ウクライナは人の住めない地域になるのか

 3月8日の配信のなかで、ふたつが、ウクライナを人か住めない状況にしてしまうことを、プーチンが意図しているのではないかという見解を述べている。
 ひとつは高橋洋一氏であり、「狂人プーチンの原発攻撃は恐ろしい未来を迎える危険が」と題されている。
 もちろん、高橋氏は、そういうことは起きないことを強く望むという断りをいれているが、簡潔にまとめると、プーチンはウクライナの原発の施設を抑えようとしている。表向きの理由は、ウクライナが核開発をしているというデッチあげをして、ウクライナ非難とロシアの侵攻の正当化だが、プーチンの最大の目標は、ウクライナの非武装中立だから、それを文字通り実現しようということだ。もちろん、ロシアに従順な傀儡政権ができればそれに越したことはないのだろうが、傀儡政権が望めない場合には、特にウクライナ中部にある原発の管理を放置してしまう。そうすると、2,3日内にメルトダウン、そして、チェルノブイリで起きたような爆発が起きる。そうすると、ウクライナは人が住めない地域となり、非武装中立が実現するというのだ。そして、高橋氏のジョージア(旧グルジア)人の友人に、その話をしたところ、プーチンならやりかねないと、同意されたというのである。

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ロシアは日本を攻めるのか ウクライナ-ロシア関係と日本

   ウクライナ情勢の進展とともに、日本での防衛問題について、反射的に、増強しなければならないとの主張がネットでは増えている。しかし、それらの意見の状況認識は、極めてお粗末であるといわざるをえない。ウクライナにロシアが侵攻したのだから、日本にだって攻めてくる、だから、それに対応するために軍備を増強すべきだというわけだ。ちなみに日本は、核はもっていないが、軍事力としては、国際的には上位にあるとされており(実戦をしたことがないので、本当の実力はわからないが、日本人の軍隊だから、敵に怖じ気づいて戦意喪失などということは、ないと信じる。)、しかも、アメリカとの軍事協力があるのだから、ロシアがそんなに簡単に侵攻してくるとは考えられない。本当にそういう事態が生じたとしたら、日本の政府が余程挑発的なことをしてしまうか、あるいは相手の挑発に乗ってしまうという失策によるものだろう。実際に、太平洋戦争に日本が突入したのは、アメリカの挑発的政策に引き込まれてしまった側面がある。日本の当時の政治家たちが、本当に冷静に考えて行動していれば、アメリカの挑発にひっかかることを、なんとしても回避したに違いない。

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ウクライナ考 義勇兵・ロシア正教

 現時点でまだ混沌としている。いくつかの議論が起きていることについて、考えてみたい。
 第一に、ゼレンスキー大統領が、国際義勇兵を組織し、各国に義勇兵の派遣を要請したことである。日本でも、報道によると、70名ほどの応募があり、大半は退役自衛隊員だという。今のところ、政府は派遣に消極的であり、ネットでの議論でも、そうした行為は国内法に違反するという反対論や、困っているウクライナを助けるべきだという賛成論がある。政府が最も心配しているのは、政府として、義勇兵を派遣することを承認すれば、ロシアに宣戦布告したと受け取られかねないということのようだ。

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プーチン体制は継続できるのか

 ロシアのウクライナ侵攻が、長引けば、プーチン体制の危機となることは、十分に予想される。まず最初の目安は、侵攻後1週間だろう。2月24日に侵攻が開始されたから、3月3日に、キエフを支配下におき、ウクライナが降伏的な交渉に応じるようになっていれば、侵攻は成功したといえるかも知れない。しかし、プーチンにとっては残念なことに、かなりの予想が外れ、厳しい状態になる可能性が強い。
 
