非常事態宣言が発せられて以降、かえって感染者が増えている。私は、退職の身なので、ほとんど一日コロナ情報に接しており、また、海外の情報もテレビで得ている。そういうなかで、現場で影響力を行使しているひとたちの行動に、理解できないものをいくつも感じる。
現在、本当に医療崩壊の危機に直面している。というより、既にいくつかの地域では医療崩壊の現象が起きている。今後そうした事態がどんどん進行するだろう。
何が不思議かというと、そういう現象がおきるという警告を、たとえば、羽鳥モーニングショーは2カ月くらい前から、毎日のように発してきた。そして、そうならないための方策を説明してきた。厚労省との論争などになった番組だから、政府関係者も注目していることになる。どういうことを言ってきたかというと、私なりの理解で整理すると
・できるだけ多くの検査をする必要がある。そのために保険適用し、民間の検査機関を活用すべきである。
・コロナが疑われる最初の診察は、一般の病棟や医院ではなく、発熱外来を臨時に設置して、(病院とかの敷地にテントを設定したようなものでもよい。)厳密に、その他の診察とは分ける。また、ネットでの診察でもよい。
・陽性であっても、軽症や無症状の場合には、病院に入院させる必要はなく、ホテルとか、国の研修施設、あるいは、選手村などを活用するのが望ましいが、無理なら、体育館などの広いところに、ベッドを並べての収容でもよい。既に感染しているのだから、他人への感染を防ぐ必要はない。治療法はないのだから、重症化したらすぐに、特別の確保した病棟に移せるような手配をしておく。そうしないと、医療崩壊がおきる。
このようなことを、繰り返し述べていた。そして、私は、これらの方策には、非常に合理性があると思っていたし、実際に、大変な状況になるに従って、このやり方に近づいてきつつある。だから、早期にやっていれば、医療崩壊に陥る危険性は、かなり回避できたはずなのである。
しかし、検査は極めて制限されていた。陽性であると、全員が入院という措置にした。つまり、感染者が病院にたくさん存在することになった。いやでも院内感染の危険が高まる。これは、どうもセットであったようだ。しかし、本来検査と全員入院は切り離すべきものだったのである。
ネットでの遠隔診察に対しては、医師会が強行に反対したのだという。理由がよくわからない。治療法がない疾患であるにもかかわらず、感染力が強いものであれば、当然、安易に一般病院にこないほうがよい。だから、遠隔診察は極めて合理的な方法だ。厚労省は押し進めようとしていたが、医師会の反対でとりやめになったという情報がある。それが本当だとしたら、医療崩壊に対して、医師会こそ、大きな責任があるのではないだろうか。もちろん、医師会とは、現場の医師たちの総意で動いているとは思えないのだが。
次に不思議なのは、マスクの2枚配布だ。マスクがないので喜んでいるという人だっている、と弁護するひとたちもいないではないが、圧倒的に、馬鹿げた政策だと思われている。海外からも笑い物になったようだ。しかし、そのことではなく、政府として決めたはずの、国民にわざわざ配布するマスクを、安倍首相以外は、国政に携わっているらしきひとたち、そして、そのまわりにいるひとたちの、誰もしておらず、別の使い捨てマスクをしていることである。安倍首相も一度、使い捨てにしたようだが、批判されて、一人だけ孤独に、布製マスクをしているのは、逆におかしい。洗って使っているのだろうか。
そして、不思議の最後は、非常事態宣言の説明だ。国民にお願いしたけれども、そのことよりも、本当に必要だと多くのひとたちが思っている補償を「しないのだ」ということを、むしろ強調して宣言していたことである。国会議員も、何人か、選挙区に帰ると報道されているが、自民党の国会議員すら、自粛要請を守らないのだから、補償もされるない国民が守るとしたら、それは、国民のレベルが、政府のひとたちよりもずっと高いからだろう。