には、以下のように書かれている。
イ 江戸幕府の成立と対外関係 江戸幕府の成立と大名統制,身分制と農村の様子,鎖国などの幕府の 対外政策と対外関係などを基に,幕府と藩による支配が確立したことを 理解すること。
「鎖国」という言葉は入っているし、付帯文書ともいうべき「解説」にも書かれている。これは、文科省のホームページで確認することができる。
もちろん、「鎖国」ということの理解に、変化があることは確かである。特に影響があったと思われるのは、ロナルド・トビ氏が書いた小学館の歴史講座9の「鎖国という外交」という書物がある。 “新学習指導要領で「鎖国」がなくなるというが” の続きを読む
五輪マラソン・競歩会場問題で露呈して問題
突然知らされた、来年のオリンピックにおけるマラソンと競歩の会場変更。ワイドショーの格好の話題となっていた。既に一年をきっている段階で、本当かどうかわからないが、主催都市の首長が変更協議が進んでいることを知らなかったらしいことは、やはり多くの人が驚いたことだろう。最近行われたドーハでのマラソンで、完走率が58%だったということで、IOCが危機感をもったということのようだ。こうしたニュースを追いかけていないので知らなかったが、ドーハでは、夜中の12時ころにスタートしたらしい。もちろん、暑さを避けるためだが、それでも完走した人が6割に満たなかったわけだ。日本では、これまで段々スタート時間を早めて、現在では朝6時ということになっているが、更に5時に早めようという検討がなされていたらしい。
ドーハのマラソンに参加した選手の談話が印象に残る。選手はこうやって悪環境のなか競技をしているのに、偉い役員たちは、ホテルの快適な部屋でテレビをみているのだろう、というようなことだった。 “五輪マラソン・競歩会場問題で露呈して問題” の続きを読む
名大女子学生による殺人事件、最高裁判決で無期確定
2014年12月、名大の女子学生が、77歳の女性を自分のアパートの自室で、斧で殴り殺害した事件の、最高裁判決が出て、無期懲役が確定した。この事件が起きたときには、本当に驚いたが、その後、一橋文哉氏の『人を殺してみたかった』というルボが出された。また、逮捕当時には、犯人のウェブサイトがブログ(だったと思う)が残っており、読めるだけ読んでみて、なるほど、彼女は、常に人を殺害することを考えていたのだと感じたものだ。一橋氏の著作は、彼女の生育歴が比較的詳しく書かれており、考えさせられた。そして、親と高校の担任、あるいは理科の教師たちが、何故、彼女の行動を、よりまっとうな方向に導くことができなかったのか、あるいはしようともしなかったのか、もし、自分が担任だったらどうしたろう、あるいはどうできたろうかと考えたし、また学生たちにも問いかけてみた。
とにかく、成長の過程をみれば、殺害に至るまで、ほとんど一直線に進んでいった感じなのである。今手元に一橋氏の著作がないので、記憶で重要な点を整理しておこう。
1.祖父が非常に有名な東北大学の教授だった人で、しかもかなりのお金持ちであった。
2.父親も優秀で研究者を目指していたが、常勤ポストを得ることができず、自宅で研究をしていたが、経済力はなかった。
3.母親が働いて生活を支えていたが、豊かではなかった。
4.近所の祖母の家で過ごすことが多く、ピアノを習っていて(ピアノは祖母の家にあった)、かなり優秀で、コンクールにもでたが、入賞しなかった。そのとき優勝した男の子の腕前に感心し、密かに好きになったが、失恋して、その後一切男に興味をもたなくなった。
5.成績は小さいころから極めて優秀だったが、いつもかなり粗末な服装で、そのアンバランスが周りに奇異な感じを与えていた。
6.両親からは、ほぼ放置されており、祖母に可愛がられていた。
7.祖父、父とも化学者で、比較的小さいころから、薬品に興味をもち、通常入手できない薬品なども、家庭環境故入手でき、最初動物に投与していたが、高校になると、人に対して使ってみたいと考えるようになり、隣の席の男子に密かに薬物を彼のポットに混ぜ、変化を観察していた。薬物などへの興味を、隠すこともなく、高校内で広言していた。
8.体に変調をきたしたその男子は、警察に届けを出したが、警察も学校もきちんとした対応をしなかった。
9.現役で名古屋大学の理学部に合格したが、少年による殺人事件に異常な興味をもち、ウェブで詳細に調べていた。特別な検索テクニックをもっていたらしい。とくに、リタニンを母親に飲ませて殺害した静岡の女子高校生には特別な関心をもっていた。大学では唯一の応援団に所属する女子で、詰め襟の学生服をきて、自分を「俺」といっていた。
10.たまたま話しかけられた布教活動をしている女性と親しくなり、その本部までいって女性を自分のアパートに誘い出して、殺害した。死体をバスタブにいれたまま、冬休みの間帰省していたが、既に彼女の犯行を確信していた警察に、再度名古屋に戻ったときに逮捕された。殺害を隠すこともなく、ひとを殺してみたかったと自供した。
