レーシングカートで死亡事故

 北海道の自動車販売の催しの一環として行われたレーシングカートで、子どもによる死亡事故が起きた。子どもが遊園地などで乗ることができるゴーカートは、30キロ以下の時速で、比較的安全だが、ここで使用されていたのは、レーシングカートと呼ばれるもので、時速40キロまで出るそうだ。時速40キロは、通常の自動車が市街地を走る速度であって、決して遅くはないし、不注意の運転をすれば、免許をもった大人でも事故が起きやすい速度だ。それを、こうしたカートにせよ、初めて乗る子どもにとって、決して危険がないわけではない。
 事故が起きた場所は、陸上のトラック(もちろんより狭い)のような場所を走るもので、直線を走ったあと、右に曲がって次の角で降りるような設計になっている。しかし、運転していた子どもは、直線コースで、曲がるための減速をしなかったために、そのまま突っ込み、そこで見学していた人たちに怪我をさせ、2歳の子どもが死亡したというのだ。(記事は多数あるがそのひとつ)

 
 詳しいことはわからないが、記事だけで見ても、安全配慮が不十分だったことが感じられる。また、観客の安全意識も、私には疑問なところがある。
 
 以下が会場の図である。https://news.yahoo.co.jp/pickup/6439239
 
 この図をみて、私が最初に思ったのは、見物客とゴールの位置が危ないということだ。この事故では、カートを運転している子どもが、最後の直線コースを走って、ゴールと書かれた部分に減速して入り、そこで終了ということのようだ。しかし、減速できないまま、正面に突っ込んでしまったために、画面で一番下のほうにいた観客が被害を受けたということだろう。個人的に、私が見物客だったら、そこには絶対にいない。見物客席の画面の一番上(つまりトラックに向かって左端)にいる。画面下の位置は、こうした事故が起きたときに、逃げようがないからだ。
 私は普段から、そうしたことには、異常と思われるほど注意をしている。電車のホームでは絶対に並ばない。列からはずれて、ホームの後か、両面に電車がくるホームでは、真ん中にいて、電車がきたら、列の最後について乗車する。信号のある横断歩道を渡るときでも、車道からはかなり離れたところに立って待ち、信号が青になっても、赤で止まるべき車が止まるか、最低限減速してくることを確認してから渡る。つまり、世の中には、ルールを守らなかったり、精神的に問題を抱えている人がいる可能性があるからだ。だから、この会場にいけば、事故の可能性としては、もっともありうるものだったのだから、赤ん坊を抱えた親が、あの位置で見物していたことは、私の感覚では注意不足だった。今後の教訓とすべきことだと思う。そして、主催者の判断も間違っている。見物客席を設けるとしたら、ゴールと書いてある上にするべきだ。その一角は、スピードを落とさざるをえないから、事故の可能性が非常に低い。逆に事故が最も起きやすく、その場合被害が生じやすい場所に見物客の席を設置していたのは、大きなミスである。
 更にまったく初めての子どもに対して、時速40キロが可能な車を、時間をかけた教習なしに乗せることは、やはり危険なのではなかろうか。この事故は、起きるべくして起きたともいえる。
 
 これは、限られた場所で起きた事故だが、道路上では似たような危険に満ちている。子どもが運転する自転車に関わる点だ。私は、歩行者として、また車の運転者として、両方の生命に関わるような事故に合いそうになったことがある。寸でのところで回避できたのだが。
 歩行者としては、多少鋭角に曲がっていて、ブロック塀のために見通しが悪い歩道があり、交差点に隣接していた。横断歩道を渡って、鋭角な角を左折しようとしたら、左から猛烈なスピードで走ってくる自転車に危うくぶつかりかけたのだ。鋭角な角だったので、自転車が来ることはまったくわからなかった。もろにぶつかったら、放り出される感じで、交差点に投げ出された可能性がある。それは自転車のほうも同様だ。交差点の信号が赤に変わりそうだったので、スピードをだしていたのだろう。
 運転手としては、自宅の近所の事故の多い場所だったところで起きた危うい経験がある。
 中央ラインがない裏通りのようなところで、右から左にかけて急激な下り坂になっている道との交差点があった。事故が多いところだったので、20キロくらいで走っていたところ、交差点に入った途端に、右側から下り坂を猛スピード走ってきた自転車か突入してきたのだ。ぶつかりそうになった寸前で急ブレーキで止めることができたが、10歳くらいの男の子も急ブレーキをかけたために、横に倒れてしまった。幸い、まったく接触はなく、怪我もしていなかった。その子の家が、交差点の角から2軒目にあったので、早速彼をつれて訪問し、事情を説明した。おそらく、彼はあとで親からさんざん叱られただろう。もう少し、私がスピードをだしていたら、止まることはできず、もろにぶつかっていたかも知れない。あるいは、もっとスピードをだしていたら、彼が降りてくる前に通りすぎていたかも知れない。しかし、あれでぶつかってしまった責任をとらされたら、たまったものではないなと思ったものだ。見通しの悪い下り坂を、猛スピードで自転車で、交差点での確認などもせずに、降りてくるのだから。
 
 こうした経験から、自転車の運転には、とても気になっている。車の免許には、多大な時間と費用をかけて取得する義務が課せられているのに、自転車は、技術的な問題を抱えていても、また、交通ルールなど知らなくても、乗れるというのは、強い疑問を感じるのである。少なくとも、小学校中学年以上くらいからは、講習を経て、自転車免許を取得し、そして保険への加入を義務つける必要があるように思う。
 子どもの運転などでは、深刻な事故は起きない、というような甘い考えが、上記のレーシングカートの事故で感じるし、自転車の危険な運転なども、もっと必要な対策をとっておくべきである。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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