「桜を見る会」の私物化論 各社説は不十分だ

 安倍首相が、「桜を見る会」に後援会のひとたちを大量に招待していたことが、問題となり、安倍首相の判断で、次回は中止ということになった。公金を使い、公的な事業として行われている「桜を見る会」に、それぞれの枠があるとはいえ、それをはるかに超えた人数、自分の後援会の人を呼ぶというのは、明らかに「私物化」であり、違法行為である疑いが濃いだろう。多くの新聞も社説で、そういう主張を展開している。それはそれで正しい。
 しかし、やめればよいのか。私は、むしろ、あのように簡単にやめてしまうことにこそ、安倍晋三という人の公的なことがらを、私的にしか考えない政治家としての資質が現われていると思っている。後援会の人をたくさん呼ぶことは、公的な行事を私的な利益のために利用するという意味で、私物化であるが、批判を受けるとやめてしまうということは、公的な「桜を見る会」を自分のものだと思っているという意味での「私物化」なのである。どちらかといえば、こちらの私物化のほうが、ずっと問題が大きい。 “「桜を見る会」の私物化論 各社説は不十分だ” の続きを読む

安倍 vs 管闘争の激化か 「桜を見る会」問題の見方

 権力は腐敗する、という政治学の基本的な命題があるが、近年の安倍内閣は、確かにその通りだという感が強くなっている。どんなに異常なことが起きても、それが法に違反する行為があっても、世間の批判を無視してきたが、今話題になっている「桜を見る会」のドタバタぶりは、端的に政権の腐敗を示している。国会における共産党の追求と、安倍首相の答弁が、詳しく報道されているが、この答弁は、だれがみても異様な感じがするはずである。公金を使って、国の行事として招待された人物に関しての質問に対して、セキュリティ上の問題があるので答弁できないと、繰り返し突き放す。写真や映像がどんどんニュースやワイドショーで流されているのに、セキュリティの問題もないと思うし、そもそも、桜を見る会がなぜ、セキュリティ上の問題となるのかさっぱりわからない。公的行事であり、社会に貢献した人たちを招待するということなのだから、参加者に関する情報を開示することが、なぜ個人情報であったり、セキュリティ上の問題を発生させるのか、合理的な理由は全くしめされていない。他の野党も、追求することになっているようだ。 “安倍 vs 管闘争の激化か 「桜を見る会」問題の見方” の続きを読む

首里城再建は可能なのか

 首里城焼失後、当然のように再建が話題になっているが、本当に再建は可能なのかという疑問がわく。本ブログの読書ノートで西岡常一『木のいのち木のこころ』を紹介したが、首里城再建を願っている人たちは、ぜひこの本を読んでほしいと思う。率直にいって、少なくとも、元の形での再建はかなり困難だと思わざるをえないのだ。
 いろいろなところで既に触れられているが、まず木材調達の困難さがある。西岡氏が書いていることだが、「堂塔建立の用材は、木を買わず山を買え」という言葉があるそうだ。つまり、山全体の木材を、植えられている条件に応じた木の性質を考慮して、材木として使用するということだ。同じ山に植えられている木でも、太陽のあたり方等々によって、木としての性質が異なっている。長い年月の間に、乾燥して湾曲してくるわけだが、そういうことも計算して、適切な木材の配置をしないと、長年もつような建築物にはならない。山岡氏の念頭においている建物は法隆寺なので、多少条件は異なるだろうが、法隆寺の中心的な柱には、樹齢1000年の檜が必要だという。本格的な城とか仏閣などは、檜を使用する。しかも、できるだけ樹齢の大きな、まっすぐ延びたものが必要である。
 首里城は、記録に残る大きな火災だけでも、5回にわたっており、その都度木材の確保にはかなり困難に直面し、多方面の強力によって木材を調達することができたとされる。
 西岡氏によれば、このような建築に使用できる檜は、現在日本には存在せず、台湾から買いつけるという。 “首里城再建は可能なのか” の続きを読む

