安倍元首相狙撃考察11 山上が犯人でないとすると2

 安倍元首相を銃撃したのが、山上ではないという点については、ほぼ疑いないと思う。しかし、不思議なのは、テレビや新聞が、一切このことを問題にすらしないということだ。youtubeやSNSには疑問が多数でている。そして、説得力のある議論を展開している人も少なくない。何人もの人が検証しているのに、私はまだここで取り上げていない医師の会見について、確認しておきたい。
 
 安倍元首相が運ばれた奈良県立医大では、20名のスタッフによって輸血などの措置が行われたが、5時過ぎに死亡が確認され、記者会見が行われた。その模様を伝えたのが、以下の記事である。
 
「記者会見をした同大の福島英賢教授によると、安倍氏は午後0時20分ごろ病院に到着したが、既に心肺停止状態だった。首の前側に約5センチ離れて2カ所の銃創があり、弾は心臓に達していた。肩に1カ所の貫通したとみられる傷があった。体内から弾は見つかっていないという。」(毎日7.8)

「病院によると、安倍氏の首の右前部に約5センチの間隔で2カ所の小さな銃創があった。銃弾が首から体内に入り、心臓と胸部の大血管を損傷したとみられる。心臓の壁には大きな穴が開いていたという。左肩に銃弾が貫通したとみられる傷が一つあったという。体内から銃弾は発見されていないという。」(朝日7.8)
 
 しかも、不思議なことに、この記事だけなのである。それでも、読めばすぐわかるように、ここで福島教授が述べていることは、山上が銃撃したという事実に、完全に反している。ここで明らかにしているのは、安倍氏の右側の首にふたつの銃創があり、左側の肩にひとつの銃創があった。そして、首のほうが射入口であり、肩が射出口であるとしている。そして、首から入ったひとつの銃弾が心臓を破壊した。しかし、体内に弾丸はなかったという。
 映像をみた人はわかると思うが、背後で大きな音がしたので、安倍元首相は左側から背後を見る姿勢になったので、山上の2発目の銃弾があたったのだとしたら、左から銃弾が入らなければならない。通常射入口は小さく射出口は大きくなるので、医師が見間違える可能性はほとんどないといわれている。それが逆になるだけではなく、左の肩から入ったとしても、その射入口がひとつしかないのに、首からの射出口は2つあるという、不思議なことになってしまう。つまり、医師の説明と、山上銃撃説とは、完全に矛盾するので成立しないのである。また、山上の銃を構えた位置と、安倍元首相の傷の高さの関係で、肩に命中するような射撃は、ほぼ不可能だという計算をした人もいる。それは、山上がどのような角度で撃ったかによると思うので、不可能ではないだろうが、傷口の形状と数の点で、山上銃撃説は成り立たない。
 
 警察は、この無理を糊塗するために、司法解剖を行ったとして、山上が撃ったように辻褄をあわせているようだが、(正式には、この解剖の所見は公表されておらず、青山議員が警察から聞いた話として、広まっているだけなので、真偽はわからない。)そもそも、司法解剖が行われるほどの時間がなく、翌日には東京に遺体が戻り、迅速に荼毘にふされてしまった。だから、司法解剖は、正式な形では実施されていないと考えざるをえない。
 
 そこで、やはり、では、誰が何故、という問題に行き着く。この間ふたつの本を読んだ。
橘結城『安倍氏殺害犯と日本の闇 統一教会、CIA、米国共和党との恐るべき関係』
杉原光将『安倍氏銃撃事件・徹底分析 やはり狙撃による暗殺だったと断定するこれだけの理由』
 この点については、誰が論じてもそうなるのだろうが、やはり、壮大な推測が短く提示されるだけだ。橘氏は、イルミナティを核とする英米の世界統一政府計画について述べているが、そのなかで何故安倍氏が殺害されねばならなかったのかは、明らかにされていない。
 杉原氏は、トランプが再選されると、安倍氏と強力して、ロシアとウクライナ戦争に決着をつけ、ロシア排除ができなくなるので、安倍氏が邪魔になったという説だが、あまり説得力を感じない。確かに安倍氏は、トランプと親しかったが、別に共和党側の人間というわけではなかった。民主党の大統領とも普通につきあっていた。確かに、オバマとは仲良しではなかったが、それは人格的な問題で、政党の路線上の問題ではなかったと思われる。バイデンが安倍氏に働きかければ、しかるべく応対したにちがいてい。それに、その説では、何故トランプを狙わないのかがわからない。それにトランプ再選まで、アメリカがウクライナとロシアの戦争を長引かせるとも思えない。その前にウクライナも力尽きてしまうだろう。ある時点で、決定的な武器を与えて、ロシアを敗戦に追い込むはずである。
 
 youtube上では、安倍氏と親しかった山口敬之氏が盛んに、山上が犯人ではないとういう説を述べているが、背景として中国をあげているので、その点でまったく説得力を感じない。そもそも安倍氏は、反中国ではなかったのだから、中国が安倍殺害などするはずもない。また、中国が日本の警察を操ることができるのだとしたら、恐ろしいことだろうし、さすがに、日本の保守層が真相究明に動くだろう。更に、統一教会の追求は、安倍殺害犯の究明を逸らすための陰謀だという位置づけなのが、おかしい。統一教会の問題は、もっと徹底的に行う必要かある。
 
 というわけで、今回も袋小路のままということになった。注目は、山上の裁判だろう。実現しない可能性もあるが、実現したとしたら、どういうことになるのか。特に弁護士がどういう作戦で闘うのか。いくつかの可能性について、次に考えてみたい。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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