新型コロナウィルス対策への疑問 費用負担をめぐって

 先の日曜日の朝、本の少しだけ日テレのニュース解説番組を見たら、ある人が「これだけ新型コロナウィルス問題の解決が急がれているとき、いつまで「桜」のことをやっているんでしょうね。」と野党の国会での活動に疑問を呈していた。野党のやり方が賢いとは思わないが、桜問題と、最近つとに国際的に非難されるに至っている新型コロナウィルス対策の不十分性とは、「同じ根」なのである。だから、このふたつは、同時に追求する必要がある。その番組では、次に東京検事長の定年延期が閣議で決定されたことについて、少しだけ話題が飛び、「閣議で決めたのだから、正しいのでしょうが」などと、間の抜けたコメントをある人がしていた。閣議で決めたのならば、なんでも正しいのか。近年、閣議でひどく違法なことを決める回数が増えている。そして、自民党や検察庁においても、このことにはふれたくないという雰囲気があるという。あれほど明確な違法行為は、滅多にないと思うのだが。
 こういうことには、ほぼ一貫した安倍内閣の姿勢かあるといえる。それは端的にいえば、自分に近い人、支持してくれる人には、極めて厚く待遇するが、そうでない人に対しては、それがたとえ、大きな災害であったとしても、非常に冷遇するということである。 “新型コロナウィルス対策への疑問 費用負担をめぐって” の続きを読む

信号機の除去で事故 環状交差点の拡大を

 2月8日の京都新聞に、「12月に信号撤去、軽トラ同士が衝突し重体 市道の交差点」という記事が出ていた。滋賀県、見通しのよい道路で、それまで設置していた点滅式の信号を撤去してすぐの事故だったという。滋賀県では、2017年から、順次信号を撤去しており、これまでに70基を撤去しているという。

 こんな感じの道路になっているという。(京都新聞掲載)事故が起きた時間帯が記事には書かれていないのだが、注意深く運転すれば、確かに事故は起きにくい道路であるとは思う。左右前後の見通しはとてもよい。にもかかわらず出会い頭の事故が起きた。それは、優先順位が一瞬あいまいになったのだろう。もちろ、「止まれ」のない方が優先道路であり、「止まれ」がある方は、その場合絶対に止まって、相手側が通ってから交差点にはいらなければならない。しかし、「止まれ」の信号は、普段の運転では見過ごされがちなものだ。とくにそれまで信号があったとすれば、とくにそうだろう。 “信号機の除去で事故 環状交差点の拡大を” の続きを読む

検察への違法な政府の介入


 黒川東京高検検事長の定年延長を閣議決定した件が、法曹界で大問題になっている。多数のコメントが出ているので、特に新しい見解をだすことではないが、批判の数を増やす意味もあるだろうと、考えをまとめてみる。
 安倍内閣に関わる不祥事を、検察がもみ消したと思われる事実は少なくない。どこまで黒川氏が関与していたかは、もちろんわからないが、報道によれば、安倍内閣に極めて近く、逮捕起訴されてもおかしくない事件で、緩い対応だった事例がいくつかあるそうだ。そして、定年延長は、明後日の2月7日に定年退職する黒川氏を、本年8月に定年退職する稲田検事総長の後任にするためであると、多くの報道機関によって伝えられている。もちろん、先に定年退職している人を検事総長に昇格させることはできないからとった措置であろう。
 報道によれば、同期の林真琴名古屋高検検事長と黒川氏が長年のライバルで、どちらかが検事総長になると、前から予想されていた関係なのだそうだ。しかし、定年の関係で、黒川氏はなることができず、自然に林氏になると考えられていた。黒川氏が安倍寄りのスタンスであるのに対して、林氏はニュートラールな姿勢だということで、法曹界では、その点でも林氏を支持する声が多いという。安倍内閣は、稲田検事総長を、定年前に辞めさて、黒川氏にバトンタッチさせたかったが、稲田氏が自発的な辞任を拒んだために、黒川氏の定年延長という、違法行為にでたということだ。 “検察への違法な政府の介入” の続きを読む