以上のような生育歴だったと思う。裁判の途中で、かなり人当たりが変化して、ある意味全うな人間になりつつあったと報道されたと思う。裁判長が、「もしまた社会に出てくることができたら、しっかり、まっとうに生きなさい」と諭したところ、素直に頷いたという。
裁判では、弁護側が、心神喪失を主張したというが、どう考えても、それは無理というものだ。とにかく、彼女のブログを読めば、いつも殺人のことを考えており、実行したあと「ついにやった!」と書き込んでいる。はっきりと自覚的な行動だったことは明瞭である。弁護士は、この方針以外闘えないと思ったのだろうが、そうした間違った事実認定では、ますます勝つことはできないので、もっと彼女の生育歴や内面などを明らかにするような闘い方をしてほしかったと思う。
上の成長の過程を読めば、多くの人は、彼女が恵まれていながら、ある面貧困に苦しんでおり、立派な親がいながら放置されている、学校の成績が抜群にいいのに、奇妙な行動を公然ととっている、極めてアンバランスな人間を想像するだろう。そして、私が何よりも感じるのは、とくに高校の教師が、親身に彼女のことを思い、指導しようとすれば、興味関心を捨てなくても、まっとうな生き方を可能にすることができたのではないかという点である。
考えてみれば、人を殺すことを主たる仕事のひとつとしている職業がある。(軍人)人に薬物を投与する職業もある。(医師、薬剤師)人体を切り刻む職業もある。(外科医)そして、臨床中心ではなく、観察中心で、同様なことを実践している人たちもいる。(研究者)
もし、高校時代の被害者が警察に通報したとしたら、学校に連絡がいったはずである。しかし、結局は、警察も学校も、彼女の行動を問題にして、処分するなり、指導するということがなかったようだ。有数の進学校であった彼女の高校は、校内で不祥事が起こることを嫌い、見て見ぬふりをしていたのだろうか。彼女が高校時代やっていたことは、もちろん犯罪であるが、通報がある以前に、彼女の行動は知られていたようなのである。深刻になる前に、ルールに基づきコントロールされた形で行う、具体的な職業を教え、長く、彼女のやりたいことを続けたいのならば、犯罪としてではなく、認められた職業のなかで行うことが必要であること、そして、そのためには、現時点でどのような勉強が必要であり、それが将来仕事していくなかで、どのような役割を果たすのか、納得のいくように説得すれば、彼女ほどの優秀な生徒であれば、きちんと理解し、かつ実行できたのではないだろうかと、残念に思うのである。
結局、進学実績を重視し、個々の生徒の意識や課題に丁寧に指導するのではなく、そうしたことは排除しつつ、科目の成績の向上に専念する。そういう学校の姿勢が、彼女のなかの悪魔を増長させていったに違いない。
国際社会論ノート 『従軍慰安婦』吉見義明、『ひと目でわかる慰安婦問題の真実』本間政憲を読んで
「国際社会論」で、国際人権を考える例として、慰安婦問題を扱うことにしたので、いろいろと読み直したり、まだ読んでいない本を読んだりしている。「国際人権」を一回取り上げることにしているが、毎年具体的対象を変えて考えており、今年度が最後なので、「主戦場」をみたこともあり、史上最悪の日韓関係と言われる要因のひとつである「慰安婦」を取り上げようと思った。しかし、調べれば調べるほど、また考えれば考えるほど、難しい問題だ。単なる「歴史」問題、人権問題ではなく、政治、情報戦争でもある。そして、完全に対立し、冷静な議論ができない状況でもある。対立の双方の意見を丁寧にインタビューして、交互の見解を提示する形の映画を作成したら、一方から提訴がなされてしまう。下手に意見表明もできないような雰囲気もある。
このふたつの本は、慰安婦問題の双方の立場を代表するもののひとつであろう。そして、それぞれが、重要だと位置づけている「一次資料」を豊富に使って書いているのだが、その一次資料が全く異なる。 “国際社会論ノート 『従軍慰安婦』吉見義明、『ひと目でわかる慰安婦問題の真実』本間政憲を読んで” の続きを読む
台風通過中
一昨日くらいから台風19号のニュースをずっとやっていて、昨日からは、土曜日(今日)は外出するなというアナウンスを繰り返していた。幸い、外出しなければならない用事はないので、ずっと家にいる。そして、ずっとNHKの台風情報をみながら、仕事をしている。
狩野川台風以来とさかんにいっているが、私が小学生のときに狩野川台風があった。東京に住んでいたので、今でもよく憶えている。約1200人が亡くなったわけだから、本当に酷い台風だった。小学生だったので、自治体や国がどのような対策をとっていたかとか、テレビがどのように注意を呼びかけていたか、というようなことは、まったくわからないし、記憶にない。記憶にあるのは、台風がくるというので、窓を守るために、木材を買ってきて、窓枠を守るために木材を打ちつける作業を、家族でやったことだ。当時はアルミサッシではなかったので、多くの家でそうした作業をしていたように思う。私は、世田谷区に住んでいて、まわりで大きな被害はなかったと思うが、いろいろな場所で川が氾濫して大きな被害になった。
