日産の電気自動車を購入すると、一月2000円(税抜き)で、全国どこでも、無制限に充電ができるというサービスを、日産がついにやめることになった。私は、今後車を買い換えることはないと思っているが、廃止前の定額制の記事を読んだとき、もし、買い換えがあるとしたら、日産のリーフもありだと思ったものだ。もっとも、同時に、そんなサービスいつまで続くだろうと疑問をもったことも事実だ。明らかに相当な出血サービスで、続ければ続けるほど、また利用者が多ければ多いほど、赤字を生むことになるわけで、いつか頓挫するに違いないと、通常思うのではないだろうか。そして、続けられなくなったとき、その条件に魅力を感じて購入したユーザーは、大きな失望を感じるはずだ。廃止は、意外なほど早くやってきたと感じる。
電気自動車というコンセプトは、将来的にはまったく正しいものだろう。しかし、現在の技術では、まだまだ購入する意欲はわかない人が多いはずである。その証拠に、ハイブリッドのほうがまだ売れている。なんといっても、充電の不便さが解消されない限り、魅力が不便さを上回りはしない。ハイブリッドなら数分の給油で700キロ走ることができるのに、電気自動車だと30分の充電で200キロというのでは、よほど近辺しか乗らない人以外には、相当不便な感じだ。その弱点を補うのが、2000円といういかにも安価な定額制だったのだろう。
急速充電の方式が飛躍的に改善されるか、(つまり、現在のガソリンと同じ程度の効率になるか)あるいは、バッテリーの交換で済むようになるか、これが実現すれば、急速に逆転が起きることは間違いない。定額制の廃止は、電気自動車の普及には水をさした形になったのではないか。
さて、この問題を考えたときには、電気自動車の問題というよりは、出血サービスに興味を感じた。
もう既に潰れてしまったのだが、新しく開業したイタリアン・レストランがあった。国道沿いにある店で、レストランが入れ代わり立ち代わり開業する場所で、つまり、長続きしないのだ。そのイタリアン・レストランも、当初から、これは無理だなと思ったことがある。その理由は、サラダバーの値段だ。前に、ステーキレストラン「あさくま」のサラダバーが、単品と、サラダバーに最安値のチキンステーキがついたセットが同じ値段だと紹介したことがあったが、ここは逆で、サラダバーのなかに、カレーやご飯、デザートなどの「食べ放題」が含まれていて、単品で300円だったのだ。多少サラダが豊富だったが、アサクマは、1200円だから、いくらなんでも安すぎると思った。消費者にとって安いのはありがたいが、これだけ極端だと心配してしまう。それで、わざわざ、アンケートに、「こんなに安くすると、近所の部活帰りの中学生がやってきて、サラダバーだけたらふく食べていく、ということになって、続かなくなりますよ」と書いてだした。余計なお節介ではあるが。それを受けたかどうかわからないが、少し経過した段階で、600円くらいに値上げしていた。私は、単品のサラダバーを注文することはないので、本当はどうでもいいのだが、しかし、こうやって値上げすれば、当然評判が悪くなる。かなり早い時期に倒産して、今は違うイタリアン・レストランの店になっている。
また、こういうこともあった。今は近くなのだが、当時はとなりの市に住んでいたので、少々車で時間がかかる場所にあった、割烹の店だ。ランチがとても豪華で、しかもものすごく安いのだ。さすがに割烹店なので、料理はしっかりしたものを出すものだという感覚なのだろう。そして、客を増やすために、料金を考えられないほどに低く設定していた。当然、ものすごく繁盛していて、いついっても、満員だった。しかし、いつのまにか、そのランチはなくなっていた。そして、今は店自体がない。
出血サービスを上手にやめて、しかも、そのサービスで獲得した客をキープしている店というのは、あるのだろうか。企業は、基本的に利益を上げなければならない。しかし、その利益幅を大きくすれば、当然顧客を獲得するのは難しい。利益がでないほどに、安くすれば、客はつくが、営業そのものがやがて無理になってくる。しかし、その安さにつられてくる客は、そのサービスを辞めれば離れていくだけではなく、まわりに、ある店はいいかげんだ、と悪評を広めるかも知れない。まだ確保とした地位を築いていない、新規開業の店が顧客を掴むというのは、本当に難しいのだろう。