チャットGPTを使ってみた 学校で利用できるか

 話題になっているチャットGPTが、羽鳥モーニングショーで取り上げられていて、なかなか興味深かったので、考えてみた。解説者によると、産業革命以来の大きな社会変革がもたらされるという。AIは確かにそのように言われていたが、いよいよその実感を伴う変動が置きつつあるということか。実際の感覚を掴むために、早速使ってみた。
 教育を専門にしてきた者としては、学校現場への影響がまず考えざるをえない。
 学校で生徒が利用するとしたら、調べ物をすることと、レポートを書くこと、更に、作文、特に英作文には活用できそうだが、問題は「調べる」「レポートを書くこと」についてだろう。
 「調べる」については、かなり精度が低いように感じた。以下は、桶狭間の闘いについて質問してみた回答である。最初の回答が明らかに間違っているので、その訂正を求めたのが後半である。

 
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Q  織田信長はなぜ桶狭間の闘いに勝ったのですか?
A 織田信長が桶狭間の戦いで勝利したのは、以下の理由が考えられます。
1. 戦略的優位性:織田信長は、敵である今川義元の本陣に近い位置に布陣し、戦略的な優位性を持っていました。また、信長は山中に陣を敷くことで、騎馬隊を活用した今川軍の攻撃を防ぐことができました。
2. 兵力の差:織田信長は、今川義元よりも兵力が優勢であったとされています。信長は、自らの領国から集めた兵力や、同盟した武将からの援軍を得て、桶狭間に臨みました。
3. 鉄砲の活用:織田信長は、戦場で鉄砲を大量に使用しました。当時の日本では、鉄砲はまだまだ一般的な武器ではありませんでしたが、信長は優れた鉄砲隊を編成し、効果的に使用することで、今川軍に多大な損害を与えました。
4. 同盟関係の活用:織田信長は、今川軍と戦う前に、徳川家康や三好長慶などの武将と同盟関係を築いています。これにより、信長は他の武将からの支援を得ることができ、兵力や戦略的な助言を受けることができました。
これらの要因が組み合わさり、織田信長は桶狭間の戦いに勝利することができました。
 
Q 回答ありがとうございました。でも、この回答は長篠の闘いの説明のような気がします。桶狭間の闘いでは、徳川家康は今川方でしたし、織田軍は今川より少数で、鉄砲もあまりなかったと思います。多少の訂正をお願いします。
A 申し訳ありません。私の回答に誤りがありました。以下が正しい回答です。
桶狭間の戦いで織田信長が勝利した理由は、いくつかの要因が絡み合っているとされています。
1. 織田信長の采配:織田信長は、敵である今川義元の本陣を中心に、円形に布陣しました。これにより、今川軍の兵力を分散させることができ、織田軍が劣勢でも局地的な勝利を挙げることができました。また、信長は、今川軍の兵糧攻めを仕掛けるなど、戦略的な決断を下しました。
2. 矢や鉄砲の使用:織田信長は、戦場で矢や鉄砲を大量に使用しました。矢や鉄砲は、当時の戦闘において効果的な武器であったため、これにより今川軍に多大な損害を与えることができました。
3. 地形の活用:桶狭間の戦いが行われた地形は、湿地帯と荒野が交互に広がっていました。織田信長は、自軍の隊列を湿地帯側に置くことで、敵軍の騎馬隊の攻撃を防ぐことができました。
4. 後方の体制:織田信長は、戦場における戦闘だけでなく、後方の体制も整えていました。例えば、家臣の織田信雄を本陣に残し、敵軍の奇襲に備えました。
これらの要因が重なり合い、織田信長は少数の兵力で今川軍を打ち破ることができました。
 
 訂正されても、間違いだらけだから、チャットGPTを活用して、調べ物をするのは、現在の段階ではかなり問題だろう。これならば、グーグルの検索を適切に使うことのほうが、断然信頼できる。従ってレポートについても同様だが、当然自分の手で書く必要があるのに、チャットGPTで書いてもらったものを提出するということは、可能であり、いくら間違いが多い可能性があるといっても、代筆してもらう学生がでてくるのは避けられない。ただ、これは完全に防ぐ手だてはある。レポートをやめて、すべて教室で書く試験にすればよい。将棋の世界では、AIソフトを使って腕を磨くことは、現在では常識になっているが、しかし、実際の試合では、対戦者と向きあって、実際に将棋をさす形で行なわれる。それと同様であろう。
 
