ウクライナ戦争は、情報戦という側面が強く出ている。そして、情報戦は、日本のネットでの書き込みにも現れている。ヤフコメには、かなり不合理な書き込みが見られるからだ。ただし、この文章を書くために、再度ヤフコメをチェックしてみると、かなりの書き込みが消されているような気がした。よりたくさんの新たな書き込みが増えたので、うもれてしまった可能性もあるが、多少、記憶によって、書く部分があることをお断りしておきたい。
現在は、ウクライナ支持、プーチン弾劾という色調が、日本のメディアとネットを支配しているが、それに挑戦する、疑問を呈する書き込みは、いくつかのパターンがある。
・ゼレンスキーにもかなり問題があり、例えば、ロシアを挑発すような政策をとっていた。プーチンが話し合おうと提案したのにそれを蹴ったために、プーチンは侵攻せざるをえなくなった。未成年、高齢者以外の男性は国外に出てはいけないという政策はおかしい。
・人間を楯にしているのは、ゼレンスキーである。
・避難しようとしているウクライナ人を銃で撃っているのは、ウクライナ兵であって、ロシア兵ではない。ロシア兵には、ウクライナの民間人を殺害するメリットがない。
・親ロシア的な政党を禁止しているのはゼレンスキーであって、ゼレンスキーはファシスト的である。
こういうような議論が、散見される。(以下のヤフコメは、時間の経過とともに、ページが変わるので、URLは省略する。似たような書き込みはたくさんあるので、各自確認してほしい。)
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(略)脱出したい民間人と徹底抗戦させたい政府の意識の違いが、ウクライナが善でロシアが悪ってスタンスを海外に対して保つために、あえて民間人を巻き込むやり方に繋がっているように見える。
ゼレンスキーのいう「徹底抗戦する」「全滅したら交渉は無し」はウクライナの民間人を人質にとってロシアと交渉するようなスタンスで、自国の議員捕まえてロシアとの人質交渉を行った件と発想が同じ。
ロシアは当然悪いが、ウクライナ政府も全く応援できない。(略)
(同じ筆者)
(略)なんでもかんでもウクライナが善てすると、ウクライナ政府がロシア悪を印象付けるために民間人を犠牲にする作戦もエスカレートする。
正義の側はなにやっても許されるみたいな捉え方だと、ウクライナ政府がウクライナ国民に対して強権をふるってるって所もぼやける。
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ゼレンスキー政府が、ロシアの悪を印象付けるために、民間人を人質にして、楯にしているという議論は、かなり見受けられる。もちろん、絶対的に否定する証拠を、私がもっているわけではないが、おそらく、そうではないに違いないと思われる。既に500万人が国外に避難しているのだから、逃げる意志があり、かつそれが可能な人の相当数は、逃げたのだと思われるし、それを妨害しているようにも見えない。避難のためのバスなどをなんとか戦地に乗り付けているような映像もたくさん放映されている。しかし、逃げることができない人、逃げたくない人もたくさんいるはずである。しかも、国外にいた人が、ウクライナに戻ってくる人も多数いるのだから、逃げない人が多数いても不思議ではない。国外に脱出するというのは、かなり勇気がいることであるし、そんなに簡単なことではない。もし、積極的に、政府が避難しようとする国民を妨害し、人質化するようなことをすれば、それは直ぐに国民にわかるわけであり、政府への信頼は一気に低下するはずである。ウクライナでは、インターネットを広く国民が活用しており、逃げようとしたが、政府によって妨害されて、楯のようになっているとしたら、それをネットで他のひとたちに訴えるに違いない。それがメディアに流れることはなくても、国民のなかに拡散するはずでる。
マリウポリの製鉄所の地下に避難している市民たちの映像がテレビで流れているが、もちろん、強制されていないと絶対的に断定することはできないが、映像を見る限り、本当は逃げたかったし、それが可能だったにもかかわらず、ウクライナ軍によって地下に押し込められ、楯として使われているという雰囲気は感じなかった。そうであれば、やはり、それは表情に出るのではないだろうか。映像で見る限り、市民たちは明るく振る舞っており、なんとか生きようとしているようにみえる。
