有名大病院の研修期間の感染

 大学病院での研修医の研修に際して、禁止されている会食に出て、新型コロナウィルスに感染した例が複数生じている。高い倫理をもっていなければならない医師なのに、と批判が高まっている。
 ふたつの点を考えた。
 医師が高い倫理をもっていなければこまることは、もちろんそうだが、実際の医師が高い倫理をもっている人ばかりであるとは、到底思えない。これは聞いた話だが、ある女子大学のあるサークルが、有名国立大学の医学部の学生と共同して活動していた。そして、新入生歓迎会において、かならず新人たちに大量の酒を強要して、酔いつぶれるまで飲ませる慣習があるというのだ。大学の新入生だから、ほとんどは未成年である。だから、違法行為ともいえるが、まだ飲酒経験のない人に、酔いつぶれるまで飲ませることが、命にかかわる危険な行為であることは、当然医学部の「先輩」たちは、充分に知っているはずである。心底驚いた。もちろん、医学部の学生みんながそういう非常識人間だとは思わないが、集団的、かつ慣習的になると、そこまでやってしまうのだと憂鬱になった。
 他のことは、あるとき、医科大学に勤務している卒業生と、用があって話したとき、たまたま大学病院の医者たちの研究会があって、その弁当が余っていたので、分けてくれたのだ。家に持ちかえって食べたところ、それまで食べたことがないような豪華な弁当だった。職場の大学の同僚である医者に聞いたところ、病院での研究会などには、必ずといっていいほど、製薬会社などがそういう豪華弁当を差し入れるのだと、話してくれた。
 慶応大学や京都大学の研修医だとしたら、当然、未来の有力医師たちだから、製薬会社たちが、会食を設定して、招待していたに違いない。いくら禁止と言われても、応じる若手が当然出てくる。指導する側の医師たちが、まったく出ていなかったとは言い切れない。
 こうした構造そのものも問題としなければ、単に倫理を説くだけでは、なくならないような気がする。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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