 ただし、間違いを積極的に活かせる教師であれば、これはとてもよい教材となり、確実な知識を獲得する上で、役に立つだろう。
 上記の桶狭間の闘いへの回答にある間違いはたくさんある。
・信長は陣地をしいてはいなかった。移動中の停止はあったとしても。
・信長は、今川に対して、兵力は圧倒的に少なかった。
・同盟した武将からの援軍などはほとんどなかった。
・徳川家康(当時松平元康)は今川方であり、三好は無関係。
 訂正のほうにもたくさんの間違いがある。
・円形の布陣などしなかった。
・弓矢や鉄砲を大量に使用したわけではない。
・今川軍は騎馬隊で攻撃してきたわけではない。
・捨て身の切りこみなので、後方の備えなどはほとんどしていなかった。
・織田信雄は家臣ではなく、息子。この時期戦場になどでていない。
 間違いのオンパレードである。もちろんチャットGPTは、データベースから引き出してきたのだから、別の闘いのデータから引いてきたのであって、間違った記述が、どの闘いの説明として正しいのかを調べることで、かなり正確な知識・理解をえることができる。そういう使い方をしていけば、学習も面白みが増すに違いない。
 信長が鉄砲を他の大名より多く所持したことは事実だが、それはいつごろからなのか、他の大名は鉄砲についてどういう態度をとっていたのか、なぜ信長が圧倒的多数の鉄砲をもてたのか。
 信長と家康の関係はどのように推移したのか。
 当時の騎馬隊はどういう役割をしたのか。
 このように課題が発展していけば、歴史が多少とも興味をもてるようになるかも知れないし、また、正しい「調べ方」も習得させることができるに違いない。
 
 外国語の学習には、かなり役に立つ気がするが、グーグル翻訳のほうが、現在では勝っているように思われる。データが豊富であることと、音声にも対応しているからである。ただ、言葉の使い方への質問などは、グーグル翻訳は機能がないので、チャットGPTのほうが使える機能はあるように感じた。
 他の分野では、大いに活用用途があるところも少なくないように思われる。
 
 さて、学校では、こんなものは間違った知識を生徒に植えつけるのだから、禁止すべきだというような声が聞こえそうだ。しかし、いくら学校で禁止しても、子どもたちは、簡単に使える以上家庭で使い、やがて学校でも使う。だから、教師は、適切で意欲がわく使い方を、積極的に指導することが、もっとも害悪を防ぐことになるのだ。
 
 ここまで書いて、ひょっとして、チャットGPTに対して、間違いを指摘したらどうだろうと思い、やってみた。結果が以下の通りである。
 
Q 織田信長はなぜ桶狭間の闘いに勝利したのですか?
A 織田信長が桶狭間の戦いで勝利した理由は、以下のような要因が挙げられます。
1. 兵力の差:織田信長は、総勢3万人以上の大軍を率いていたのに対し、今川義元は約2万5千人の軍勢であったため、兵力において優位に立っていた。
2. 鉄砲の使用:織田信長は鉄砲を積極的に使用しており、これによって敵軍を翻弄することができた。一方、今川義元は鉄砲をあまり使用しておらず、その戦術はやや古いものであったとされています。
3. 馬上の戦闘技術:織田信長は、騎馬での戦闘技術に優れており、騎馬隊を組織していた。これによって、敵軍を突破するなどの戦術を取ることができた。
4. 将軍の出陣:今川義元は自らも出陣しており、武将としての能力は高いものの、戦場指揮においてはやや迷いが見られたとされています。一方、織田信長は本陣にいて、冷静な判断力で部隊を指揮することができた。
以上のような要因が、織田信長の勝利につながったとされています。
 
Q 織田軍は2000人しかいなかったのではないでしょうか。
A おっしゃる通り、織田信長が桶狭間の戦いで率いた兵力は、一説にはわずか2,000人程度だったとも言われています。ただし、この数字は正確ではなく、諸説あるため、完全な真実とは言い切れません。また、織田軍の兵力については、戦闘当時の記録が乏しく、詳細な数字が確認できないことが一因となっています。ただし、織田信長が桶狭間の戦いで勝利した理由については、先に述べた通りです。
 
Q 桶狭間の闘いのとき、織田信長は、まだ27歳で、鉄砲はあまり所有していなかったのではないでしょうか。
A おっしゃる通り、織田信長が桶狭間の戦いで勝利したときの年齢は27歳であり、当時はまだ若く、知名度も低かったとされています。また、織田軍が鉄砲を多数所有していたという証言は、あまり信憑性が高くなく、鉄砲を多用したという説も疑問視されています。当時の鉄砲は、製造技術が未熟であり、信頼性が低く、扱いにくい武器であったため、数が多ければ必ず勝てるというわけではありませんでした。織田軍が勝利した理由については、兵力の差や戦術の優位性、指揮官の能力などが挙げられます。
 
Q ありがとうございました。よくわかりました。
A どういたしまして。ご質問がお役に立てたようで、私もうれしいです。何か他にも質問があれば、お気軽にお聞きください。お力になれるよう、最善を尽くします。(以上)
 
 不自然な文章もなく、しかも、少なくとも「対応」はとれているし、丁寧な言葉使いもする。しかし、前は3万人と書いてあるから、2千人ではないかと指摘すると、確かにそうです、と素直というか、倫理観がないというか、人間ではないので、仕方ないともいえるが、受け取る側としては不思議な感情がする。チャットGPTと対話するには、そういうことに慣れる必要があるようだ。
 しかし、こちらから指摘すれは、素早く検索するのだろう、訂正してくるので、使いようによっては、学校でもかなり役にたつ気がしてきた。使い方を教師自身が習得しておく必要があるだろうが。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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