今回の台風19号も、まだまだ被害が起きるだろうし、通過後数日間も要注意だが、それでも、狩野川台風のときと比較すると、日本の防災対策もずいぶん進んだのだという実感がある。 “台風通過中” の続きを読む
愛知トリエンナーレ問題4 内容への口出し
奥村氏の「支援するが内容に口出ししない」という問題をどう考えるかという点が残った。これまで、主に毎日新聞の記事を参考にしていたので、バランスをとるという意味ではないが、産経新聞の「表現の不自由展その後」に関する記事をまとめて読んでみた。奥村氏の見解と正反対なのが、八木秀次氏の「表現の不自由展 公的空間での展示の線引き必要」(産経新聞2019.10.8)という記事である。
八木氏は、そもそもこの企画そのものが問題だ、という立場であり、更に以下のように述べる。
「芸術については、たとえ主催自治体のトップであっても『中身についての議論はしてはいけない』『金だけは出せ』というような風潮が一部にあるようだが、多額の公金を使ったイベントで、芸術といえども表現の自由において特権的な地位はない。」
奥村氏と八木氏とでは、どちらが正しいのだろうか。 “愛知トリエンナーレ問題4 内容への口出し” の続きを読む
化学物質過敏症で通学困難な生徒
今日のHarbor Businessに「学校に通いたい……教室に充満する過剰な「香り」で化学物質過敏症に苦しむ女子高校生」という記事が出ている。化学物質過敏症に罹患している女子高校生が、生徒たちが使っている様々な化学物質で処理した服などの香りで、目眩、頭痛、過呼吸などを引き起しているので、母親が、クラスの保護者に丁寧な事情説明の手紙をだして、原因となる柔軟剤や合成洗剤などを控えるようにお願いしたところ、そのクラスでは協力的で改善されたのだが、学校全体としては取り組まれていないし、また、通学途上の交通機関で体調が悪化するという事態になっている」という記事である。
この化学物質過敏症は、診断が難しく、他の病気と間違えられやすく、また、病気と認めないような医師もいるのだそうだ。診断ができる病院が全国的に少数で、正しい診断と治療をしないために、どんどん病状が悪化する事例が多数あるという。ある調査によれば、可能性の高い人が全体の0.74%、可能性のある人が2.1%なのだそうだ。正確な診断が難しい病気なので、ウェブで調べる限り、書いている人たちによって数値が異なるのはやむをえないが、可能性が高い人0.74%というと、大雑把にいうと、300人いれば2人はいることになる。高校などは、通常1000人近くいるわけだから、7名程度の人が該当する計算になる。 “化学物質過敏症で通学困難な生徒” の続きを読む
キャンプで行方不明、大人たちの安易な計画ではなかったのか?
山梨県道志村「椿荘オートキャンプ場」で、行方不明になった小学一年生の当日の経過が、両親によって明らかにされた。毎日新聞掲載の内容をそのまま引用する。
21日午前
9時 一緒にキャンプするメンバーの一部が到着
午後
0時15分 美咲さんと母、姉がキャンプ場に到着
1時 昼食後、子供たちがテントを張った広場近くで遊ぶ
3時35分 おやつを食べ終えた子供たちが沢に遊びに行く
40分 美咲さんが後を追いかけて行く
50分 大人が子供たちを迎えに行く
4時 美咲さんがいないため、捜し始める
5時 日没が近づき警察に通報
6時 警察官が到着
8時 子供たちを寝かせ、大人は捜索を継続
22日午前
1時30分 仕事を切り上げた父が到着。3時まで捜索を続ける “キャンプで行方不明、大人たちの安易な計画ではなかったのか?” の続きを読む
大学入学共通テストの延期要請から、考えてみる
現在行われているセンター試験に代わって、来年度から「大学入学共通試験」が導入されることになっている。最初に、大学入試センターの試験は、「共通一次試験」という名称だったから、「共通」が復活したわけだ。何が「共通」なのかは、正確にはわからない。というのは、少なくとも私立大学の多くが参加するが、義務ではないし、私立大学の場合には、センター試験は、おそらく別枠になっていると思われる。当初、センター試験の改革案として、大学に入学する者全員が受けなければならない「資格試験」という構想もあった。それが採用されていれば、明確に「共通試験」だったと思うが、採用されなかったので、率直にいって、「共通」の意味はよくわからない。
それはさておき、大きな改革点は、国語と数学に記述式問題が導入されることと、英語に民間検定試験が採用されるという点だろう。問題の作成理念として、考えさせる問題を含むというようなことが解説されているが、およそ問題を作成するときに、まったく考えなくてよい問題など意図しないのだから、これは、大きな変更点とはいえない。 “大学入学共通テストの延期要請から、考えてみる” の続きを読む