 端的にいって、かなり早い時期に、ロシア国内での反プーチン勢力が強くなり、プーチン体制は崩壊するのではないだろうか、と期待をもって予想しておきたい。
 ロシアのプーチン体制は磐石で、しかも、強権的で敵を打ちのめしてきたから、そんな簡単に、体制など崩れないと考える人も多いかも知れない。しかし、30年前に、かくも磐石だと思われていたソビエトが、体制ごと転覆したのであり、それは市民の運動が大きな力を発揮したのである。民衆の運動で、あの共産党体制が崩壊するということは、一部の専門家はさておき、一般的にはまったく予想されていなかった。

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9条廃止論が過熱してきたが

 プーチンのウクライナ侵攻後、にわかに9条廃止論が再燃している。議論は、これまでと変わりはない。しかし、逆に、ウクライナ侵攻を受けて、9条は維持すべきだという認識が、私は強くなっている。
 プーチンのような指導者が、日本に攻めてきたら、9条で対抗できるのか、と廃止論はいうのだが。例えば、産経の記事だ。
 
 「自民党の細野豪志元環境相も「論ずべきは、憲法9条があれば日本はウクライナのように他国から攻められることはないのかということ。残念ながら答えはノーだ」と発信。」
https://www.sankei.com/article/20220225-VBJ5AZA6UFPLVALR6WQEO7F2UU/?outputType=amp
 
 「日本共産党が、あわてて9条擁護をしたために、それに反応した言葉」ということらしい。共産党の主張は、どのようなものか、詳しくは知らないが、少なくとも細野氏は、勘違いしている。

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ウクライナ情勢が音楽にも影響

 ウクライナへのロシアの侵攻は、強く非難されるべきものだが、それが音楽の分野にまで及んでいることについては、疑問と言わざるをえない。
 https://m-festival.biz/28702「ミラノ市長がスカラ座にゲルギエフの解任を要求、ロシアのウクライナ進行で」と題する記事によると、ゲルギエフが、ウクライナ侵攻を否定する声明をださない限り、スカラ座で予定されているチャイコフスキー「スペードの女王」の新演出上演の指揮を解任するように、要求したというわけだ。既に、ウィーン・フィルのニューヨーク・カーネギーホールでの公演は、ホールとオーケストラによって、既に降板が決められているという。
 これがゲルギエフだけのことなのか、ロシア人芸術家に対して広く行われる「拒否」なのかは、この記事だけではわからないが、率直にいって、こうしたやり方は疑問だ。思い出すのは、エルシステマで有名な、ドゥダメルとシモンボリバル・オーケストラが、毎年行っているベネズエラ大統領を招いての演奏会を、ボイコットするように、マドゥロー大統領を批判する政治勢力が要求し、激しいデモなどをしたことだ。当時の大統領はマドゥローで、チャベスの後継者だった。チャベス以降社会主義政策をとって、反米だったから、親米勢力が、反政府運動をしていたという背景がある。しかし、エルシステマは、1970年代後半から始まり、チャベス大統領の以前、つまり、親米で新自由主義的な政府が育て、それを更に発展させたのがチャベスだった。しかも、エルシステマは莫大な国家予算に支えられていたから、歴代大統領への感謝演奏会はずっと以前から行われており、マドゥローだからやったわけではない。にもかかわらず、親米勢力は、マドゥローは独裁者だからという理由で、ドゥダメルに対して、指揮を拒否せよと迫った。これは、いかにも不合理な要求であり、ドゥダメルは音楽を政治利用していると非難していた彼らのほうが、ずっと音楽を政治利用していたというべきなのだ。

