文科省ガオンライン授業多い大学を公表?

 文科省が、オンライン授業の割合が50%以上の大学の名前を公表するという方針だそうだ。ずいぶんとおせっかいなことだ。そもそもコロナ禍で、オンライン授業を勧めたのは、文科省ではないか。それを今度は、体面授業を重視しろというのは、なんともはや、いいかげんな行政だ。オンライン授業と体面授業と明確に区別しない、つまり、両方やっている授業だってけっこうあるのだ。少人数の演習などは、オンラインでもまったく問題なく機能するだろう。通常の体面授業を、カメラをおいてオンラインで流し、大学に来られない学生は、どこかでそのオンライン授業を聴講するという方法もある。就職活動などをしている学生にとっては、ありがたい方法だ。ある大学の教員に聞いたところ、どちらも可としたら、オンラインを希望した学生が圧倒的に多かったというのだ。また、学生にしても、4年生になって、あまり授業をとっていないのなら、定期券を買わずに済む。バイトやりながら、授業のときだけ抜け出すという手段もある。欠席するよりは、ずっといいわけだ。そして、無駄を省くことができる。つまり、オンライン授業は、学生が求めている側面もあるのだ。もちろん、対面授業を求める学生もいる。選択肢が増えることがいいのだ。

 また、オンライン授業には、別の利点がある。複数のキャンパスをもっている大学は多い。キャンパスごとに、全て授業を揃えるよりは、教養科目のような共通する授業は、ひとつの教室でやって、それをオンラインで流す遠隔授業だと、非常に経費節約になる。大学の大教室の授業と、遠隔授業で、授業効果などは、ほとんど変わりないだろう。そして、浮いた人的資源を、少人数教育に回すことができる。
 小中学校でも、オンライン授業は、必要なときには、ずっと続けるべきなのである。例えば、不登校の子どもがいる場合だ。不登校の子どもは、多くの場合、授業を受けるのが嫌なわけではなく、何らかの人間的トラブルで教室に入ることができないのだ。そういう子どもには、無理に登校させるのではなく、教室で行っている授業をビデオカメラで流せば、家でも授業を受けられる。あるいは、授業をビデオにとって、ファイルを送ってもよい。いろいろなやり方がある。オンライン授業と体面授業は、画然と区別されるものではなく、むしろ融合されるべきものなのではないか。
 
 私は大学を退職してしまったので、残念ながらオンライン授業を導入して、いろいろな改革をする機会がないのが残念である。そういってくれる元同僚もいる。以前に書いたことと重複するが、私ならこうするという構想を書いてみたい。もちろん、コロナ禍がおさまって、正常に復帰したという前提である。
 まず授業は、可能な限りすべてをオンラインと対面と両方可能な形にしたい。つまり、オンラインで受講してもよいし、対面で教室に来てもよい。以前も、講義はできるだけ録音をとって、ホームページに掲載して、後から聴くことができるようにしておいた。どのくらい利用されたかはわかならないが、少なくとも欠席した学生にとっては、便利なものだったろう。ただし、これは、リアルタイムではなく、あくまでも復習用であった。リアルタイムで、対面もオンラインも両方可とする形態をハイブリッド型授業ということにしよう。ハイブリッド型のメリットは、大学から遠い学生にとって、通学する時間と費用が節約できること、病気やどうしても出席できない事情がある学生も、授業を受けることができる。そして、オンラインをしておけば、録画が可能なので、復習用に、オンデマンドで活用できることも大きな利点となる。現在は、被写体をおいかけて撮影するカメラがあるから、それを設置しておけば、特に操作をしなくても、授業の撮影することは可能だろう。そして、対面授業をするのだから、それを希望する学生も満足するだろう。
 ハイブリッド型にするかどうかは別として、授業の資料はホームページに掲載しておくことが望ましいだろう。自作の資料については問題ないし、在職中これは確実に実行していたが、ただし、授業で使用するすべての資料を掲載することはできない。テレビを録画した映像や、インターネットからとった映像を授業で見せることがたまにあるが、講義で見せることについては問題ないのだが、それをホームページなどに自由にみられるようにすることは、著作権法違反になるのでできない。インターネット上の映像なら、URLを示しておくことが解決できるが、テレビの録画などはそれができない。リアルタイムで録画した講義を、オンデマンド用にホームページに掲載するときには、そうした映像が写っている場面は削除せざるをえないだろう。こういう点は、今後もっと教育に有益であることは間違いないから、著作権法の検討も必要ではないかと感じている。完全に大学の学生に閉鎖的な仕組みであれば、教育用ということで、著作権法はクリアできるのかも知れないが、あいまいな点ではないだろうか。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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