統一教会との個人的関係を追求するより大事なこと

 現在、統一教会問題は、自民党を中心とする議員の関わりを明らかにするというところに、焦点のひとつがあるが、これを巡って自民党内部で深刻な対立があるという。「「旧統一教会問題」岸田総理と自民党幹部の間で生じる深刻亀裂」https://news.yahoo.co.jp/articles/a179399c116b0c962798866f0b788d322f92b87d
 公表をしぼるべきとする茂木幹事長と、接点のあった議員は全員公表すべきという岸田首相が、激しく対立し、結局世耕参院幹事長の「議員本人が出席した以上を公表」という提案を、落しどころにしたところ、179名の公表となったというわけらしい。注目すべきなのは、その話合いのなかに、羽生田政調会長がいたことだ。最もずぶずぶだった一人が参加している会議で、まともな話し合いができるのか、ということだ。結局岸田首相の指導力の不十分さが露呈した。
 世論は、もっときちんと調査して、徹底的に膿をだすべきだというのが、大きな方向のようだ。世論調査でも、この記事のコメントでもそれを感じる。
 
 しかし、私は、どうもそれは違うのではないかと感じている。一番大事なことは、反社会的団体であると、自民党も認識しており、統一教会支持者以外の多くが同意している統一教会の反社会性を、反社会的組織ではないようにすることだろう。これまで何度も書いてきたが、その方法はいくつかある。

 暴力団に対して、暴力団だけが行うような犯罪的行為(暴力・ドラッグ・売春・脅迫等々を組織的に行う行為)を徹底的に取り締まり、そうした行為をさせないことで、資金源を絶ち、合法的な活動に押し込めていくというのが、基本になっていると思う。暴力団を、実質的な暴力団とは異なる組織に変えてしまえばよい。合法的な活動をすることで、反社ではなく、社会に受け入れられる組織に自己変革させるわけである。ただし、そのためには、犯罪的行為を徹底的に取り締まり、厳罰を与えねばならない。そうした政策の効果は、上がっていると評価できる。
 
 統一教会に対しても、同じ対応でよいのではないだろうか。しかし、その方法は、暴力団とは異なる。
 統一教会が反社会的であるのは、以下の行為による。
・法外な値段で売りつける。(壺・印鑑等)
・財産すべてを奪うような多額の献金を強制。
・上記を、それをしないと地獄に落ちる、などの脅迫を手段にする。
・献金や売り上げを、外国(韓国)に送金して、日本を搾取の対象とする。
 こうした行為を不可能にすることが重要だ。それに対して、選択的夫婦別姓やLGBTへの理解促進に反対することは、思想信条の自由であって、そのこと自体が違法なわけではないし、非難して止めさせるようなことでもない。しかし、脅迫的な手段を用いて、法外な値段の物の売りつけや献金を行わせるのは、明らかに違法である。そうしたことを、まずは徹底的に取り締まる必要がある。
 だが、統一教会は、マインドコントロールしており、信者は正しいことをしていると信じきって、献金をしている者が多いと考えられる。従って、徹底的に取り締まるといっても、信者か被害感情をもって、訴えない限り、取り締まることはできない。そこが宗教団体の巧妙なところである。こうしたことを防ぐには、やはり、宗教法人に課税、しかも、献金等について、かなり強度な累進課税の税率を適用するべきであろう。そもそも、無教会主義などをみれば、宗教活動にそれほど大きな資金は、本来必要なく、大きな資金は、宗教組織として、政治力を発揮するためであろう。そうした活動は、きちんと税金を支払って行うべきものである。宗教法人全体に課税するのがベストだが、それができないとしても、統一教会に対しては、宗教法人としての認可を取り消すことによって、課税する必要がある。そうして、違法行為への徹底取り締まりと、被害者救済、そして、課税を行うことで、統一教会が反社会的な組織でなくなっていけばよいのだ。課税されるとしても、献金そのものを隠すことは可能だろう。しかし、それは組織としての支出を厳格に調べることによって、かなり明らかになるのではないかろうか。
 
 統一教会との関わりを、あまりに詳細、執拗に追求することは、信教の自由に触れると、私は思うので、組織としての統一教会の反社会性を取り除くことに、向かうべきである。現在、宗教法人として認可されているのだから、信者になることは、禁止することはできない。いかに政治家でも、禁止されない。従って、統一教会との詳細な関係を調査するよりは、それぞれの関わりのなかで、統一教会が行っていた反社会的な行為を明らかにして、その点を解消するように仕向けたほうが、自民党自体も改善される。もし、生活破壊的な献金や法外な値段での売りつけを「好ましい活動」と考える自民党員がいたのならば、それは、党員として認められないのではないか。
 ただし、日本が韓国へ奉仕すべき国家であるという、統一教会の教義が正しいと認める議員がいるとしたら、それは、党としての政治的立場の問題として処理されるべきだろう。そして、そのことは、国民に対して明確に示すべきである。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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