プーチンの演説 戦争という選択しかなかったのか1

 プーチンの注目された演説は、大きな失望を与えたようだ。少なくとも西側には。もともと、ロシア国内向けと考えれば、当然なのかも知れないが、西側の期待を裏切ったというのは、皮肉だが。
 プーチンの演説の要点は、アメリカとNATOが、ロシアの要求を受け入れず、安全を脅かしたので、先手を打たざるをえなかったのだ、ということにつきる。ロシアは悪くない、悪いのはアメリカとNATOだというわけだ。更に、軍事作戦の目的は、ロシアを脅かしているナチスから、同胞を解放することであるというのが、積極的な目的だそうだ。
 それは、日本が太平洋戦争に突入していった論理とまったく同じである。アメリカが、日本にハル・ノートを突きつけ、さらに石油の禁輸などの経済制裁を強化したので、日本は、アメリカに戦争せざるをえなかったのだ。そして、それに対して、ABCD包囲網などを敷いてきた。そういう論理がひとつと、日本の戦争目的は、アジアを帝国主義植民地支配から解放することだったという論理があった。これは、プーチンのいう、ナチスの支配から解放するというのと重なる。

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ヒトはいつから人間になるのか 中絶議論との関連で

 昨日、「いつから人間になるのか」というテーマを別に考察すると書いたので、早速考えてみたい。
 もちろん、この問いの前に、そもそも人間とは何かという重大なテーマがあるわけだが、少なくとも、私には、ひとつの答はだすことができない。というより、なんらかの専門領域をもっている者にとっては、その領域ごとに、人間の定義が異なるように思われる。そして、領域による定義が定まれば、おのずと、いつから人間なのかを規定できる。そこで、どうしても専門外に触れることがないが、その点から整理してみよう。
 
 人間の定義は、多くが哲学分野でなされる。代表的なものとして、山岡政紀氏は、以下のような例をあげている。

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アメリカで中絶否定を最高裁が判断か

 アメリカで争われている中絶の是非に関して、連邦最高裁での判決の草稿が漏れたことで、大きな騒動になっている。アメリカでは、プロ-ライフ・プロ-チョイスという言葉があるように、中絶を認めるか認めないかは、大統領選挙の大きな争点のひとつになるほど、重大なテーマになっている。
 アメリカでは1973年に、中絶を合法とする最高裁判決がでていたが、それ以来も中絶反対派は、中絶を実施している医師を殺害するなど、かなり過激な反対運動もしてきた。しかし、先進国で、中絶が大きな社会・政治問題になる国は、ほとんどない。障害者基本条約が国連で締結されたときに、イギリスで大きな問題になったくらいではないだろうか。イギリスでは、胎児に障害がある場合には、出産直前までの中絶を認める法があったが、さすがに、障害者差別ではないかという議論が起こったわけだ。しかし、おそらくその法は廃止されていない。
 アメリカでの議論が、中絶賛成は女性の権利を基礎に考えているのに対して、反対派はほぼ宗教的根拠によるものなので、議論そのものがかみ合わないものになっていて、結局、まったく異なる価値のどちらをとるかという争いになる。そして、人間観の領域の争いなので、対話によって見解が近づいていくということが考えられない。

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すっかり変質した筑付?

 筑波大学付属高校(筑付)で、SNSが禁止されたと、ネット上で書かれている。悠仁親王関連の情報が、SNSを通じて拡散しないようにということらしい。実際に、それでもあえてツイッターに書かれた文章が、削除されたという。現在ではネット上での情報だけのようなので、真偽のほどはわからないとしても、その内週刊誌が取り上げるようになるに違いない。本当だとしたら、そこまでやるかと驚かざるをえない。また、筑付生や親がだまっているとも思えない。理由は、当然、悠仁親王に対する否定的な情報が、国民に拡散しないようにと、紀子妃が圧力をかけたということになっている。親王に関しては、作文コンクールの件は、弁護のしようがないことだろう。当人だけではなく、宮内庁、両親、そしてコンクール主催者すべてが、社会的な規範、道徳を蹂躙したことを意味している。また、予想されたことではあるが、授業内容がまったく理解できなくて、頭を机に伏せた姿勢をとっていた親王に、教師が注意をすると、汚い言葉で教師にくってかかったという情報も出ている。

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ヒトラーはユダヤ人?

 ロシアのラブロフ外相が、「ヒトラーにはユダヤ人の血が入っている」とインタビューで答えて、物議を醸している。当然イスラエルは猛反発をしている。ラブロフ外相の発言は、ロシアがウクライナをナチに抑圧されていると批判していることに対して、ゼレンスキーはユダヤ人だからナチのはずがないという反論があり、その反論は間違っていると言いたいわけだ。
 いつかでるのではないかという話題が、やはり出てきたかという感じだ。ヒトラーにはユダヤ人の血が混じっているというのは、何人かの研究者が主張していることである。退職して大学に書物をおいてきてしまったので、具体的には確認できないのだが、ヒトラーが、国民のユダヤ人の親族関係を調査させたところ、ヒトラーは4分の1のユダヤ人の可能性があることがわかり、ヒトラーはその事実の露顕を恐れて、調査した人間を殺害したという内容だったと思う。

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ウクライナ戦争後の構造は?

