男性の主要人物として、2番目に重要なのがアンドレイ公爵である。アンドレイは、トルストイ自身の理性的で勇敢な部分を描いていると言われている。アンドレイは、二度の戦争に参加して、多くの貴族たちとは異なって、実際の戦闘場面に配属されることを望んでいる。トルストイ自身も、セバストポリの戦闘で勇敢に闘ったとされており、当時既にいくつかの小説を発表して、優れた才能を示していたのだが、その小説を読んだニコライ二世が、危険な戦場から離すように命令をしたという逸話が残っている。もちろん、大作家であり、平和のための理論家であったトルストイは、極めて知性の高い人物だった。そういう側面をアンドレイ公爵という人物に託したことになる。
ところが、非常に理性的であるといっても、理解しがたい行動をいくつかとっている。特に妻(リーザ)と婚約者(ナターシャ)に対する態度は、多くの読者は共感できないのではないだろうか。