ドイツの高齢者事故

 1月16日付けのHamburger Moregenpost に84歳の女性が、子ども連れの36歳の妊婦を、車の運転ミスによる怪我をさせたという記事が出ている。幸い死亡事故ではなかったようだ。交差点を妊婦が渡ろうとしているところを、老婦人が間違って轢いてしまったという。乳母車が無残に飛ばされている写真がでている。運転していた老婦人は、警察に逮捕されたが、薬を服用していて、運転できる状態ではなかったと書かれている。車は押収され、捜査が続いて行われるということだ。
 ドイツでは、高齢者の事故はどうなっているのか。まだ充分にはわからないが、高齢者が交通事故に巻き込まれて死傷するのは、当然被害者として事故にあうのが最も多く、交通事故の被害者は子どもと高齢者が圧倒的に多いようである。当然のことだろう。2015年の事故犠牲者総数の21.1%が高齢者で、そのうち29.6%が死亡している。人身障害にいたる交通事故21万件のうち、5人に一人は18~24歳、13人に一人が65~74歳、13人に1人が75歳以上ということだ。ということは、まだまだ高齢者よりは、若者が多いということになる。 “ドイツの高齢者事故” の続きを読む

「人質司法」をやめる利点

 ゴーン問題は、様々な領域で今後とも大きな影響を与えるだろう。司法の領域、日産の経営に留まらないだろうが、ゴーンの弁護士だった高野隆氏が、1月4日付けで「彼が見たもの」という題でブログを書いており、それに膨大なコメントがついて話題になっている。高野氏は、ゴーン保釈の際、変装させたことでも話題になった。
 ブログの趣旨は、ゴーンはかなり法律の専門知識をもっており、裁判の先行きに関していろいろと質問してきたが、妻にもあえない保釈のあり方や99%以上の有罪率に次第に悲観的になっていった。高野氏も、公正な裁判は期待できないが、最大限の努力はするし、これまでも無罪を勝ち取ってきたと励ましていたのだが、逃亡してしまった。激しい怒りを感じたが、全否定することはできない気持ちもある。そして最後に「確かに私は裏切られた。しかし、裏切ったのはコルロス・ゴーンではない。」と結んでいる。
 あちこちで話題になり、コメントが多数ついている。多数は、高野氏を批判するものだが、擁護したり、あるいは、自分がお金持ちでゴーンと同じ立場なら、やはり逃げるだろうという見解もある。 “「人質司法」をやめる利点” の続きを読む

新聞は朝夕刊、両方が必要か 大分合同新聞の夕刊廃止

 大分合同新聞が、夕刊を廃止するという記事があった。(読売2020.1.14)廃止の理由は、人件費や原材料費の上昇、配達員の確保が難しくなってきたということをあげているそうだ。月極め料金を3565円から3500円にして、ビジネス、教育などをテーマにしたハーフサイズ版を週4回、朝刊に折り込むかたらで発行するという。大分合同新聞というのは、知らなかったが、インターネットでも部分的には読めるようだ。
 私は、常々、日本の新聞が朝刊と夕刊を毎日(最近は休日もあるが)出し、しかも、地域版があり、一日のうちに版を変えていくというシステムに、疑問を感じている。朝か夕に一回出し、しかも、版の変更などすることはないと思うのだ。今は、ネットで新聞記事を読むことが普通になっており、新しい記事はネットで流していけばいい。
 長年の慣習なので変えることは難しいのだろうが、変えることによるメリットはたくさんあると思う。 “新聞は朝夕刊、両方が必要か 大分合同新聞の夕刊廃止” の続きを読む

