永山則夫は、私と同世代である。私が大学生だったときに、かれは次々と殺人事件をおこし、そして逮捕された。当時大学紛争が最も盛り上がっていたときで、しかも、それは永山にも大きな影響を与えた。街頭活動で逮捕された東大生の活動家が、永山と同房になり、永山に勉強することの大切さを教え、それがきっかけとなって、永山は猛然と読書をするようになり、自分の人生をふり返ることになる。そして、自分をモデルにした小説を次々と発表し、高い評価をえるようになった。哲学書なども読破していたようだ。印税は被害者への賠償や恵まれない人への基金として拠出されていった。
永山の裁判は、大きな話題となり、しかも、判決が揺れたことで論争にもなった。現在でも「永山規準」なるものが語られる。そういう中、永山を担当していた刑務官木村元彦氏の「実弾50発を盗んで4人を射殺した『死刑囚』はなぜ世界から注目される作家になったのか」「『絶対に殺してはいけない』現場が声を上げた死刑囚・・・その最後の瞬間に待っていたもの」という文章が掲載された。
永山が更生し、贖罪のために小説を書き続けたこと、死刑は執行されないという予想が、サカキバラ事件で急変したこと、死刑判決そのものに疑問があることなどが記されている。ぜひ多くの人に読んでほしい文章だ。