さらに、製鉄所から出て、避難しようとする人がいるが、ウクライナ兵が殺害しているのだという書き込みも、複数あった。これは、もっと考えにくいだろう。
というのは、マリウポリは、完全にロシア軍によって包囲されており、ロシア軍制圧地域は、かなり広範囲にわたっていて、製鉄所だけが制圧されていないだけだ。だから、そこにウクライナ兵が入っていって、製鉄所から出てきた民間人を殺害することなど、できるはずがない。その前に、ウクライナ兵が、ロシア軍に捕まるか、殺害されてしまうだろう。しかも、そんな無謀なことをするとはとうてい思えないのである。また、逃げようとする市民を、地下の段階で、立て篭もっているアゾフ連隊が殺害しているということだとしたら、その確認は現時点では誰もできないわけだが、あの地下の市民たちの表情からは、おそらくないだろうし、そもそも、避難する意志があるひとたちは、わざわざ製鉄所の地下に籠もらないはずだ。
(これを書いているときに、速報で、プーチンが製鉄所突入中止を命令したというのが画面に流れたが、詳細はわからない。事実上の降伏受け入れなのだろうか。)
次に以下のような書き込みを検討しよう。
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脱出中の民間人への駅での攻撃はウクライナのミサイルだとばらされていましたので、私も最初からロシア悪で一色のメディアは信用してません。真実は数年かけて検証されるでしょうが、ブチャにしろ、他の地域にしろ、ロシア軍が引き上げた後の焦土や犠牲者が、なぜロシアだけのせいなのか。侵攻した事実は責められるべきだが、個々の略奪その他はむしろロシア軍撤退後の混乱で生じている部分はある。だって占領地域に、自分で外から攻撃する意味ある?ブチャを外から攻撃してたのはウクライナだよ。その砲撃による犠牲者は、広義ではロシアのせい、でも狭義では自国軍の犠牲者。ウクライナ、自国民を迫害して回ってるよね。男性は出国禁止なんて、実は大統領本人が自国民根絶やしを狙ってるのかとさえ。頭切れないのに有象無象がよって集って要らん知恵つけてるようにしか見えない。もちろん市民の命はそっちのけで。
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この文章を書いた人は、悪意ではないかも知れないが、かなり誤解しているのではないだろうか。ブチャがロシア軍に包囲されているとしよう。そうすると、ウクライナ軍は、密かに侵入して、ロシア軍に近づき狙撃するだろう。しかし、それは、ピンポイントであり、激しい戦闘が持続的に行われているわけではない。そうでないときには、市民も外出するだろう。また、占領したのだから、当然ロシア軍は市民の住宅に押し入るだろうし、兵隊がいないか調べて、あやしいと思った人を引きずり出して、拷問したり、殺害したりするかも知れない。そういうことがあったと、ウクライナ以外の国際ジャーナリストに、残ったウクライナ市民が語っているのを、映像で見ることができる。北部戦線で、ウクライナ軍は、ロシア占領地域を、外からミサイルなどで、大規模爆撃するような戦術をとっていなかったとされている。
そして、次になると、かなり疑問が強くなる。避難者たちが多数いた駅にミサイルが撃ち込まれた事件である。
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攻撃に使用されたのは、短距離弾道ミサイル「トーチカU」です。着弾したミサイルにはロシア語で「子どもたちのために」と書かれていますが…ロシア側はこのミサイル攻撃はウクライナ軍によるものだと関与を否定しています。
ロシア国防省報道官(8日)
「4月8日、ウクライナ軍によってクラマトルシクの鉄道駅にミサイル攻撃が行われました、「トーチカU」を使用しているのはウクライナ軍のみでありその残骸が鉄道駅周辺で発見されている」
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以下に、この記事の根拠となるような内容が書かれている。
つまり、避難する人たちが乗る列車を待っていた駅に、ミサイルが撃ち込まれ多数が死傷者が多数でたわけだが、ロシアはトウチカUを所有していないというロシアの主張は、次の記事によって、否定されている。
