流山市は子育てに理想的な街? 過ぎたるは

 昨日の日本テレビの「スッキリ」で、流山市が扱われていた。子育てに理想的な町だということらしい。流山に住んでいる身として、あまり愉快な内容ではなかったので、以前にも似たようなことがあり、書いたことがあるのだが、再度書かざるをえない。
 流山市が子育て世代の若いひとたちを、呼び寄せようと様々な施策をとっていることは間違いない。そして、この人口減少社会において、珍しいほどに人口が増加していることも事実だ。増加分は若い世代であることも。
 しかし、どんなことも「過ぎたるは及ばざるが如し」なのである。番組では、保育園の待機児童がゼロだ(これにも疑問はあるのだが)として、いくつかの保育園を紹介し、更に、駅まで子どもをつれてくると、そこから各自の保育園に送っていってくれ、更に夕方は迎えに行って、親がくるまで預かってくれる施設まで紹介していた。確かに、親の都合からすると便利だが、問題はないのだろうか。驚いたのは、その利用料が驚くほど安いことだ。ちなみに、流山は様々な市の施設の利用料金が安い。となりの松戸市などと比較すると、驚くほどだ。無料で利用できる施設なども少なくないのだ。しかし、そこにはちゃんと働いて管理している人がいるわけだから、無料や格安で利用できるということは、他のひとたちが負担していることを意味している。保育園送迎施設が、ただみたいな料金で利用できることは、保育園を利用していないひとたちが、それを支えているわけだ。もちろん、子どもたちがいることは社会にとって好ましいことだし、子育てを応援することは大切なことだろう。しかし、バランスというものがあるのではないだろうか。弊害もいくつかあるといわざるをえない。

 では、どんな弊害があるのか。特に調査などしなくてもわかる範囲で以下のようなことがある。
 まず第一に、圧倒的な学校の不足である。流山の開発が進んだのはツクバエクスプレスが開通したことがきっかけになっている。流山市内にその駅は3つあって、主要なのが「おおたかの森」である。東武線と交差する駅であることもあり、おおたかの森を中心に、大規模開発が現在も進行中である。大きなショッピングモルがいくつも建設され、マンションがいくつかあるかわからないほど建てられ、いまでも新しくあちこちで建設工事が進んでいる。子育て世代が中心だから、当然子どもがたくさんいる。当然学校が必要である。
 おおたかの森の駅前にあった小学校が、近くに移設されたが、そこはたちまち満杯になった。そして、駅から反対に徒歩10分くらいのところに、数年まえに大規模な小中学校併設の学校が建てられた。そこもいっぱいになっている。スッキリでは、1500人もの子どもが在籍していると報道しており、とにかく、大きな学校だ。既に溢れるほどになって、プレハブ校舎まで建てて、収容しているのだが、またまた別口の小学校と中学校が建設中である。(一部開校しているようだ)この学校もかなりの規模であるようだ。
 しかし、それでも足りなくなることが予想されており、先の大規模校から、徒歩5分くらいのところに、既に小学校の建設工事が始まっている。
 実は、私が別の市に住んでいたときにも、似たような状況があり、本当に近い距離に3つの小学校があった。しかし、今ではそれらの学校は、どれもほんのわずかな子どもたちしか在籍しておらず、教室は空き教室だらけである。ちょっと離れた別の小学校は、閉校になったが、そのまま荒れ果てた校舎が、いまでもそのまま残っている。
 私たちが心配しているのは、こんな大規模校をつくって、もうしばらくすると荒れが始まるのではないかということだ。新興住宅地の大規模校は荒れやすいというのは、あちこちで報告されている。そして、20年もたてば、これらの大規模校も閑散としたものになるに違いない。そうなったときの活用法がきちんと考えられているのか。私にはかなり疑問なのである。
 第二に、これらの学校建築や保育所関連の財政負担が膨大なものになり、市の財政はかなり危険な状況だということだ。人口が増えるから、税収も増える面があるとしても、支出の増加のほうが圧倒的に大きいはずである。増加する人口は若い世代だから、所得が非常に高いわけではない。しかし、子育てのために移住してくるのだから、かならず子どもがおり、保育園や学校に通うわけだ。それだけ保育所や学校をつくって、人員を配置する必要がある。そうした費用のほうが大きいことは、容易に想像がつく。
 第三に、大規模開発のために、緑地が極端に減少していることである。中心が「おおたかの森」であるが、字の通り、以前は大鷹が住んでおり、広大な森があった地域だ。しかし、現在は、大鷹がいたという森は、まったく消えている。すべてが住宅地に変わってしまった。私が住み始めたころも、けっこうな森の伐採が行われていたというが、ツクバエクスプレス建設以前は、まだ森はあちこちにたくさんあった。しかし、驚くほどの勢いで森が消滅している。その結果は気候にはっきり表れている。直接市長と話したことがあるのだが、そのとき、流山は東京より気温が4度低い街ということで、工場を誘致していると豪語していたが、確かに、以前は流山はたくさんの森のおかげで、気温が低い感じがしていた。私の職場は、夏暑いことで有名な市だったのだが、勤め始めのころは、真夏に職場では刺すような日差しに苦しんでいたが、まだ午後の暑い時間帯でも、帰宅すると、ほっとしたものだが、辞めるころ、数年前には、少しも暑さが和らぐ感じはなくなっていた。森がなくなり、人口が増えただけではない。市長は更に、高速インターチェンジ周辺を大規模配送センターに変えた。東洋一などと豪語している。私が移住したときには、インターチェンジすらなかったのである。環境保護に熱心な住民が、インターチェンジの建設に反対したからである。しかも、流山市内の高速はほとんど地下になっている。ところが、インターチェンジができただけではなく、巨大配送センターができたおかげで、圧倒的にトラックが増え、いつも渋滞が起きるようになった。住みやすかった流山は、いまや以前からの住民にとっては、かなり住みにくい地域になってしまったのである。
 スッキリは、本当にきちんと取材した結果として、番組を構成したのだろうか。それとも、現在もどんどん建設されるているマンション業者のバックで、宣伝的な内容を許容したのだろうか。本当に現実を知らせたかったのならば、眉をひそめている住民もいるのだから、その声を、ほんのわずかでも登場させてほしかったと思う。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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