メドベージェフは狼少年か

 ロシアのメドベージェフ前大統領が、EUが凍結資産をウクライナへの復興資金として活用するのは、戦争開始の正当な理由になるという発言したそうだ。メドベージェフの発言は、すでに狼少年的な回数になっていて、だれも本気にしないという雰囲気になっているが、ただ、言っていることがナンセンスということではなく、それはそれなりに根拠はあるのだろうが、実現性を疑うということだ。
 かなりの資産を取り上げられるのだから、ロシアとしては、それをさせないために開戦するぞ、と脅すのは、たしかにロシア的正義といえるだろう。しかし、それなら、勝手に侵略したり、民間施設を爆撃して民間人を殺傷したり、そして、子どもたちを連れ去るなどということはどうなのかということになるだろう。
 ただ、EU側にも躊躇するひとたちがいるという。代表はベルギーで、ベルギーがロシアの凍結資産を多数預かっているので、それをウクライナ復興に使ったら、自分たちが主に報復されるという危惧らしい。EUとしての足並み、団結の問題が露呈していることになる。結局EU(西欧部分)は、第二次大戦後、まったく戦争がない状況を謳歌してきたから、ある意味闘う精神が欠如してしまっているのかも知れない。もちろん、平和を維持してきたのは、そうした努力をしてきたからで、非難されることではないのだろう。
 しかし、ロシアのような国家が現われると、それでは済まないことが、降りかかってくる。相手には厳正な法の運用を求めるのに、自分たちはまったく法を無視した暴力を無制限に振るっている。ただ、残念なことは、こうした無法をやめさせるのは、法的論理ではないということだ。ロシアを戦争で打ち負かすことができなければ、結局ロシアの暴虐をやめさせることができないのが、現実だろう。
 ということは、EUは、これまでも、ずっとウクライナ支援に弱腰だったが、このまま弱腰を続けるのか、あるいは、ロシアを敗北させないと、EU自身が危険に曝されるという認識の下に、ウクライナ援助をより効果的なものにしていくのか、がとわれているわけだ。EUは一見ウクライナ支援に熱心であるようにみえるが、最後のところで躊躇する姿勢が露顕する。
 ロシアがトランプ和平案に乗る可能性が報じられているが、それはロシアが弱っている証拠である。もちろん、かなり弱っていたのだが、それをプーチンは認識していなかったが、今やこれまで掲げていた戦争目標は、あまりに幻想的であることを認識せざるをえなくなっているような気がする。こういうときこそ、EUは、ウクライナ支援をより増強すべきなのである。しかし、私は、この和平案でまとまるとは思えないのだが。

 話はかわるが、高市政権は、ウクライナ戦争にたいしてどのようなスタンスなのか、どうもはっきりしない。私のフォローが不充分なのかも知れないが、みているかぎり、なんらの明確な方針をだしているわけでもないし、また、トランプ和平案に対する見解も述べていないように思われる。高市氏はトランプ側につこうとしているから、和平案がどんなにウクライナに不利なものであっても、支持するのだろうか。それは、これまでの高市氏の表明と矛盾するのではないかと思うのだが。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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