隔離施設の受け入れに益はないのか

 新型コロナウィルスの感染者、あるいは感染の可能性がある人の隔離が問題となっている。韓国では、受け入れ拒否のために、バリケードを築いている地域とか、あるいは説明会に出てきた説明員に暴力を働く事例などがあると報道されている。日本でも、受け入れた自治体に住民から抗議の電話があるそうだ。それに対して、アメリカは軍の施設に隔離しているという。軍の施設は、一般住民の住む地位からはかなり離れているのが普通だから、住民の反対運動などは、おそらく起きようがないだろう。しかし、日本には、そんな軍の施設など存在しないはずだから、結局ホテルなどを借りることになっている。深刻なのは、受け入れた施設で働く人の子どもなどが、学校でいじめを受けているという状況だ。
 日本でも、かつては、いわゆる「迷惑施設」、たとえば、刑務所、ごみ焼却場、精神病院、原発などが建設されようとすると、住民の反対運動がかなり激しく行われたものだ。しかし、最近だいぶ雰囲気が変わってきたように感じる。 “隔離施設の受け入れに益はないのか” の続きを読む

大阪の青少年保護条例改正案 「真剣」とは何か

 読売新聞2020.2.2に、「18歳未満との交際、「真剣」以外はすべて違反に…大阪府が条例改正案」という記事が出ている。記事は以下のように報じている。
「大阪府が、2月議会に提出する府青少年健全育成条例の改正案の全容がわかった。条例は18歳未満とのわいせつ行為を禁じているが、現行では、脅したり、ウソをついたりしていなければ、処罰の対象外だった。改正案では、性的欲望を満たすことだけを目的としたわいせつ行為を禁じ、真剣交際以外はすべて違反となる。」
 インターネットで検索できる条例は、おそらく以下のものだろう。

第三十九条 何人も、次に掲げる行為を行ってはならない。
二 専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。
三 性行為又はわいせつな行為を行うことの周旋を受け、青少年に対し当該周旋に係る性行為又はわいせつな行為を行うこと。

 この条文によれば、「威迫、欺き、困惑」させる行為が罰する必要要件になっているということだ。 “大阪の青少年保護条例改正案 「真剣」とは何か” の続きを読む

イギリスのEU脱退

 世の中では、コロナウィルスの話題一色だが、私にとっては、明日のイギリスEU脱退のほうが、より関心がある。メイ元首相が実現しようとして、議会に阻まれてきたブレクジットを、ついに議会承認に漕ぎ着けたということで、その手腕を評価されているようだが、実は、メイがしてはならないことと禁じ手にしていたことを、ジョンソンはあえてやったことによって、議会承認をとりつけたのだ。それが今後のイギリスによい結果をもたらすかは不明だ。つまり、事実上、北アイルランドはEUに残留するのと同じような措置にしたことは、連合王国を分裂させる危険性が高いわけだ。だから、メイ元首相はその道を選ばなかった。
 そもそも、連合王国としてのまとまりをとりながら、ブレクジットを実現することは、論理的にほとんど不可能だった。 “イギリスのEU脱退” の続きを読む

GIGAスクール構想の疑問 1人1台のPC 効果があるとは思えない

 「GIGAスクール構想」ということで、今後小中学生1人1台のパソコンをもたせる政策が歩みだしている。現国会の目玉の政策なのだそうだ。かかる費用が4000億円という気が遠くなのような金額だ。教育委員会が購入するのだから、学校備品ということになるのだろう。どの程度使われるか、どのように使うのか、よくわからないが、これまでの日本の学校教育のあり方からみて、大いなる無駄になる気がする。もちろん、私自身は、PCの教育を進めることには大賛成であるし、ずっと前から推進する必要があったと考えている。日本はIT教育が遅れていると言われているから、こうした構想が出てきたのだそうだ。しかし、これまでだってパソコンの授業はかなり前からあった。だが、そのやり方が酷い。その酷いやり方を生みだした要因を変えなければ、結局同じことになるだけだ。
 官邸の教育再生実行会議が提唱したことだそうだが、おそらく、売れないパソコン業界の販売経路として、学校を考えたという側面が強いのではないだろうか。大学共通テストの民間検定試験の採用も、教育再生実行会議の提案だった。これが利権絡みであったことは、今や明らかだ。教育再生実行会議のメンバーに財界メンバーが多数入っていることを考えれば、景気回復の手段として構想されたと考えても不自然ではない。
 では、これまでのパソコンの教育で、何が問題だったのか。 “GIGAスクール構想の疑問 1人1台のPC 効果があるとは思えない” の続きを読む

