昨日はテレビに釘付けだったが、無事、バイデンの当選の確認がなされて、世界中の多くの人々は安心しただろう。私自身は、もっと酷い状況も想定していたが、さすがに、そこまではいかなかったようだ。日本のトランプ支持者たちのなかには、戒厳令が布かれて、議事堂が軍隊によって管理されるというようなことをいう者までいた。そして、彼等の何人かは、いまでも、「今度の」作戦なるものを吹聴している。それによると、トランプは、既に6日の夜に、テキサス州アビリーン国防司令部に、Boeing E-4 という、核攻撃されたときに使う飛行機で移動したというのである。そして、20日のバイデン新大統領の就任式前に、軍事行動をおこすような口ぶりである。そして、そのyoutubeには、多くの賛同コメントが書かれ、他のyoutubeにも引用されている。そうしたコメントによると、中共によって組織された過激派が、暴動をおこしたのであって、トランプはそれを静めようとしていたということのようだ。彼等によれば、トランプは完全に被害者らしい。カルトとはこういう人たちのことなのだろう。
しかし、現実をみればわかる。軍を動かすといっても、軍がトランプの命令に従わなければ動かない。形式上最高司令官であるということと、実際に命令できることとは、別のことである。6日の暴動をみて、閣僚たちが続々と辞任している。政府が解体しているに等しいわけだから、逆に非常に危険な状況になっているわけである。そして、議会では、憲法修正25条の発動を、ペンス副大統領に迫っている議員が多数いる。そうしないなら、弾劾決議にむけて行動するとまでいっているわけである。閣僚が続々と辞任している段階で、トランプがいかに命令権をもっているとしても、この状況で軍が動くはずがないことくらい、わかるはずである。
重要なことは、バイデンが大統領に正式に就任することが確認されたことではなく、(そんなことは前から確認されていた)共和党の議員の中ですら、トランプの信用が崩壊したこと、そして、トランプはこれまで2024年に向けて、活動をしていたつもりかも知れないが、ここに至っては、共和党の支持を受けることは、不可能になったということだ。完全に、トランプは墓穴を掘ったというべきだろう。
もともと、トランプは共和党から出馬することを、明確に決めていたわけではなく、とりあえず共和党で名乗りをあげ、だめならば、トランプ党を結成して、そこから出馬するつもりだったようだ。だから、2024年も、固い岩盤支持層をあてにして、トランプ党から出馬することまで、ありえないとはいえない。
アメリカファーストを唱え、実はトランプファーストである人物を、日本人のなかで、熱烈に支持する人がいることは、やはり、理由を考察する必要はあると思う。アメリカ人の中に、支持者が多いことも不思議ではないのだろう。しかし、今後のトランプは、司法との闘いを強いられるのは確実で、大統領選に再起することなどは、難しいだろう。
関連話題だが、上院で、選挙結果に疑問を述べたホーリー議員が、6月に出版する予定だった著書を、出版社が出版しないことを決めたという。それに対して、アメリカ憲法修正第一条の言論の自由に違反するといって、提訴する意向を示しているという。トランプ支持者の憲法理解、権利理解は、この程度なのかと呆れてしまう。言論の自由、出版の自由、表現の自由というのは、ある個人の著作を出版する義務を、出版社に対して課すものではない。出版社は、自社の判断で、出版するか否かを決める権利がある。出版物が、他人の権利を侵害しているような場合、出版社にも責任が及ぶのだから、当然だろう。ホーリー氏が、あくまで自分の書物を出版したいならば、それを引き受けてくれる出版社を探すしかない。それは、あくまでも自由で平等な契約関係なのである。こういうことは、権利に関する常識だと思うのだが、このようなことも理解しない人物が、トランプ氏が当選したと思い込んで、わざわざ上院で、国民の投票を否定する演説をするということは、示唆的なことだ。