皇位継承有識者会議報告書の検討3

 報告書は、皇族の数の確保策として、まずは、内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を有することになるという提案をしている。ここにも、いくつかのおかしな論理がある。
 女性皇族が結婚後は皇族でなくなるというのは、男女平等に反するし、また、女性・女系天皇を容認する立場からは、結婚後も皇族であり続けるようにすることは当然であるとしても、そこに余計な考察が入ってくるのが、この報告書の特質である。
 まず、結婚後も皇族として残ることを正当化するために、報告書は、明治時代に旧皇室典範が定められるまでは、女性も皇族のままであったという歴史をもちだし、和宮の例をだしている。それならば、旧皇室典範で導入された男系男子などという原則を、前提にするのは何故か。旧皇室典範が、男系男子に限定したことを、吟味する必要があるのではないだろうか。男系男子があたりまえのことのように主張する人たちがいるが、この原則は明治時代にはじめてできたものである。

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皇位継承有識者会議報告書の検討2

 まず初めに確認しておく必要があることは、この皇位継承有識者会議(会議1と略)の認識が、まったく国民の見解と隔絶しているという点だ。どのような世論調査でも、女系天皇・女性天皇の支持者は7割を超え、女性天皇に至っては8割以上が賛成している。ところが、この会議1が行ったヒアリングでは、21名から意見聴取をしたそうだが、「ヒアリングの中では、皇位継承のルールについて悠仁親王殿下までは変えるべきでないとの意見がほとんどを占め、現時点において直ちに変更すべきとの意見は一つのみでありました」と書かれている。もちろん、女系天皇・女性天皇支持に対して、ただちに変えるべきかという質問項目にすれば、減るかも知れないが、女性天皇支持者は、愛子天皇実現を望むという意味と考えられるから、実質的には直ちに変更を望んでいるわけである。国民の70%と、会議1のヒアリングでは、4.7%の相違は、はっきりと記憶しておくべきことである。つまり、国民の意識をまったく無視したヒアリングをした上での報告書であるということだ。有識者会議は、「天皇は国民の総意に基づく」という意味を、真剣に考えてみたことはないに違いない。この点については、報道でほとんど触れられていないので明確にしておきたい。

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皇位継承有識者会議報告書の検討1

 有識者会議なるものの報告書がだされたが、問題解決にはまったく無意味だという評価が固まっているようだ。女性宮家とか、旧皇族の復帰あるいは養子縁組などという、皇位継承問題には、ほとんど関係しないことが結論になっているだけで、これほど、ほとんどの国民をがっかりさせる報告書もめずらしいといえるだろう。 
 最近、ぼちぼちと皇室の歴史を書いた本を読んでいるが、興味深かったのは、明治天皇まで一般的であった正妻以外に側室をもつことをやめようということになったのが、条約改正のために、ヨーロッパの王室のような体裁にしなければならない、側室などは欧米に認められないという意識だったようだ。もっとも、明治天皇の親王はすべて皇后以外が母親だから、そうはいっても、極めてあいまいな形での対応だったにすぎない。運がよかったのか、悪かったのか、大正天皇には、親王が4人も皇后から生まれたから、その雰囲気のなかで、昭和天皇が側室をもつことを断固拒否することが可能になったのだろう。

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武蔵野市の外国人を含む住民投票案の否決は残念だ

 既に決まっていることで、しかも日時が経過してしまったが、今年の終わりのテーマとして書いておきたい。
 日本人と同じ資格(居住3カ月)で、住民投票の権利を外国人に付与するという案が、議会に提案され、それが否決されたのが事実だ。ほとんど同じ内容での住民投票を認めている自治体が、実際にはある。大阪豊中市と神奈川県逗子市で武蔵野市提案内容と同じ内容で施行されているそうだ。その他に条件は違うが外国籍を認めた住民投票の規定があるのは43自治体だそうだ。大阪といえば、維新のお膝元だから、ここで実施されていることは、驚きでもある。
 さて、この条例案に対して、反対派たちが行った運動は、いかにも醜悪だったといわざるをえない。外国人の住民参政権の提案についても、同じような反対がなされたが、いっていることがあまりに荒唐無稽というべきだろう。

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悠仁親王が筑波大付属に進学?

 文春オンライン2021.12.22に、「悠仁さまの進学先は『偏差値67』筑波大学付属校」という記事が配信された。題名だけで判断すると、筑波大付属に決定したかのようだが、記事を読むと、その可能性を示唆したような文章だ。お茶の水女子大のほうで、提携校進学への出願にゴーサインがだされたようだという、秋篠宮家関係者の談話が載せられ、筑波大学の学長を直撃したところ「可能性がある」という回答だったという。今このブログを書いている時点で、配信から50分程度経過しいてるが、コメントはまだついていない。(他のことをしていて、4時間経過したが、いまはコメントが5000近くついている。) 
 決定したのかどうかは、わからないが、その可能性があるという点で考えてみよう。
 ひとことでいえば、「合格おめでとう」と、本心から言ってくれる人など、ほとんどいないだろう。少なくとも、ずっと注目されているこの問題について考えてきた人であれば、肯定的に考えられる要素が、ほとんど思いつかないくらいである。

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安倍晋三氏の反中国発言 習近平国賓招待を決めたのは誰だったか?