国会での質問事前通告 原則公開にすべきではないか

 森ゆうこ議員の質問が事前に漏れたということで、騒動になったが、普段から、国会でのやり取りというのは、不思議だと思っている人間として、考えてみた。まだ事実関係が正確には把握できていないので、事実認識については、誤りがあるかも知れないが、原則的考え方としては、影響はない。
 森議員が、質問通告が遅れたために、官僚たちが深夜残業を強いられた一方、高橋洋一氏のツイートが、質問内容を事前に知っていたことを示すとして、森議員周辺が守秘義務違反があったのではないかと、官庁の対応を非難した。どうやら、高橋氏のツイートは、サンフランシスコ時間での表示だったので、実際には、国会のやり取りをみて書いたものらしいのだが、国会での質疑以前に書いたものと解釈されたということのようだ。ここらの事実関係は、私にはあまり興味がない。興味があるのは、そもそも、質問の事前通告とは何故やるのか、あるいは、やるとしたら、どのような形がよいのかという問題だ。 “国会での質問事前通告 原則公開にすべきではないか” の続きを読む

国際社会論ノート 慰安婦問題を考える2

4、日本政府は現在賠償を支払うべきか
 この問題についても、極めて強固な対立する立場がある。
 まず確認しておくべきは、否定派がいかに「強制連行がなかった」と主張しても、朝鮮半島の人たちが、自発的に応募した事例は、あったとしても少数であることだ。戦局が悪化した時点にいた慰安婦たちの聞き取りでは、半島出身の人たちの表情は、他の国の出身者たちとは明らかに異なっており、日本兵に対する否定的な態度が強く出ていたと報告されている。つまり、強制連行ではなかったかも知れないが、詐欺的な方法で連れて行かれたことは間違いない。そのような人たちに対して、謝罪・賠償をすべきことは、当然だろう。しかし、ここで「方法」の対立が生じている。 “国際社会論ノート 慰安婦問題を考える2” の続きを読む

英語民間試験し中止 一人の政治家が高校生や教師全体より大事なのか

 英語民間試験の導入が、突然延期された。毎日新聞は「白紙に戻された」と報じているが、今後の問題についてはあいまいだ。しっかり善後策を検討して数年後に実施したいという発表だったと思うが、そもそも無理がある制度なのだから、どうなるのかわからない。小室圭-真子内親王婚約延期なども、着地点がまったく不明だから、同じようなことが起きたといえる。
 11月1日の毎日新聞は、「英語民間試験見直し 「萩生田氏守るため」官邸が主導」という見出しをつけている。記事の内容は、見出しの通りだ。閣僚2名の辞任が相次いだので、安倍首相の最も近い側近の一人である萩生田氏が辞任に追い込まれるのは、絶対に避けなければならないという「官邸」の判断で、試験の延期が決定されたというのだ。事実、文科省は抵抗したようだし、民間検定試験機関との連絡は行われていた。それも突然の延期公表で中止になった。
 しかし、よく考えてみよう。一人の政治家の地位を守るために、全国の受験生を犠牲にしていいのか。もちろん、多くの人が、民間試験採用は中止すべきだと主張しており、私もそう書いたから、延期(中止)はよい。しかし、欠陥を是正して実現したいと表明していたのだから、どうやったら欠陥を是正できるかの最低限の検証を経て、やはり、今の段階では無理だとわかったから中止したいというのであれば、まだ納得できる部分がある。 “英語民間試験し中止 一人の政治家が高校生や教師全体より大事なのか” の続きを読む

「普通に死ぬ」のもなかなか難しい

 ブログでは、個人的な事情はできるだけ抑制しているが、今回は、あまりない経験をしたので、考えてみた。
 かなり前に『病院で死ぬということ』という本がかなりのベストセラーになった。癌患者を扱う医師が、病院で亡くなる場合の不条理さをなんとか克服しようとする一方、そのなかでも人間的な関係が築かれていく様が描かれていたと記憶する。もちろん、多くの人たちは、自分の家で家族に見送られながらの最期を希望しているに違いない。しかし、現実には、そうした在宅での看取りは、極めて難しいのが実状である。それは、決して、家族の状況などによるのではなく、むしろ、「死」に関するシステムから来る側面が強いのだと感じている。
 10年くらい前に、私の義母が亡くなった。10年間ほど認知症になり、自宅と週3日程度の施設を往復する生活を続け、最後の半年くらいは、ずっと在宅であった。まだ意識が明確であったころから、最後は家でと望んでいたので、できるだけその希望をかなえようと、妻が中心となって、在宅介護を充実させていた。往診してくれる医師も見つけ、当初は診療所まで出かけたが、最後の半年は、家まできてくれた。その間、どのように最期を迎えるかを、何度も相談したのだが、在宅で看取るのは、考えるほど簡単ではないのだと、医師から何度も聞かされたわけである。 “「普通に死ぬ」のもなかなか難しい” の続きを読む

