公明党が選挙公約に掲げ、政府に協力に要請した18歳以下の子ども全員に10万円を給付するということが、違う形になったにせよ、連立政権の枠内では合意ができた。所得制限を設け、まずは現金5万円を支給し、それから5万円相当分のクーポンを配布する。あわせて、困窮している学生にも10万円を支給するというようだ。
念のため野党の政策もみておこう。選挙前の公約では以下のようになっていた。
・立憲民主党「子育て世帯への特別給付金(5万円)の再支給を求める再要請」2021.10.5
低所得の子育て世帯に児童1人あたり5万円
住民税非課税の世帯と収入急減に、1人10万円
・日本共産党
―――コロナ危機で収入が減った家計への支援として、1人10万円を基本に特別給付金を5~6兆円規模で支給し、国民の暮らしを支えます。いわゆる中間層(年収1,000万円未満程度)を含め幅広く対象にします。生活が困窮している低所得者には手厚い支給をします。
・れいわ新撰組
コロナ収束まで、国民1人あたり10万円、毎月支給 110兆
インフレ率2%までは国債発行○
立憲民主党は、一律と低所得とを混在させているが、主要には困窮世帯対応である。共産党は中間層を含めるが、困窮者に厚くする。そして、れいわ新撰組だけが、一律、しかも「子ども」などの制限をつけずに、国民全員に、かつコロナ収束まで毎月10万円ということだ。正直なところ、国民一人あたり10万といえば、5人家族なら50万になり、毎月の収入より多い場合も少なくないのではないだろうか。これで多くなった収入に対しては、所得税として回収するということも含みなのかも知れないが、他党とあまりに違うので、現実味があるのかという疑問ももたざるをえない。(山元太郎氏の映像による説明を聴いたが、当人は真剣に考えているようだ。)
さて、自民・公明の妥協案については、早速様々な批判が巻き起こっている。960万が線引きラインだが、例えば、夫婦で950万ずつ、合計1900万の収入がある場合、支給を受けられるが、夫が970万だが、妻は専業主婦の場合には、受けられない。おかしいではないか、というような批判だ。しかし、これは、児童手当の支給方法に準じているために、世帯としての収入を基準にすると、まったく新しい方式での扱いになるので、相当な時間がかかってしまうということのようだ。
他方、福祉的な意味をもたせることに賛成でも、この方式は実質的に不合理であり、所得制限を設けるべきではないとする批判もある。まず、世帯をわけるために、かなりの労力が必要であること、また、クーポンにすれば印刷代や郵送料がかかる。そういう費用のほうが、所得制限をすることで省かれる支給額より多くなってしまうという批判だ。実際のところはわからないが、ありうることかも知れない。
福祉なのか、経済活性化なのかが、中途半端だという批判もある。
クーポンを含めるのは、現金を配っても貯金に回るということのようだが、テレビのインタビューでは、クーポンで浮いたお金に対しては、ほとんどの人が貯金すると答えていた。自民党の思惑は、ずれていることになる。そんなことは、自民党でもわかっているだろう。すると、クーポンにする理由は別にあることになる。これは、多くの人が指摘しているように、クーポンにすれば、その作成にかかわる企業が潤うということだ。わざわざそうした企業に利益をまわすために、配布を遅らせ、使い道を制限する。
この問題については、いろいろと考えてみたが、
・所得制限はしないほうがよい
・クーポンなどは論外である
・18歳というのが、教育などの負担を軽減する意味ならば、専門学校生や大学生も含むべき
・この他に、困窮者への支援を継続的に行う
というようなことがよいのではないかと思っている。
福祉のため、経済活性化のためというふたつの目的は、一方に限定することはできないだろう。裕福な人は、おそらく給付金を使うだろうから、経済活性化に役に立つ。困窮している人が貯金するとしたら、それは福祉的役割を果たすのだから、積極的に認めてもよいのではないだろうか。そして、所得制限をしないことの最大のメリットは、迅速にできるという点だ。クーポンは、印刷業界や仲介業者に利益になるだけで、受け取る側のメリットは何もない。しかも、使い道が限定されているとしたら、政府とその限定された業界との癒着を疑ってしまう。いずれにせよ、有害無益である。
前回の給付金配布のときも、また今回も強く感じるのは、日本のITがいかに遅れているかということだ。マイナンバーカードの普及が遅れているからだ、などということもいわれるが、違うのではないか。マイナンバーカードとマイナンバーの関係性が、私には非常におかしいと感じる。政府の対応をみていると、マイナンバーカードが普及しないと、様々な行政対応ができないような言い方だが、基本はマイナンバーではないのだろうか。国家的に必要なことは、基本マイナンバーで抑え、カードなどもっていなくても、マイナンバーを窓口で打ち込むことで処理できるようにする。また、マイナンバーで処理できることはする。
今年から始まったワクチン接種では、接種券が郵送されて、そこに記載されている接種番号で処理されているが、マイナンバーで管理すれば、接種券など郵送する必要がないし、また、4回接種などということも起きなかったのではないだろうか。年齢制限による指定で振り分けることができ、実際に接種が済めば、マイナンバーでそのように登録すればよい。住民票にマイナンバーが紐付けされていれば、ナンバーの用紙やカードを紛失した人の手当ても容易にできるはずである。
所得税・住民税と紐付けされていれば、所得制限の給付金なども、簡単に支給の処理ができる。マイナンバーについては、また別の機会に考察したい。