プロの音楽家を育成しない音大の行方

 上野学園大学の学生募集停止から、理事長がバッハの自筆楽譜を勝手に売ってしまったというニュースがあり、大学の衰退についての記事をいろいろと読んでいたら、「日本人は「音楽大学」凋落の深刻さをわかってない 弱まる経済を補完する文化基盤の構築をどうする」という記事にぶつかった。
 筆者は、名古屋芸術大学教授の大内孝夫氏だ。銀行員から芸術大学の教師になったということで、音楽が専門とは思われないが、音楽大学の凋落について、分析をしている。上の文章だけではなく、スポーツとの比較などをした文章もある。
 ただ、大内氏の見方とは、私は多少違うと感じた。大内氏は、音楽大学(芸術系)が衰退することは、経済全体にとってマイナスであるという視点から、音大の凋落に継承をならしており、また、高校までの音楽教育の衰退とも関連しているとしている。

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教育実習のトラブル

 「「教育実習の女子学生に教諭「俺ならクビ切る」「帰れ」と大声で叱責…涙ながらに会見」」(2023.3.8)
と題する読売新聞の記事がでた。URLをコピーしても、それが反映されないので、記事の主要部分を転載しておく。
 
読売新聞
 県教育委員会によると、21年10月11日~11月5日、保健体育の男性教諭が「帰れ」「俺ならクビを切る」「自己評価が高すぎる」などと大声で叱責(しっせき)したという。女子学生は発熱などに悩まされるようになり、実習後、心療内科に2週間通院した。
 家族からの訴えを受け、22年1月から男性教諭らに聞き取りを始め「一部言動で不適切な指導が確認された」として、ハラスメント行為と判断。聞き取りに対し男性教諭は「大声で厳しく言ったことはあるが、内容については覚えていない」と話したといい、同年3月末、自己都合で退職した。
 女子学生は「今でも教育実習のことを思い出す」と涙ながらに語った。学校側などには実習中の成績の再評価などを求めているという。県教委の長岡幹泰教育長は「教員の夢を諦めざるを得ない状況に追い込んでしまい大変残念に思う。今後は教育実習の適切な実施とハラスメントの再発防止に努める」とコメントした。(以上)
 
 かつて教育実習担当教員であったために、いろいろなことがあり、考えてみたいと思った。
 教育実習は、いろいろな課題があり、トラブルも起きやすい。また、不満がかなりあるのに、表面化しない場合もある。

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東京外大入試で数学必修にしたら応募者激減

 東京外国語大学が、入試科目として数学を必修にいれたら、案の定受験者数が激減したという。
「東京外大の入試「数学2科目」必須化という大英断!前期の志願者数は前年比74%に減少のインパクト
 前年比74%というのは、私は意外に多かったように思った。もっと減るのではないかと。早稲田の政経学部でも同様のことが起きたが、実は、私の所属していた大学でも、過去にそうしたことがあった。確かに大学での勉学に、数学が必要な領域だったので、受験科目として数学を必修にしたら、74%どころか、半減に近かったように思う。その学部は、新設間もない時期で、おそらく教員たちは学生指導に意欲的で、数学が必要であることは、教員全体のコンセンサスだったに違いない。しかし、他学部の教員は大丈夫なのか、絶対に受験生が相当減るはずだという危惧が支配した。案の定の結果だったから、すぐに数学必修は撤回されてしまった。理事会からの強い要望もあったようだ。私学にとっては、受験生と入学者の確保は、絶対的存立条件だから、いかに適切な方針でも、受験生に敬遠されることが確実なことは、なかなか実施できない。大きなジレンマだ。ja

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科学技術立国と博士課程問題

 科学技術立国としての日本の地位が低下していることが、しきりに言われるようになっている。あちこちで記事がでるが、本日(5日)に「「科学技術立国」生き残れるか テコ入れ急務の博士活用政策」と題する、かなり長文の論説がでた。
全体として、博士課程の充実と、博士たちの処遇の改善が、必要であるとするもので、現在の政策では、どんどん日本の地位が低下し続けると警鐘をならしている。
 全体としての主張に異論はないが、しかし、多少粗雑で、領域を区別しない議論には、違和感を感じてしまう。博士といっても、分野によって、その重みが違うし、また、取得する大学院によっても、実はかなりのレベルの差がある。それに、日本社会では、博士号をもっていることが就職の条件になっているところは、極めて少なく、理系の大学くらいではないだろうか。大学といっても、文系の場合、博士号取得を条件にしているところは、極めて少ないと思われる。実際に、文系の場合だが、博士号をもっていない優秀な研究者はたくさんいるし、博士号をもっていても、あまり高い能力を感じない研究者もいる。

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研究者になりたい学生への対応 神戸大学の処分から

 神戸大学のハラスメントによる懲戒処分の記事が複数あった。しかし、内容が多少異なり、かつ、複数の教師が対象になっているので、正確な事実関係がわからないが、不正確でも、そういうことが、もしあったのなら、という仮定でも十分に考える必要がある。
 
 まず、「「神戸大准教授、複数の学生に「お前みたいな成績悪いやつが」…別の准教授は職務放棄発言」」という読売新聞の記事だ。
 この記事では、ゼミに所属していた学生に、「私の能力では博士課程修了まで指導はできない」といって、学生が志望の変更を余儀なくされたとし、また、この学生に、「他の学生の成績を見せた」としている。この教師は4カ月の停職処分になったという。しかし、別の記事では、事実関係が異なって書かれている。