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ウクライナ 今後の進展

 前回、ロシアが被ってきた被侵略の歴史を理解しておく必要があることを書いたが、別の歴史の理解も必要である。それは、戦後、大国が小国に侵攻して、勢力下におこうとして成功した事例は、ほとんどないということだ。代表的には、アメリカのベトナム、アフガニスタン、イラク、ソ連のアフガニスタンなどが代表的な失敗事例といえる。今回の当事者がロシアである点でも、ソ連のアフガニスタン侵攻を思い出しておく必要がある。
 アフガニスタンで、社会主義政権が成立したが、そのうち内部分裂が起こり、大統領タラキと副のアミンとの対立が激化、ソ連に忠実だったタラキが暗殺され、ソ連が軍事侵攻し、アミンを殺害、その後泥沼化し、アルカイダなどのテロリストが勃興、そして、タリバン政権となる。ソ連は敗北し、そのままソ連崩壊へと突き進むことになった。アフガニスタン侵攻については、ソ連中枢内部でも反対論も強く、激論が交わされたようだ。タラキは、強くソ連軍の出撃を要請していたから、殺害されていたとはいえ、アフガニスタン大統領の要請に応えて侵攻したという「形」をとっている。

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ウクライナ侵攻は防げなかったのか

 ついにロシアがウクライナに全面的な侵略を始めた。ロシアに非があることは当然だが、しかし、ウクライナ、あるいはEU、アメリカがロシアによる侵攻を防げなかったかといえば、可能性はあったというべきだ。ロシアを擁護するつもりはないが、ロシア国家としての感情を、とりあえず共感しないにせよ、理解しておく必要はある。そうした理解を基本に対策をとれば、違う結果になったといえるのではないか。
 何よりも理解しておく必要があるのは、ロシアは、他国を侵略した歴史よりは、大々的に侵略された歴史が圧倒的に多いということだ。1812年のナポレオン戦争から始まって、1914年の第一次大戦、そして、その後のロシア革命後の欧米各国(日本も含む)の干渉、そして、第二次大戦のヒトラーによる侵攻である。何度もほとんど国の心臓部まで侵攻され、多大な犠牲者が生じたことは、まぎれもない事実なのである。だから、自国が攻められることに、強い懸念をもっているということだ。もちろん、そのことと、周辺の小国に対して行った侵攻・圧迫などが正当化されるわけではないことも、合わせて認識しておく必要がある。

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金沢大学医学部のトラブルとその報道への疑問

 読売新聞2022年2月23日に「准教授、連絡メールを「迷惑」扱い・緊急性ないのに警察通報…出勤停止3か月」と題する記事が出た。参考までに短いので全文を引用しておく。https://www.yomiuri.co.jp/national/20220223-OYT1T50079/
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 金沢大学は22日、同大の医薬保健研究域医学系の50歳代の男性准教授を出勤停止3か月の懲戒処分にしたと発表した。処分は14日付。
 発表によると、准教授は山崎光悦学長からの出頭命令を拒否し、連絡のメールを迷惑メール扱いとして開封しないなど業務放棄を行った。また、数年間にわたって同大職員に強圧的な言動を取り、緊急性がないのに警察に通報して職場秩序を乱した。

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ロシア-ドネツク-ウクライナとアメリカ-台湾-中国関係の類似性

 ロシアのプーチンが、ウクライナ東部のふたつの自治区、ドネツク、ルガンスク共和国を、独立国家として承認して、一気に緊張が高まっている。承認した地域は、それぞれの州全体ではなく、ロシア人が実行支配している半分程度の区域のようだが、それぞれの地域が「独立宣言」をして、その独立承認をロシアに求め、ロシアが承認したという「形式」をとっている。クリミアのときにも、住民投票によって、ロシアへの帰属を住民が望み、ロシアがそれを承認したというのと、多少似ているが、今回は住民投票まではしていないと思われる。おそらく、EUもアメリカも、戦闘行為は望まず、経済制裁を続けるだろうが、何かの暴発で戦争状態に突入しないとも限らない。
 欧米諸国は、当然、プーチンのドネツク、ルガンスクの承認は、国際法違反であり、内政干渉であるという立場だが、プーチンからすると、独立宣言をした国を承認するかどうかは、国家としての自立的な判断によるものだということになるだろう。
 これを中国と台湾の関係に置き換えるとどうなるだろうか。

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