名城大学刺傷事件再論 レポート締め切りは絶対か

 伊東 乾氏がJBpressに『「単位あげない」殺人未遂事件を起こした甘えの構造』という文章を書いている。(https://www.msn.com/ja-jp/news/national/「単位あげない」殺人未遂事件を起こした甘えの構造/ar-BBYSST0?ocid=spartandhp)
 この時期の大学は、成績認定や大学入試など、一年で最も忙しい時期であり、成績処理などもコンピュータ化されて、個々の状況で操作できるものでもなく、教師が締め切りに間に合わなければ単位を出さないというのは、当たり前のことで、学生のとんでもない甘えであるという趣旨の文章である。
 私は、この事件があった日に、まったく反対の趣旨の文章を書いたし、この文は見過ごすことができないので、再論する。当日は、刺した原因がわからなかったが、その後、レポートの締め切りに遅れたことだったと説明されている。
 いまでは、ほとんどの大学で、成績処理がコンピュータ化されている。しかし、だから、成績処理の融通をきかせることは不可能だということにはならない。教員が成績を提出しなければならない日は決まっていて、これを動かすことはできない。しかし、この期限とレポート提出期限は当然同じではなく、教員は、提出されるレポートを読む時間を、多少余裕をもてるように、レポート提出期限を定めているはずである。 “名城大学刺傷事件再論 レポート締め切りは絶対か” の続きを読む

メディアの公平さを考え イギリス王室とオランダ王室

 昨日(1月10日)のワイドショーでとても奇妙な光景があった。イギリスのヘンリー王子がイギリス王室から離脱するという話題でのことだ。番組では、その話題に移ったあと、イギリスでの街頭インタビューの模様が放映され、そこには、勝手な振る舞いだとという批判的見解と、理解できるという同情論のふたつが紹介された。そして、その後、長年イギリス王室の取材をしてきたという女性がコメンテーターとして紹介され、レギュラーとゲストを含めた活発なおしゃべりが展開された。およそ議論というほどのものではなかった。そこで、驚いたのは、コメンテーターに、司会者が何度か、イギリス国民の反応はどうですかと質問したが、毎回、国民は完全に怒っています、とだけ述べていた。誰もが感じると思うが、最初のインタビューはふたつの対応があると明確に示していたのに、一応専門的に理解しているという前提で登場したのだろうが、コメンテーターは、国民はひとつの立場になっていると、およそ躊躇するような感じもなく断定していたのである。
 もちろん、私はどちらが正しいかは分からないが、しかし、同一の番組のなかで、このような扱いが生じているというのは、誰もが疑問に感じるだろう。コメンテーターに対して、インタビューでは同情論もありますが?というような質問を投げかける人もいない。最近のワイドショーは、けっこう異なる見解の人が登場して、率直に議論しあう場面も少なくない。それがけっこう面白い。そうした議論の有無は、番組の水準ということなのだろうか。 “メディアの公平さを考え イギリス王室とオランダ王室” の続きを読む

名城大学で教員が刺される事件

 1月10日の夕方、名古屋市の名城大学で、准教授が学生に刃物で刺されたという。報道によれば、レポートをめぐってトラブルになっていたとか。今の時期だから、レポートのトラブルといっても、成績評価のことではないに違いない。提出期限とか、あるいはレポートの形式などで、受け取り自体を拒否されたというようなことなのだろうか。以前、中央大学でも構内で教員が刺された事件があったが、やはり、理工系だった。文系でレポートをめぐってトラブルになり、教員が暴行を受けたりということは、あまり聞いたことがない。文系の場合には、成績が就職に直結することは、ほとんどないと思われるが、理工系の場合には、そうした面が文系よりは強いに違いない。だから、成績は重要な意味をもつのだろう。
 あまり参考にはならないが、成績に関するトラブルは、起きないに越したことはないので、一応は気をつけている。 “名城大学で教員が刺される事件” の続きを読む

相模原障害者施設の殺傷事件公判について考えること

 相模原の障害者施設に、元職員だった男が侵入して大量殺傷事件を起こしたことは、記憶に鮮明に残っているが、容疑者に対する裁判が始まった。しかし、容疑者が反省の弁を述べたあと、奇声を発し、押さえつけてもやめないので、傍聴人を外にだし、休廷した。そして、午後、容疑者のいないままの裁判が継続された。その後どうなるのか、原則被告がいないと公判を開けないはずだが、暴れるなどの事情があるときには、許されるのだろう。麻原の場合にも、その場にはいないまま裁判が進行したから、もしかしたら、この裁判でも被告不在で進行するのかも知れない。現在は以前と異なって、裁判員裁判だから、公判は迅速にかつ短期間で行われる。
 この奇声が、意図的なものなのか、あるいは、精神的異常による無意図的なものなのかは、まったく判断ができないが、弁護側は責任能力で争う方針なので、もしかしたら意図的なのかも知れない。精神異常であるか否かで、ある意味生死が左右されるのだから、ありえないことではない。 “相模原障害者施設の殺傷事件公判について考えること” の続きを読む

