現状のまま推移すれば、休校措置は延長せざるをえないだろう。もちろん、全国的にではないが、少なくとも首都圏では、通常の形態での授業再開は危険だと思わざるをえない。学校での感染が起こったら、かなり深刻な事態となる。再開するにしても、いろいろな工夫が必要だろう。
3つの密という概念は、学校の教室ではほぼ当てはまる。密にしないためには、空き教室の活用、部分登校、午前午後の分割授業など、いろいろな形態がありうるし、実態にあわせて、柔軟に対応すべきである。そして、いずれも、遠隔授業との組み合わせが有効であると思われる。
現在、かなりZOOMの使用が増大しているようだが、他方で、ZOOMはセキュリティ上の問題があるという情報も広まっている。アメリカの企業などでは、使用禁止としているところもあるという。しかし、今、学校で遠隔授業を行うとしたら、やはり、ZOOMは最も便利なツールだろう。これまでの遠隔授業は、授業を映像にとって流すという形が主流だったと考えられるが、今必要な遠隔授業は、双方向のやりとりが可能なものである。特に小学生に、ある教師が行った、カメラの前の授業の映像をみて、授業を消化していくことは、短期間ならいいだろうが、多少長引くとすれば、やはり効果が薄い。リアルタイムでのやりとりが可能でなければならない。そのためには、いくつかのソフトがあり、lineも急遽そうした機能を追加したようだが、現時点では、やはり、ZOOMの便利さが目立っている。音質がよいことと、資料の提示ができること、双方向のやりとりができることという、使い勝手だけではなく、なんといっても安価なことが大きい。特別な設備もいらない。安価だから、たしかにセキュリティが甘い点があるのだろう。だから、企業が、重要な会議で、ZOOMを使ってやるなどということは、避けるべきなのは納得できる。しかし、学校の学級単位、あるいは大学のゼミ単位で、外部からの侵入の危険度などは、ほとんど無視できる確率なのではないだろうか。
車でいえば、ZOOMは軽自動車のようなものかも知れない。それに対して、企業などが重要な会議を行うシステムは、安全システムがフル装備されているベンツのようなものだろう。軽自動車のほうが事故のリスクが高いことは事実だ。しかし、日常的な用途で軽自動車しか使えない場合、リスクが高いから乗らないという人は、あまりいないのではないだろうか。運転をするときに、交通ルールを守り、慎重に運転すれば、事故の確率はゼロに近くなる。
同じように、インターネットを利用する際にも、守るべきことを守っていれば、致命的な被害は受けないものだ。クレジットカードナンバーを安易に打ち込んだり、個人情報を不要なところで書き込んだり、あるいは、個人の写真を安易に掲載したり等々をしなければ、若干セキュリティの甘いソフトを使用していても、被害を避けることはできる。子どもたちの顔を映さない、名前を呼んだりしない、そういう遠隔授業であれば、算数の授業がハッキングされても、たいしたことのようには思われない。
問題は、そうした不安を過度に恐れて、何もしないことだろう。休校にすれば、子どもたちの学習はそれだけ遅れるわけである。もちろん、わずかな遅れをたいしたことではないと考えることも、まったく間違いではない。遅れなどは、だいたいは取り戻せるものだ。しかし、そうを前提に考えているとしたら、教師としては大いに問題だろう。
私自身、大学に入学したときに、無期限ストライキを一年やって、その間授業がなかった世代だ。授業がないからといって、クラスで集まって勉強会などをしていたし、紛争状況だから学べたこともあるが、それでもやはり、失ったものは大きい。特に、大学入学後に最も重要な第二外国語の習得には、かなりマイナスだった。やはり、授業がないと学べないものがあるのだ。
休校中でも、学習権を保障するために、様々な形態でのあり方を考えて、対応する必要がある。