オリンピックそのものをやめよう

 オリンピックの雲行きが怪しくなってきた。むしろ、多くの人がオリンピックを予定通り開催するのは、無理ではないかと思い始めている。アスリートたちですら、予定通り行うと宣言したIOCに抗議をしている。もともと、無理なオリンピックだったのだと思う。このブログで何度か書いたように、私はオリンピック反対派である。オリンピック招致を、熱心に政治家や東京都が行っている時期に、実は、世論の多数は、オリンピック招致に反対だったのだ。特に、東日本大震災が起きてからは、オリンピックどころではないだろうという意識が大半だったといえる。そのことを、大人の世代なら忘れていないだろう。 “オリンピックそのものをやめよう” の続きを読む

親を自宅で看取ることの「覚悟」とは

「『呼吸が止まっても救急車を呼ばない』親を自宅で看取る側の覚悟」という「女性セブン」の記事が掲載されている。https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200317-00000005-moneypost-bus_all
 ずっと以前から、ボケても病院にいれないで、と何度もいわれていた娘が、在宅医療を利用して、自宅で看取ったという話である。ただ、記事によれば、在宅医療を知って、大学病院を退院し、自宅に連れ帰ったとあるから、それまでは入院していたのだろう。
 そして、25年間在宅医療に携わってきた院長が、「最後まで治療する大学病院よりも、在宅は圧倒的に平穏死を迎えやすい。終末期には食べられなくなるのが自然だが、病院では点滴をするので苦しくなる」と語っている。
 もっとも、誰でも平穏死を迎えられるわけではなく、いざというとき、親族が救急車を呼んでしまうこともあるという。そして、よい在宅医を探すことが重要という結論になっている。
 このようなことは、もちろん確かだろう。しかし、いかにも予定調和的な文章で、そうはいかない場合も少なくないことを、きちんと書き、多様なあり方のなかで、普段からとるべき道を考え、そのために何をする必要があるのかを準備する必要があるとしなければならない。 “親を自宅で看取ることの「覚悟」とは” の続きを読む

神戸教師間いじめの起訴 「寛大」には疑問

 神戸新聞2020.3.122に、「教員間暴行の加害教員4人、なぜ起訴されなかった? 兵庫県警内でも意見割れる」という記事が載っている。昨年の教育界での事件として話題となった、教師が教師に継続的ないじめ行為をしていた事件で、警察内で扱いに関して意見が分かれ、「起訴猶予」を求める「寛大」という処分意見が付されて、送検されたようだ。刑事罰を課すべきであるという世間の意見が強かったが、「物的証拠が乏しい上に4人の加害の意識は薄く、2人は職を失った」というのが、その判断の根拠とされる。
 被害教員は、100項目にわたるハラスメント行為を訴えたが、加害教員は、「ふざけ合いの延長だった」と犯意を否定し、「動画以外の明らかな物的証拠がない」と立証の難しさをあげたとする。より厳しい措置を求める捜査員もいた。
 これに対して、逆といえる処分もあった。一般的に公務員が犯罪の疑いをもたれたとき、刑事処分が決定されるまでは、「推定無罪」が適用されて、実際の仕事を解かれることはあっても、正式な処分はくだされない。しかし、この事件では、処分を待たずに、懲戒処分がくだされている。それに対して、弁護士から不当であるとの申し入れもあった。 “神戸教師間いじめの起訴 「寛大」には疑問” の続きを読む

3月10日は東京大空襲の日

 世の中は新型コロナウィルスで大混乱だが、歴史をふり返っておくことも必要だろう。明日の311は記憶に新しいが、3月10日は東京大空襲(第一回目)の日であることは、歴史的知識としてのみ知っている人が、いまでは圧倒的多数だろう。私もそうだ。終戦間近の原爆の被害が大きく意識されるが、実は、何度も繰り返された東京や大阪等の大空襲の被害者のほうが多いのだ。そして、原爆投下は、政府も真剣に降伏を考えていた時期だが、東京大空襲のときには、戦争続行した。真相はわからないが、3月10日の空襲による惨禍をみて、さすがに降伏を勧めたひとたちがいたようだが、昭和天皇は、「もう少し戦果をあげてからにしよう」と降伏案を退けたという。 “3月10日は東京大空襲の日” の続きを読む

新型コロナウィルス対策は現行法でもできるはず

 安倍首相が、突然2月末に全国の小中高を休校にするという発表をしてから、政府が俄然動き出したように見えるが、逆にいえば、社会ではかなり混乱も生じており、やがては終息するだろうが、この混乱のつけは、かなり大きく社会の負担になると思われる。
 動き出した他のひとつは、新型インフルエンザ対策特別措置法改正である。現状では野党も賛成せざるをえないだろうから、早々と成立するようだが、この議論には、かなり気になる面がある。それは、法が整備されていないので、なかなか対策がとれないのだという主張である。だから、特措法の改正が必要だと政府は主張している。しかし、特措法の改正がなくても、かなりのことができる。というより、政府がやる気があるなら、ほぼなんでもできるだろう。明らかに違法である検事の定年延長までやってしまうくらいの内閣なのだから、得意の解釈変更でやることだって可能だろう。検事の問題は、自分たちに危険が及ぶのを防ぐためだから、まさしく「悪事」だが、感染症対策であれば、少々の解釈変更を、国民は前向きに受け入れるだろう。
 だから、法整備がないから、というのは、これまでの無為無策の糊塗に過ぎない。 “新型コロナウィルス対策は現行法でもできるはず” の続きを読む

