いまだに、新型コロナウィルスとインフルエンザは、同程度の病気なのか、それとも異なるのか、医療専門家のあいだですら見解が分かれている。死亡数については、インフルエンザは毎年約3000名、新型コロナウィルスはこの一年で、今日現在5452名である。単純に、死亡率を見ると、インフルエンザは0.3%、新型コロナウィルスは1.45%になり、はるかに、新型コロナウィルスのほうが恐ろしい病気だということになる。しかし、この数字は、かなり実数とはかけ離れていると思われるのである。というのは、ここが、われわれ一般市民にとっては、大きな相違なのだが、インフルエンザは、かかったと思ったら、気軽に開業医にいって、検査してもらい、そして、薬を受けることができる。よほど症状が悪化しないかぎり、その薬を飲んで、自宅で療養する。しかし、新型コロナウィルスは、症状がでて、おかしいと疑っても、開業医にいって検査してもらうことはできない。まず、開業医のほうでも、ゾーニングなどが行われていないところでは、診察そのものを断られるかも知れない。そして、保健所に電話して、煩雑なプロセスを経てやっと検査を行われる。しかし、陽性になると、今度は逆に、インフルエンザではありえない、濃厚接触者なる人が割り出され、検査を受けるように、保健所から求められる。インフルエンザが疑われても、医者にいかず、自宅でじっと休息するだけの人も多いだろうが、おそらく、薬があるから、多くの人は、医者にいくだろうし、陽性であれば薬がだされるので、感染者(=発症者)の数値が、現実に近いものが得られるはずである。しかし、新型コロナウィルスの場合は、気軽に検査できないし、やってもらえない状況がずっと続いているから、実際の感染者数(発症者数とは異なる)と、統計的に表れた数値とは、かなり異なることが考えられる。
さらに、もうひとつの重要な違いがある。
それは、新型コロナウィルス感染以前は、冬の季節性のコロナ型疾患はインフルエンザが主なものだったが、人々は、それほど注意をしていたわけでなはい。かかっても薬があるし、しばらく休めば大丈夫だと思っているからである。しかし、新型コロナウィルスの感染が始まると、マスク、手洗い、店での消毒、3密回避等の、相当な注意をもって、感染しないような行動をとるようになった。もし、普段のような生活をしていたら、つまり、インフルエンザに対する注意の程度だったから、新型コロナウィルスの感染はもっとずっと多かったかも知れないし、その結果死者も多かった可能性がある。したがって、普段のインフルエンザの数値と、昨年からの新型コロナウィルスの数値を、同列で比較することは、あまり意味がないのではないかと思うのだ。推測になるが、このインフルエンザと新型コロナウィルスの数値を考えれば、やはり、新型コロナウィルスのほうが、ずっと怖い病気であると考えざるをえないのである。医療専門家の、新型コロナウィルスとインフルエンザは同じような病気だというのは、素人として考えても、おかしいと思われる。
現在の数値の変化について、再度確認しておきたいのは、東京は、これまでのPCR検査のやり方を緩めて、濃厚接触者の感染を追いかけることを、それぞれの保健所に任せた、つまり、やらなくてもいいとしたこは、見過ごせない。それがまずいという意味ではなく、感染者数の意味が変わったということだ。これまでの検査の集約方法をかえない限りは、検査数が減っていくはずだから、感染数も実際とは離れて減少していくことなる。つまり、感染数が減ったからといって、実際の感染者数が減ったかどうかはわからないということだ。テレビなどでは、この点があまり触れられないのはどうしたことか。
昨年は、日本人の感染者や死者数が少ないのは、何かファクターXがあるのではないか、とさかんに言われたが、最近はあまりいわれなくなった。それは、ファクターXがわかったからではなく、そんなものはないのではないかということがわかり始めたからではないか。
確かに、昨年は、日本人の死者数は、少なかった。検査数も圧倒的に少なかったが、死者数も少ないのだから、やはり日本人は、新型コロナウィルスに対する何かの耐性があるはずだという論理だったが、いまの状態は、確かに欧米ほどではないが、日本人の死者数もかなり深刻な状況にまでなっている。結局、医療崩壊あるいはそれに近い状態になったかどうか、国民皆保険制度がある、あるいは機能しているかどうか、によって、発症して死亡に至る割合が影響してくるのではないか。日本でも、第三波では、死者数が非常に多くなっているのは、軽症でも自宅待機を余儀なくされる人たちが多くなっていることが影響している。第一波のイタリアなども、病院に入れず放置された患者が多かったとされている。
日本人の生活慣習による、清潔好きが、感染を減らしたことは、確かであると思うが、それ以外のファクターXは、存在していないと、考えるのが実情にあっているのではないだろうか。前に書いた上久保氏の、日本人は集団免疫を獲得したという議論は、あまりに乱暴であると思われるし、結局、日本人の生活習慣と、日本の医療体制が、第一波の感染を少数に抑え、そのことが死者の数を増加させなかったのだが、第三波で、医療崩壊が部分的に生じると、かなり死者が増えている。ヨーロッパの爆発的な感染をしている国の映像をみていると、やはり、マスクをしていない人々が多い上に、イギリスなどではかなり大人数のパーティなどが行われているという。だから、総体として考えれば、欧米と日本の相違を説明するのに、特別な理由が必要だとは思われない。
要は、マスク・手洗いを徹底することだろう。