 「台湾有事は日本の有事だ」などと、かなり大仰なことを発言している安倍元首相は、よほど自分の地位に危機感をいだいているのだろう。あれだけ岸田氏を後継にするといいながら、結局突き放し、9月の総裁選では高市氏当選のために全力をあげていた。決選投票では岸田氏を推薦したといっても、それまでの岸田排除からみれば、人事で安倍氏の要求を、岸田総裁が飲まないのは、ごく当たり前のような気がする。
 盟友の高市氏と一緒に、反中国キャンペーンに熱をあげている。そうやって、岸田氏に揺さぶりを掛けているのだろう。
 しかし、いくら忘れっぽい日本国民でも、習近平首席を日本に国賓として招待したのは、安倍首相(当時)だったことを忘れるわけにはいかない。国賓としての招待に関しても、自民党内でかなりの議論があった。現在でも、当時の招待に反対する記事や書き込みは、多数残っていて、簡単に見ることができる。そうした、自民党内部ですら強かった反対を押し切って、安倍首相(当時)は、招待を決定した。そして、その日程は2020年4月の予定だった。

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大阪放火事件から刑法39条を考える1

 大阪で悲惨で放火事件が起きてしまった。放火犯人と思われる人物は、このビル内の心療内科に通っていた可能性があるといわれ、精神疾患を患っていたと考えられている。既に、精神疾患と犯罪の認定に関する議論が、ネットでは起きている。つまり、刑法39条の問題である。
(心神喪失及び心神耗弱)
第39条
1. 心神喪失者の行為は、罰しない。
2. 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
 以前から大論争となっている条文であり、条文そのものだけではなく、個々の犯罪に関しても、精神的な疾患がからんでいる犯罪の場合には、大きな議論になっている。この39条自体が、人権を否定する違憲の条文であるという見解から、この条文をできるだけ広く適用すべきであるという肯定的な見解まで、非常に広い議論の幅がある。
 現代の刑罰の基本的な考えは、犯罪とは、意図してその行為を行い、その行為の善悪を判断できる状況で実行されたものであるというものである。従って、意図していない行為(本来注意をしなければならないが、注意を怠ったために犯罪行為になってしまった場合は、注意義務という点で意図の有無を考えるから、意図したものとされる)、そして、善悪を判断できない状態での行為は、罰しないということになっている。しかし、犯罪を罰することの目的のひとつとして、被害者救済、被害感情への対応があるとすると、被害を受けたのに、加害者がまったく罰せられないことは、被害者として納得できないという感情が強く残る。

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生活保護訴訟 コピペ問題を考える

 生活保護費の減額をめぐって起こされた全国29の訴訟の判決が、いくつかでているが、今年になってだされた福岡(5月)、金沢(11月)、京都(9月)の判決に、同じ文章があり、また、誤字(NHK受診料)が共通して使われていたということで、コピペをしているのではないかという騒ぎになっている。もちろん、正確なことはわからないし、判事たちが、コピペしましたなどと認めるはずもない。また、裁判官は同じワープロを使っているはずなので、似たミスをする可能性もあるし、報道されている文章については、決まり文句的な表現でもあるので、似たとしても不自然ではないともいえる。判決文というのは、原告と被告の主張を整理して、どちらかの論理を採用するわけだから、被告が同じである以上、裁判が異なっても、同じ被告が同じような陳述をしているはずで、コピペしなくても、似たような判決文になる可能性は、小さいとはいえないだろう。
 また、原告にしても、29の訴訟を起こす集団訴訟だから、原告団として共通の文書を用意しているだろうし、そこではコピペが多用されていると想像できる。
 従って、私はコピペがあるから問題だとは、必ずしもいえないと思うのである。

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ジャーナリストによる名誉毀損訴訟2

 前回、安田氏は、極めて狭い価値観からものごとを見ているのではないかと書いた。それを感じるのは、小室圭-真子氏の結婚に対する見方である。
 「皇室と結婚の報道に感じる理不尽さ」と題する文章を日経新聞のCOMEOというサイトに書いている。皇室と結婚の「報道」に感じる理不尽さ|安田菜津紀(フォトジャーナリスト) (nikkei.com)
 
「両性の合意に基いてのみ」婚姻が成立するはずのこの社会で、生まれながらにして「国民」扱いされず、寄ってたかって自身の結婚を「認める」「認めない」と言われ続けなければならない立場に置かれてしまう不条理…報道に触れる度、そんな違和感を抱いていた。
「こっちは税金払ってるんだから」という乱暴な声さえ耳にする。自ら立候補した国会議員と違って、彼女は生まれながらにして今の立場にある。「お金が絡むんだから結婚にも口を出されて仕方がない」かのような立場に誰かを追いやっていること自体が、非常に理不尽ではないだろうか。
 
 このあと、小室圭氏の帰国時の騒動について触れているが、ロンゲがどうのこうのという報道については、私も呆れていたので、その部分については特に異論はない。問題は、上の引用部分だ。

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ジャーナリストによる名誉毀損訴訟1

 ジャーナリストの安田菜津紀氏が、差別投稿されたとして、195万円の損害賠償を求めて、東京地裁に提訴したという記事が,12月8日付けで一切に配信された。安田氏は、TBSのサンデーモーニングに出演しているので、何度も見たことがあり、考え方も知っているつもりだ。基本的には、彼女の考えかたを支持していることは明言しておきたい。
 しかし、今回の提訴については、あまり好感をもてない。
 まず事実経過を確認しよう。
 昨年の12月13日に、「もうひとつの遺書、外国人登録原票」というエッセイを、彼女が属するDialogue for People のホームページに掲載した。https://d4p.world/news/8032/
 そして、そのエッセイを広めるためだろう、自分のツイッターに、12月19日に紹介した。すると、そこに以下のような書き込みがなされたという。

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