自転車巻き込み事故は、いつも車の責任か 自転車免許制度は必要だ

 トラックと自転車の事故は、最悪の事態になる場合が少なくない。先日、18歳の女子高生が自転車を運転していて、左折トラックに巻き込まれ死亡する事故があった。トラック運転手が逮捕されたとニュースで報じられていたが、どのような状況で事故になったのかは、説明がなかった。車を運転していると、とにかく、自転車にはひやりとさせられることがある。私も、人身事故一歩手前になったことが2,3回ある。いずれも、スピードをだしていなかったために、事故にならなかったが、自転車がいたら、とにかく注意するようにしている。
 しかし、上のような事故報道に接したとき、本当に運転手が悪いのか、いつも気になる。もちろん、そういうこともあるだろうが、車を運転するには、試験があるし、また、事故が起きたら大変だから、ほとんどの人は注意しながら運転している。他方、自転車の場合、まるで交通法規など知らないというような、乱暴な運転をする者が少なくない。統計によると、車と自転車の衝突事故では、自転車側に、違法な運転があったとされるケースが60%以上あるのだそうだ。 “自転車巻き込み事故は、いつも車の責任か 自転車免許制度は必要だ” の続きを読む

羽田新ルートの問題 着陸の安全性は?

 新型コロナウィルス問題があまりに大きくなって、もうすぐ始まる、羽田着陸の新ルート問題は、あまり取り上げられていない。「全国新聞ネット」(2020.3.2)に「羽田都心新ルート、これだけある危険な理由 落下物や騒音だけじゃない深刻リスク パイロットには恐怖の空港に」という元パイロットで航空評論家の杉江弘氏の文章が載っている。これは、映像によるインタビューとして掲載されていた内容と基本的に同じで、その後文章化されたものだ。(ただし後述するように、重大なことが削除された内容になっている。)昨年末か、新年早々かは忘れてしまったが、この新ルートの実験的飛行が開始されるという記事があった。私の親しい人物が、ちょうどそのルートの下に住んでいるので注目した。実験後の記事も少しだけ見たが、かなりの騒音だったという。
 それより問題なのは、杉江氏の指摘する安全性だろう。 “羽田新ルートの問題 着陸の安全性は?” の続きを読む

演劇公演中止に対する野田秀樹氏の声明

 新型コロナウィルスの影響で、学校が全国的に休校になっている。(もちろん、すべてではない。)スポーツも無観客試合の形式で行われるものが多くなっている。そうしたなかで、野田秀樹氏が声明をだした。意見書を全文引用しておこう。

意見書 公演中止で本当に良いのか
コロナウィルス感染症対策による公演自粛の要請を受け、一演劇人として劇場公演の継続を望む意見表明をいたします。感染症の専門家と協議して考えられる対策を十全に施し、観客の理解を得ることを前提とした上で、予定される公演は実施されるべきと考えます。演劇は観客がいて初めて成り立つ芸術です。スポーツイベントのように無観客で成り立つわけではありません。ひとたび劇場を閉鎖した場合、再開が困難になるおそれがあり、それは「演劇の死」を意味しかねません。もちろん、感染症が撲滅されるべきであることには何の異議申し立てするつもりはありません。けれども劇場閉鎖の悪しき前例をつくってはなりません。現在、この困難な状況でも懸命に上演を目指している演劇人に対して、「身勝手な芸術家たち」という風評が出回ることを危惧します。公演収入で生計をたてる多くの舞台関係者にも思いをいたしてください。劇場公演の中止は、考えうる限りの手を尽くした上での、最後の最後の苦渋の決断であるべきです。「いかなる困難な時期であっても、劇場は継続されねばなりません。」使い古された言葉ではありますが、ゆえに、劇場の真髄(しんずい)をついた言葉かと思います。 野田秀樹(毎日新聞2020.3.1)

 私も同感である。 “演劇公演中止に対する野田秀樹氏の声明” の続きを読む

今度は全国休校の軌道修正か

 昨日の日本全国の小中高と特別支援学校の春休みまでの休校の要請は、案の定日本中で大きな驚きをもって受け止められた。おそらく、現場は相当な混乱に陥った一日を過ごしただろう。月曜日からということは、昨日発表されて、具体的なことを決めて、保護者や子どもたちに伝えるのは、今日一日しかないのだ。あまりに急だということで、火曜日からの休校を決めた地域もあると報道されていた。野党からは撤回要求などもだされたようだが、岸田氏は、「やることはすべてやるのだ」と応じたそうだが、「やるべきことを、かなりやらずにここまできた」のに、よく言う、という感じだ。 “今度は全国休校の軌道修正か” の続きを読む

大津いじめ事件二審判決 賠償額が1割に。信じがたい判決だ

 「いじめ防止対策推進法」なる法律まで生むきっかけとなった大津のいじめ自殺事件で、大阪高裁の判決が出されたと報道されている。今は、速報だけだが、読売新聞では、自殺の原因がいじめであったことが認められたが、一審での賠償額認定が3750万だったのが、400万だけになったとの報道だけだが、朝日新聞には、次のような理由が説明されている。
 「佐村浩之裁判長は、いじめと自殺の因果関係を認めた一方、「自殺は自らの意思によるものであり、両親側も家庭環境を整え、いじめを受けている子を精神的に支えることができなかった」などとして過失相殺し、元同級生2人に計約3750万円の支払いを命じた一審・大津地裁判決を変更して賠償額を減額。元同級生側に約400万円を支払うよう命じた。」
 これは、驚くべき論理だ。つまり、自殺の責任は、
1 本人の意思
2 親が家庭環境を整える責任
3 いじめ
ということになるようだ。そして、いじめをして、自殺に追い込んだ加害者の責任が1割で、本人と親が9割という計算がなされている。 “大津いじめ事件二審判決 賠償額が1割に。信じがたい判決だ” の続きを読む