2020年は、コロナによる全国的な休校措置のために、全国学力調査も実施されなかった。そのことが、学校教育にとっては、思わぬ(というか、当たり前にそうなった)解放感を生んだ。教科研は、改めて全国学力調査の意味を問い直しを始めた。そして、全国学力調査を悉皆調査として行うことを批判し、3年ごとの抽出調査を提言しているのが、本書である。
学力調査は、単に文科省の実施する全国版だけではなく、県や市が行う学力調査があわせて実施されている自治体も多い。しかも、これらのテストは、日常の学習とも、また受験とも関係なく、単に、「調査」という名目で実施されているが、逆に、日々の学習活動を大きく歪めている。過去問で事前に練習したり、あるいは、学力テストのための学習を組んだり、そして、それぞれの調査で順位などがだされるので、教師への管理の手段としても活用されている。子どもたちも、テスト漬けで、おそらくストレスの要因にもなっているだろうし、競争による荒廃が進み、学力の向上に役立っていないのである。そうしたことを、実際の現場の状況を踏まえて、豊富な実例をあげて、説得的に主張していると思う。