経済対策に納得できないものが多い

 私は、経済が専門ではないし、あまり経済情勢に関する記事を熱心に読む方ではないので、あくまで素人の感覚に過ぎないのだが、新型コロナウィルスによる経済的打撃をどう打開するのか、という議論には、どうもピンとこないものが多い。
 まず消費税の引き下げ、あるいは撤廃などの消費税関連、また、仕事を休んだことに対する給与補償、そして、消費を拡大するための国民への給付金などがでている。どれも、消費がすっかり冷え込んでしまっているので、なんとか消費を増大させることが意図されている。
 ところで、現在起きている経済の停滞現象は、お金が足りないことになって、消費が低迷しているわけではなく、何よりも、新型コロナウィルスの感染を防ぐために、催し物の中止、人の移動が事実上制限されるために、観光にかかわる交通機関(飛行機)などの利用が極度に減少、部品工場が国際的レベルで停止しているので、サプライチェーンが寸断されての生産困難、学校の休校で親が仕事を休まざるをえない、等々によって起きている。端的にいえば、新型コロナウィルスの感染がおさまって、あるいはおさまらなくても、拡大を防ぐ有効な薬、あるいは社会システムが見いだされ、止まっているサービス業や工場生産が再開されなければ、復興はできないのである。
 従って、何よりも重要なのは、一律に制限している様々な「活動」を、絶対ではないにせよ、かなり感染を防ぐことができる方法を確認して、再開することではないだろうか。学校を一律に休校させたことは、私はよい政策とはとうていいえないと思う。学校は、毎年のインフルエンザの流行による学級閉鎖や学校閉鎖というやり方になれているのだから、現場に判断を委ねてもよかったのである。少なくとも、数日間の判断期間をおいて、情報を公開し、休校にするにしても、その間の行動の仕方を子どもたちに確認させる必要があった。学校の休校は、いろいろな方面に経済的打撃を与えている。休まざるをえない親の給与の損失、給食事業の休止、学校を休ませることと並行して進んだ、娯楽施設な公共施設の閉鎖、芸術活動の制限等々。こうしたことが続く限り、そこでの損失も継続していく。そして、こうした事態が変化しない限り、消費税がなくなっても、いま損失をうけている部分に恩恵がいくわけでもないのではないか。また、給付金をもらっても、飛行機に乗ったり、ホテルに泊まったりするわけでもないだろう。もちろん、政府の要請で休業せざるをえなくなって、経済的損失が生じている場合、それを政府の責任で補填していく必要はあるだろう。
 また、ライブハウスがクラスターになったものがあるといっても、多くのライブハウスで同様のことが起きたわけでもない。次第に、どのようなことを避けなければならないかがわかってきて、国民も、また、経営しているひとたちも理解してくれば、感染を防ぎながら、活動をすることが可能になるのではないかと思うし、また、そうしなれば、いつまでも制限措置を続けなければならない。いつまでもこの感染状況が続くは、誰にもわからない。専門家も人によっていうことが大分違っている。また、終息というのも、何をもって判断するのかも、おそらく専門家で多様な見解があるに違いない。中国では終息に向かいつつあると、中国政府はいっているが、それが事実だとしても、新たに外国からはいる人が感染源となる可能性はいくらでもある。
 終息しない限り、様々な制限を継続するなどということは、とうていできないことははっきりしている。
 従って、経済再生の一番大事なことは、制限された活動を、安全に再開する方法と基準を見いだし、慎重さは必要であるが、活動を再開することなのではないだろうか。いくつかのレジャー産業が再開しているので、そのやり方と結果を慎重にみておきたい。
 ただ、そうした方法と基準を見いだすといっても、日本人の間では比較的容易な気はする。日本の感染者数については、検査を制限しているから少ないという見方もあるが、死者が少ないことも事実なので、やはり、日本の生活習慣が感染を抑制していると考えられる。マスクや手洗い、消毒の履行、そして、靴を脱ぐ習慣も大きいはずである。しかし、外国からの観光客に依存している業界に関しては、正直どのようにすべきなのか、つまり、受け入れつつ、感染を防ぐ手だてがあるのか、一生懸命考えているのだが、私には思いつかない。やはり、制限しかないのだろうか。また、相手国が制限してしまったら、日本で受け入れても、やってこない。この点については、もっと考えてみたい。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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