大学入学共通テスト民間検定採用問題と萩生田文科相の発言

 安倍内閣の改造で、萩生田氏が文科相になると発表になったとき、絶対にそうした地位に就いてはいけない人がなったと思わざるをえなかった。何故か。それは、萩生田氏が、極めて権力志向が強く、男尊女卑の思想をもち、そして、利権的発想をする人物だからである。そもそも、政治家として好ましくないが、特に教育行政に関わってほしくない人だ。核武装を容認し、女系天皇否定論、カジノ推進論の立場である。そして、教育行政に関していえば、議員の落選時代に、千葉科学大学の客員教授を務めている。これは、詳細はわからないが、おそらく安倍晋三氏の口利きに違いない。千葉科学大学は、獣医学部の創設で大問題となった加計学園に属している。周知のように、安倍首相と、加計孝太郎氏は、極めて親しいお友達である。萩生田氏が、加計学園問題の流れのなかで、加計孝太郎氏と会い、裏で重要な働きをしたことは、既に周知の事実になっている。この獣医学部の新設において、加計学園が認可を得ていく過程は、極めて不当に、教育行政を歪めたものであることは、否定のしようがない。つまり、獣医学部を新しく設置することに意味はあるとしても、それが、他の候補を排除して、加計学園に収斂していったのは、明らかに、利権がからんだ癒着構造があったからであり、その推進役の一人が萩生田氏だった。 “大学入学共通テスト民間検定採用問題と萩生田文科相の発言” の続きを読む

皇室継承問題 男系論は男女差別論

 即位の礼が行われ、皇室継承問題が、いよいよ議論となる。しかし、相変わらず、皇室の伝統を「重視」する人たちの意見を聞いていると、不思議な感にとらわれる。そして、興味深いことに、伝統主義者のいうことを実施すれば、それだけ皇室の継承は困難になることが、明白となっている。もしかしたら、それを狙っているのだろうかと勘繰りたくなるほどだ。
 何が不思議か。男系論は、明確な女性差別の立場である。今の世の中で、女性差別を「理念」として承認する余地はない。もちろん、具体的な事例で、女性差別か否かが問われることはあるだろう。しかし、男系の人のみが、ある地位を継承できるというのは明らかに女性差別であろう。何故、皇室が女性差別である男系で継続してきたのか、それは、歴史のほとんどが女性差別的原理で成り立っていたからだ。階層によって、その程度は異なるにせよ、記録に残っている歴史上、女性差別もなく、男性優位でもなかった社会は、市民革命以前は、存在しない。日本においては、憲法的に男女平等が確立したのは、第二次大戦後である。
 戦後、天皇は、憲法上、国民の総意に基づく存在となり、日本社会は男女平等になった。だから、天皇が、現代社会において存立するためには、男女平等原則を受けいれるしかないのである。受けいれられないのであれば、現代社会には適合しないシステムとして廃止されるはずのものだ。 “皇室継承問題 男系論は男女差別論” の続きを読む

神戸市須磨区の教師間いじめ(再論)

 まだまだこの話題が継続している。今日(25日)のテレ朝羽鳥のモーニングショーで、詳しく扱っていて、和田中の校長として有名になった藤原和博氏がコメンテーターで出演していた。23日には、尾木直樹氏が登場していたから、多様な立場のコメンテーターが出ている。朝のテレビなので、詳細は憶えていないが、いくつか気になることがあった。
 この二日で主に話題になったのは、教育委員会と、人事のあり方だった。
 正確な数値を憶えていないのだが、500人強の教育委員会事務局人員がいて、160名程度が現場の教師だった人だということだった。ずいぶん多い印象だ。そして、現場の教師だった人は、数年教育委員会で、現場を指導する仕事をしたあとで、校長として学校現場に戻ることが多い。これは、どこでも同じような仕組みになっている。 “神戸市須磨区の教師間いじめ(再論)” の続きを読む