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チャットGPTを使ってみた 学校で利用できるか

 話題になっているチャットGPTが、羽鳥モーニングショーで取り上げられていて、なかなか興味深かったので、考えてみた。解説者によると、産業革命以来の大きな社会変革がもたらされるという。AIは確かにそのように言われていたが、いよいよその実感を伴う変動が置きつつあるということか。実際の感覚を掴むために、早速使ってみた。
 教育を専門にしてきた者としては、学校現場への影響がまず考えざるをえない。
 学校で生徒が利用するとしたら、調べ物をすることと、レポートを書くこと、更に、作文、特に英作文には活用できそうだが、問題は「調べる」「レポートを書くこと」についてだろう。
 「調べる」については、かなり精度が低いように感じた。以下は、桶狭間の闘いについて質問してみた回答である。最初の回答が明らかに間違っているので、その訂正を求めたのが後半である。

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五十嵐顕考察5  マルクス・エンゲルスの教育論1

 五十嵐顕氏の研究者としての業績の柱をまとめると
・マルクス主義教育論
・教育財政論
・民主教育論
・戦争体験と戦争反省
 今回は第一のマルクス主義教育論の理解と継承を考えてみたい。しかし、直接マルクスの教育論を分析した論文は比較的少ない。著書の『マルクス主義の教育思想』でも、マルクスとエンゲルスの教育思想を分析した文章は「序文」だけで、本文はレーニン、ルナチャルスキー、クララ・ツェトキンの思想とソビエトとドイツ共産党が扱われている。本書の出版が1977年であり、収録の論文はすべて1960年代と70年代のものだから、マルクス・エンゲルス、ツェトキン、レーニン、ルナチャルスキー、クルプスカヤ等が、同一の土壌の思想家として扱われていることは、時代的な背景があったといえる。しかし、今日再度こうした議論を検討する場合には、根本的に異なる「土壌」がある。つまり、ソ連を初めとする社会主義国が、ほぼすべて崩壊しているからである。ソ連崩壊後、社会主義者を名乗っていた人たちの多くが、引き続き社会主義思想を発展させる努力を継続していたようには思えない。そして、上記思想家は、発展プロセスにある一連の思想家として理解されていたが、現在では、スターリンほどではないにせよ、レーニンもかつての社会主義者からも批判の対象になっているし、相互の相違も、以前よりずっと強く意識されている。

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ITに反対の教師

 学校現場にIT化の波が押し寄せているが、それに対する批判的記事があった。
「紙の辞書なんてゴミ!」新聞、テレビが報じない教育現場DX化の残念すぎる実態。
【後編】「辞書なんてゴミ」「ババアは老害」定年間近の女教師を悩ませるIT化の怒涛。
 登場する教師は、高校の古典を教えていて、すべてノートは手書き、紙の辞書を活用する、等の伝統的な教育スタイルをとっているだけではなく、そうしない生徒を非難しているように感じられる。生徒全員に iPad が支給されるようになって、いかに混乱が起きているかを告発し、かつ、それを職場で訴えても、若い教師に一蹴されているという記事だ。更に、支給後いじめが頻発し、しかも加害者がほぼ全校生徒となったという告発がなされている。しかし、ある特定の生徒への誹謗文書が、簡単に全校生徒に配布されるのだろうか。もし、そうだとしたら、それは学校のネット運用に問題があるとしか思えない。

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藤井寺市の教科書汚職から考える、日本の教育水準の低下1

 大阪府藤井寺市の教科書選定をめぐる汚職で、市の教育委員2名が辞職することになった。2020年に、実施された選定での汚職で、元市立中の校長か懲役1年6月、執行猶予3年、追徴金6万4000円の有罪判決を受けている。便宜を図った側の大日本図書の取締役らも罰金命令を受けている。
 この事件について、伊東乾氏が、「藤井寺市の教科書選定「贈収賄事件」に透けて見える日本弱体化 教科書利権と「自虐的」数学教科書排除は焦眉の急」と題する文章をあげている。
 教科書採択をめぐる汚職は、明治時代から続いており、そのために国定になったり、検定になったりしているが、法で厳しく罰せられるとしても、特に現在の採択制度では、採択されないと、会社自体が倒産してしまう危険性が高いためもあり、こうした汚職は耐えない。だから、検定や採択をめぐる制度面での改変が必要なのだが、伊東氏が主に論じているのは、更に、教科書の水準が下がっていることの指摘と危機感の表明である。

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東京23区区の大学が、地方就職促進条件にIT関連の増設

 
 政府が、東京都内は一切の大学新設・増設・定員増を認めない方針であったのを変更して、デジタル関係のみ期限付きで認めることになったと報道されている。 
「東京23区内の大学、デジタル系学部の定員増を容認…IT人材育成へ政府方針」
 それには条件がついており、情報系学部・学科の定員増が対象で、一定期間後は元に戻す、地方の就職促進策を組み込むというものだ。
 こうした大学の学部管理は、文科省がかなり強権的に行なっているもので、その評価は単純にはいかない。確かに、大学全入時代になって、入りたい大学・学部は偏りがあるから、人気のない大学は定員まで学生が集まらず、それが長期的に続けば倒産とならざるをえない。人気のない、つまり社会的に要請されていないと見なされる大学は、潰れたほうがよいという考えもありうる。時代の技術革新についていけず、あいかわらず安い労働力でしか対応できない企業は倒産して、技術革新をして力を増したところに吸収されるほうが、全体としての経済力は高まる、だから弱体企業を救うべきではない、という意見は少なくない。

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