この記事では、ロシア軍がトーチカUを所有、使用していることを伝えている。従って、ロシアは嘘をついていることになる。こうした嘘は、いくらでもあるので、こうした記事のほうが正しいと解釈するほうが合理的だろう。それに、ウクライナ軍がウクライナ市民が多数いる場所に、ミサイルを撃ち込むのは、通常ありえないが、ロシア軍が撃ち込む理由は確実にある。(以前、ウクライナ上空で、マレーシア航空の旅客機がミサイルで撃墜されたとき、現在では、ロシア側がやったことがほぼ確実であるが、ロシアは、ウクライナがやったと言い張っていた。)
残虐な民間人殺害をしているのは、ロシア軍ではなく、ウクライナ軍だという主張は、いつもある。
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(略)テロ組織との関係が噂されている極右組織も、ロシアの戦っていたら正義の防衛組織と報じられるとは。
恐ろしいプロパガンダを目の当たりにしています。
冷静に考えてみたら分かること。
民間人がいなくなって都合が悪いのはどちらでしょうか。
ロシアは名目上逃がしたいはず。その方が思い切り攻撃できますから。何度も降伏を呼びかけている。
一方、ウクライナは民間人がいればロシアは攻撃しづらいことを分かっている。国際社会にもアピールできる。人道回廊ができればその間に補給のチャンスができる。
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普通に考えても、逃がしてやるって言っておきながら攻撃するくらいなら、逃がさないで無差別に攻撃する方が国際的な非難は少しはマシだろう。ロシアならそちらを選択する。
そう言った理論的でない行動を「軍の行動を掌握できていないからだ」は、あまりにも無理やりな理屈付け。
極右武装派は盾を逃がしたくない。
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当初、ロシアがマリウポリ侵攻前に途中で戦車を止めてまで避難する時間を与えていた間に、「ロシアの侵攻を防ぐ」と称して、橋、線路、道路を破壊し、一般市民の退路を絶った、つまり真っ先に「人の盾」を作ったウクライナの言っていることはは、どれくらい信用できるのか。私は決して親露ではないが、あまりにもウクライナの被害者美化の報道が多すぎる。
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これらの意見はどうだろうか。確かに、ウクライナ側だけの情報を信じるのはおかしいだろう。しかし、「信じる」のではなく、合理的に考えてみると、やはり、このひとたちの書いていることは、おかしい。いずれも、ウクライナが市民を人質にしている、その方が、ウクライナにとって好都合であり、ロシアにとってはむしろ不利だという認識を元にしている。
しかし、市民とは国民であり、戦争のあとに国を再建するのは国民である。そういうひとたちを殺害して、国の将来の芽を摘んでしまうことは、祖国防衛のために闘っている意識のウクライナ兵は、やはりしないだろう。敵である国民を殺害するのは、やはりロシア兵である可能性が高い。
最後、ロシアが避難の時間を与えていたのに、その間、ウクライナ側が、橋・線路・道路を破壊して、市民の退路を絶った、というのは、いかにも、時間軸が混乱している。ウクライナ軍がインフラを破壊できるとしたら、まだ十分に地域を掌握して、ロシア軍が攻めてくるのを防ぐ準備をしていることを意味する。それならば、まだロシア軍が見まもる中を、市民が避難する事態にはなっていないし、ロシア軍が地域を掌握しているならば、ウクライナ軍は、あえてインフラを破壊しても意味がない。
他にもいろいろと書きたいことがあるが、長くなったので、今回はこのくらいにする。しかし、やはり、一方の情報だけで判断するのは危険であることは確かだ。しかし、現在のところ、日本のメディアは、ロシアからの情報をそれなりに流している。プーチンの演説や、報道官の解説は、そのまま流しているのだから、情報が一方的とはいえない。多くの国民は、ゼレンスキーやウクライナ側の情報と、プーチン、ロシア側の情報を比較して、プーチンたちの言動には、信頼がおけないと感じているのである。