自民党の総裁選がヒートアップしているが、そのなかで、再度野田聖子氏の夫の問題がクローズアップされている。最初に問題になったのは、夫が、GACKTコインの企画会社と同席して、金融庁に圧力をかける感じで説明を求めたことを、朝日新聞が調査を始め、そのことを野田聖子総務相が、記者に漏らしたことだった。そして、週刊誌の文春と新潮が、野田氏の夫が、元暴力団員であったことを報じて、夫が提訴。文春に対しては勝訴したが、新潮に対しては敗訴した。そして、週刊新潮に関する判決のなかで、夫が元暴力団員であった事実を認定したわけである。
さて、総裁選の活動のなかで、当然だが、この問題に対して、見解を求められた野田聖子氏は、自分は夫を信じている、裁判で、夫が暴力団員であったと証言した元組長を、偽証罪で告訴しており、捜査が始まっていると弁明した。野田氏が立候補すれば、必ず蒸し返される問題といわれていたが、事実そのようになっている。
もちろん、裏の事情はわからないが、報道されている限りでの事実をもとに考えてみたい。
まず、真実はわからないが、まがりなりにも、裁判所が判決で、夫を元暴力団員であったと認定した以上、それを前提に考えておく必要があるだろう。野田氏は、警察のデータはでたらめだと述べ、対文春の訴訟では勝ったことをもって、夫が元暴力団員ではないと信じているということは、かなり苦しい説明のように思われる。
しかし、野田氏が、初めて夫となる人とあったときには、既に暴力団を辞めており、通常の仕事をしていた。だから、現役の暴力団員と交際したわけではない。逮捕歴はあったが、既に、法的な償いは終えていた。だから、そもそも、夫となる人と交際し、結婚したこと自体は、問題とすべきではないと考える。
人間だれしも過ちをおかすわけだし、更生することも可能である。更生した人間を、いつまでも社会から排除するのは間違っている。
しかし、そうした過去が明らかになったときに、野田氏がとった対応はどうだったのだろうか。まず、まったくそうした過去を知らずに、野田氏は交際を始め、結婚に至ったのだろうか。もし、そうだとしたら、小室圭問題と重なってしまう。
もし、知らずに結婚したのならば、裏切られたわけだから、そこで離婚するという対応はあった。もちろん、事情をきちんと説明を受け、それを受け入れる、今はまっとうになっているのだから、過去は問わないという姿勢をとることもできるだろう。
また、知っていて、りっぱに更生しているという判断をして、結婚したという可能性もある。それなら、そのように説明すればよい。その説明を多くの人は受け入れるのではないだろうか。
だが、裁判所の判決で、夫が元暴力団員であったという「事実認定」をされている以上、単に、「夫を信じている」というだけの説明は、納得のいくものではない。「裁判所の認定は、事実ではく、夫は、絶対に暴力団の組員だったことはないといっており、それを信じている」というのならば、まだ理解できる。裁判所が、そうした事実認定をしたというのは、かなり異例のことのようだが、やはり、そのように断定することが妥当だという証拠があったのだろう。大きな決め手は、当時の組長が裁判にでて、証言したこと、そして、証言したときの夫の様子などをみて、判断したと思われる。
野田氏の説明は、事実を受け入れて、今はまったく無関係であり、そのことを「信じている」というわけでもなく、事実ではないと具体的証拠(例えば、組員だったとされている時期に、他のこういう仕事をしていたというような説明)をあげて否定するというのでもない。何を信じているのかも不明な「信じている」というのでは、納得できる人は少ないにちがいない。これは、夫の問題ではなく、野田氏の政治家としての問題である。