 最近のウクライナ情勢をみていると、どうしても思い出してしまう風刺画がある。小学校や中学校の教科書に載っていたので、多くの人が覚えていると思うが、日英同盟を結び、ロシアとの戦争に向かっていく日本を描いた絵だ。恐ろしいロシアに、イギリスとアメリカが日本をけしかけている図である。
 
 
 私には、日本をウクライナに置き換えれば、そっくり現在の図式になると思う。もちろん、日露戦争は、純然たる帝国主義戦争であったが、現在行われている戦争は、ロシアがウクライナに侵略しているものだ。そして、日露戦争は、日本でもロシアでもない地域で闘われたが、現在の戦場はウクライナという当事国の一方である。こうした大きな違いはあるが、それでも、侵略意志をもったロシア、それをやっつけようと思っていて、実力はあるが直接闘う意志はないイギリスとアメリカ、そして、闘う意志はあるが、単独では無理だと思っている日本とウクライナという図式は、まったく相似関係にあるように映る。

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あらためてプーチンという人物を考えてみる

 プーチンという人物をどのように評価するかは、その人の価値観なり人間観の反映であるかも知れない。なにしろ、多面的な人間なので、どの面に惹かれるかによって、評価する人物の人間観が表れるのではないだろうか。オリバー・ストーンは、プーチンと何度も面談して、著作とドキュメント番組を制作したが、最終的にプーチンを肯定しているかどうかは別として、かなり優秀で思考力のある人物であると見ている。ストーンと話すプーチンは、確かに頭脳明晰で、自信をもっている。同じアメリカ人たちが制作した『プーチン 戦争への道』というドキュメントは、まさしくプーチンを暴君として扱っている。これは4月24日にNHKBSで放映されたもので、KGBの要員だったドレスデン時代から、ウクライナ侵攻までのプーチンの歩みをふり返りつつ、様々な人がプーチンについて語った内容である。プーチンの歩みそのものは十分に知られているが、彼を知る人のプーチン評や、いくつの場面の映像は非常に興味深かった。『プーチン 戦争への道』によって、少しプーチンの足跡をみておこう。

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ウクライナ侵攻問題でのコメンテーター 2

 前回は、ロシアのウクライナ侵攻の目的と、ロシア人の被害者感情などについて扱われていたが、次に制裁やロシア人による虐殺について扱われる。
 まず上松氏が、「 ロシアへの制裁にかかわる国は、国連の一部だ」と提起すると、佐藤氏が、「経済制裁をしていない国が多いのは事実だが、欧米はほとんどやっている。」と述べて、欧米がやっていれば、経済制裁していることになるということで済ましているような気がする。しかし、ロシアへの経済制裁は、ひとつは、ロシアの輸出等を制限して、ロシアに戦争するための費用を与えないようにする、さらに、ロシアへの高度な技術をもつ製品の輸出を制限して、兵器の再生産を防ぎ、またロシア経済の発展を阻害することという、ふたつの目的があるが、後者は欧米が経済制裁をすれば、目的がある程度達成できるが(といっても、中国が輸出すれば、かなり穴埋め可能)、前者は、途上国がロシアのエネルギー、食料を買いつければ、ロシアの収入は確保されてしまう。従って、欧米が制裁していれば、目的達成に問題ないかのような発言は正しくないし、途上国に対して、どのように経済制裁に参加させるかの議論がなければ、やはり、制裁は目的を達成できなくなる。
 さらに続けて、佐藤氏は、大使は論理のすりかえをしていると批判する。「国連憲章2条の武力の行使をしているのは、ロシアである。自分が国連批判をしているのに、西側と我々という区別をするのはまちがい。ジョージアや南オセチアと同じ。嘘をつくと、嘘を隠せなくなる。我々は現実をみている」と一刀両断する。

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ウクライナ侵攻についてのコメンテーターへの不満1

 ウクライナ侵攻は連日、各局でさかんに放映されているが、コメンテーターの解説がすっきりしない点が散見される。少なくとも、私のような素人から見ても、不十分であったり、論点がずれた解説、そして、肝心のことについて口を閉ざすような場面がある。極めて興味深い番組だと思った、日本テレビの「深層NEWS 日テレ」(4月22日放送)を素材に考えてみよう。この番組が、非常に興味深かったのは、    駐日ロシア大使のガルージン氏へのインタビューがあり、それに関して、解説者がコメントする形をとっていたことだ。
 解説者は、佐藤正久(自民党 外交部会長)、畔蒜泰助(笹川平和財団 主任研究員)、飯塚恵子(読売新聞編集委員)の3名で、キャスターは、右松健太(日本テレビ)という構成だった。なおガルージン氏はすべて日本語で応じていた。
 
 最初に、上松氏が、ガルージン大使に、ウクライナ侵攻の目的は何かと質問している。

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ロシア擁護のネット書き込み

 ウクライナ戦争は、情報戦という側面が強く出ている。そして、情報戦は、日本のネットでの書き込みにも現れている。ヤフコメには、かなり不合理な書き込みが見られるからだ。ただし、この文章を書くために、再度ヤフコメをチェックしてみると、かなりの書き込みが消されているような気がした。よりたくさんの新たな書き込みが増えたので、うもれてしまった可能性もあるが、多少、記憶によって、書く部分があることをお断りしておきたい。
 現在は、ウクライナ支持、プーチン弾劾という色調が、日本のメディアとネットを支配しているが、それに挑戦する、疑問を呈する書き込みは、いくつかのパターンがある。
 
・ゼレンスキーにもかなり問題があり、例えば、ロシアを挑発すような政策をとっていた。プーチンが話し合おうと提案したのにそれを蹴ったために、プーチンは侵攻せざるをえなくなった。未成年、高齢者以外の男性は国外に出てはいけないという政策はおかしい。
・人間を楯にしているのは、ゼレンスキーである。
・避難しようとしているウクライナ人を銃で撃っているのは、ウクライナ兵であって、ロシア兵ではない。ロシア兵には、ウクライナの民間人を殺害するメリットがない。

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