イランとアメリカの関係史の誤解

 アメリカとイランの関係が、極めて危険な状態になっている。そして、多くの人が指摘しているように、これは昨今始まったことではなく、長い対立の歴史がある。そして、ネットで専門家と思われる人の解説記事が多数載っているが、多くは、誤解を生むような内容になっているのが気になる。それは、アメリカとイランの対立が、ホメイニによるイラン革命、そしてその後直ぐに起きたイラン人の一部によるアメリカ大使館の選挙と人質事件から始まっているような記述である。もちろん、そうした事実があって、アメリカとイランの対立が激化したという指摘は間違いではないが、それ以前の重要な対立を無視している点で、誤解を与えるものだ。
 20世紀になって石油が重要な資源であることが発見され、現在の中東地域がそれまでとは格段に異なる意味あいが生じた。そして、この地域は長くオスマントルコ帝国と西欧列強の対決が続き、第一次大戦後のオスマントルコの崩壊によって、一気に西欧列強の支配が優位になる。そして、石油採掘の作業が、西欧の企業によって進められることになった。そして、そこから生じる利益は、西欧企業がほぼ独占したわけである。 “イランとアメリカの関係史の誤解” の続きを読む

ゴーン氏脱出と日本政府の対応

 単に年末年始だったからというのではないように思われる。なんとも、日本政府の反応が鈍いのだ。これは、海外メディアでも指摘されている。とにかく、日本での法的拘束を受けていて、海外渡航を禁じられている被疑者が、無断で出国し、かつ、これから日本と闘うなどと宣言しているにもかかわらず、政府としての見解をまったく出していない。少なくとも、検察は、公式表明ができるはずであるし、また、出入国を管理している当局は、これが犯罪であると、「世界に向けて」発信すべきものだろうと思う。これから、確実にゴーン氏は情報戦をしかけてくるし、また、日本の司法に対する批判は国内外に強い(私も一部批判的だ)のだから、対応を間違えれば、日本の司法の評価はどんどん低下していかざるをえない。
 しかし、何故か政府は何も語っていない。
 だからか、日本政府にとって、ゴーン氏の逃亡は都合がいいことだったのではないか、ひょっとして、助けていたかも知れない、などというコメントもある。 “ゴーン氏脱出と日本政府の対応” の続きを読む

ナルシスト国家になりつつある日本

 12月29日付けで、渡邊裕子氏(ニューヨーク在住)執筆の「メガネ禁止、伊藤詩織さん、小泉環境相…2019年海外メディアは日本をどう報じたか」という非常に優れた文章が掲載されている。ぜひ多くの人に読んでほしいと思う。
https://www.msn.com/ja-jp/news/world/メガネ禁止、伊藤詩織さん、小泉環境相…2019年海外メディアは日本をどう報じたか/ar-BBYqC3j?ocid=spartandhp

 ただ、全面的に賛成なわけではなく、より多面的な見方が必要であると感じる部分もあるので、そういう点も含めて紹介しよう。
 執筆の基本姿勢として、日本に帰国するたびに、「日本はすごい」と外国人からみられていることを紹介するテレビ番組が増えたことに驚いている。日本人は、どう見られているかを気にするのに、日本のメディアしか見ない人が圧倒的である。外国の報道をみればわかるのだが、かなり辛口に言われることが多くなっているのだ。こうした観点から、辛口に論評されていることを、外国のメディアによって、いくつか紹介している文章である。
 最初に、あるジョークが紹介されている。

ある教授が、「象についてのレポートを書きなさい」という宿題を出した。ドイツ人は「象の存在についての哲学的考察」、アメリカ人は「象を使ってできるビジネス」、中国人は「象の料理の仕方」、フランス人は「象の性生活について」というレポートを書いてきた。日本人は?というと、「日本人は象をどう見ているか。象は日本人をどう見ているか」だ……というオチだった。 “ナルシスト国家になりつつある日本” の続きを読む