再び刑事事件の「責任能力」が問題に 洲本5人刺殺、死刑破棄で無期懲役に

 2015年3月に、淡路島洲本で5人が刺殺される事件が起こった。全国に大きな反響があった大事件で、私も鮮明に憶えている。犯人は直ぐに逮捕され、裁判員裁判で死刑判決が出た。弁護側が控訴し、今日、一審判決が破棄され、無期懲役の判決がでた。再び、刑事責任能力が問われる難しい事例となっている。
 通常の殺人事件であれば、5人を刺殺したのだから、死刑判決がでることは、当然と思われるが、この事件では、当初からかなり難しい要素があった。
 朝日新聞の2017年3月22日号に次のような関連年表が掲載されている。
<2010年12月> 平野被告がインターネット上で他人を中傷し、精神科病院に措置入院
<2013年10月> 退院後、兵庫県明石市で一人暮らしをしながら治療
<2014年7月> 通院中断
<10月> 平野被告の母親から「息子が来るかも知れない。怖い」と保健所に相談。職員らが面談し、他人に危害を加える恐れはないと判断
<2015年1月> 洲本市の実家に戻る
<3月> 事件発生
<9月> 神戸地検が起訴。その後、裁判官、検察官、弁護人が公判前に争点などを協議
 ここでわかることは、平野被告が精神的な疾患を患っていたことである。 “再び刑事事件の「責任能力」が問題に 洲本5人刺殺、死刑破棄で無期懲役に” の続きを読む

少年法年齢引き下げ見送りについて

 選挙年齢の18歳への引き下げにともない、様々な「成人」に関わる年齢の引き下げが検討されている。最も重要な事項である少年法の適用年齢に関して、18歳に引き下げる案での法案提出を見送ったと報道されている。
 日本の少年法は、一時世界で最も保護的であると言われ、右派のひとたちから散々攻撃されてきた。その後、アメリカでの厳罰化の動向に後追いする形で、日本でも多少の厳罰化が実施されている。殺人罪などの凶悪犯は、逆送致によって、大人と同様の裁判を受けさせることが可能になっている。今回の審議において、法制審議会の議論がまとまらない、つまり、政府の意向である引き下げに同意しない委員が少なくなかったということだろう。
 子どもの犯罪を罰しない、あるいは軽い処罰にするというのは、古代からみられることであるが、子どもの年齢をどこまでと見るかは、近代とは異なっていた。小学校が始まるような年齢になると、大人と同じように裁かれるような時代が長かったといえる。19世紀末から20世紀にかけて、成人年齢に達しない、つまり青年期まで含めて、犯罪者の処罰を大人よりも軽減し、更生を重視する考えかたが、アメリカで少年法として成立した。それが日本に取り入れられたわけである。ニューディール派のかなり理想主義的な少年法が、戦後改革によって導入されたので、非常に保護的なものだったわけだ。 “少年法年齢引き下げ見送りについて” の続きを読む

「結婚しなくていい」ヤジ、野党の対応は稚拙ではないか?

 1月22日の国会代表質問で、選択的夫婦別姓の導入を認めるべきだという質問に対して、「だったら結婚しなくていい」というヤジが飛んだとされる。それに対して、「結婚の自由を否定する憲法違反の言論だ」「謝罪せよ」など強い非難が出されており、ヤジの主をめぐっても、自民党と野党の攻防が続いている。杉田水脈議員だという声が多いが、本人は無言を貫いている。自民党の森山国対委員長は「不規則発言自体がよくないと思うので、そういうことがないように(党内に)しっかり伝達する」と述べ、個別の発言はたださない意向だということだ。不規則発言がよくないのなら、安倍首相にそのように諫言すべきであろうと思うが、この問題はいろいろと考えさせる。
 まず最初に私の立場であるが、「選択的夫婦別姓」の導入に賛成である。ただし、結婚するときに、新しい姓をつくって、その姓になることも認めるべきだと思うので、100%「選択的夫婦別姓」がいいとは思っていない。ただし、新しい姓まで認めないなら、別姓もだめだなどとはまったく思っていないから、そのことには賛成である。
 そのことを踏まえて、このヤジをどう思うか。もちろん、感心しないが、しかし、この発言が「憲法違反」だとは思わないし、そういう発言をすることに対して「謝罪」をしなければならないとも思わない。 “「結婚しなくていい」ヤジ、野党の対応は稚拙ではないか?” の続きを読む