カルロス・ゴーンの脱出劇

 日本人だけではなく、世界中で驚きだったようだ。
 ふたつ考えた。
 ひとつは、やはり、保釈したにもかかわらず、あまりに制限が大きいことについては疑問を感じる。保釈中は、少なくとも逃亡しないことが最重要で、居場所の把握が常に可能なようにしておけば、通常の生活が可能なようにすべきである。「推定無罪」なのだから、保釈中でも、司法が著しい生活上の制限、例えば家族とも自由にあえない、などというのは、やはり批判されてしかるべきではないかと思う。海外にいってしまったゴーン氏が、今後日本批判の言論を自由に行うことができるわけだから、日本の検察当局は、国際的な論戦を強いられることになるわけだ。かなり劣勢になるのではないかと危惧する。 
 もうひとつは、どうやって脱出したか。真相を明らかにすることはないだろうと思うが、既にいくつかの推測が出ている。外交特権を利用して、パスポート審査などのない「通路」を使ったのではないかというのが、有力のようだが、それが最も確実なのだろう。そういうときに、本当に誰にも見破られることがないのか、私にはわからないが、航空会社もグルになっていれば、おそらく可能なのだろう。
 他に、楽器のケースに隠れて運ばれたという説もでている。楽器のケースといえば、おそらくダブルベースなのだろうが、まさか、そのまま飛行機に荷物として積まれたわけではないだろう。チェロなら、一人分か半人分の料金を払って、ケースを客席に持ち込むことが可能だが、ダブルベースだと不可能だろう。すると、貨物室にいれられることになるが、そこは、マイナス50度近いというから、当然人間がいることはできない。ダブルベースのケースで住居を脱出し、しかるべきところで変装して、外交官になりすますということだろうか。
 ゴーン氏ほどの人脈と経済力をもっていれば、その程度のことはやる気になれば、実行可能なのだろう。それにしても15億円をポイと捨ててしまうのだから、「すごい」人には違いない。15億を没収されるなら、逃亡しない選択をするだろう、という判断で、その金額が決まったのだろうが、日本人の裁判官と、国際的な大富豪との感覚の相違が明確に出てしまった。
 とにかく、日本の検察が今後どのような対応をとるのか、注視したい。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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