トランプ大統領のクーデター未遂か

 今日は朝から、アメリカの様子に釘付けになっていた。日本でも、1月6日にアメリカで「何か」がおきると、盛んに言われていたし、バイデン当選を否定する動きを支持するようなyoutubeチャンネルも少なくなかったから、実際にアメリカで起きたことに、それほど驚きはなかった。しかし、展開は興味深いものだ。
 日本の選挙制度では考えられないことだが、11月3日に行われた大統領選挙が、正式に結果が認定されるのが、1月6日の両院での確認の協議となっている。それまでに、結果の集計、選挙人による投票という手続があり、最終が1月6日だ。そして、そのときに、両院議会で、異議申し立てがあれば、議員が意見を述べ、そのあと、上院議長による確認という「儀式」になるというのだ。しかし、トランプが、上院議長であり、かつ副大統領であるペンスに、結果を承認するなという圧力をかけていたということだ。また、共和党議員に対して、意義申したてを行うように働きかけていた。

 日本のyoutubeでは、トランプが戒厳令をだすだろうなどという「予告」もなされていたから、相当の混乱が起きることは十分に予想されていた。ペンスは、さすがに、トランプのような非常識な人間ではないので、トランプの執拗な要請を断り、選挙結果を承認するという態度を、予めトランプに伝えていたと報道されている。かなりの数の共和党議員が、異議申し立てをするという報道もあった。
 そして、今日の朝、ニュースを見ると、ワシントンで騒動が起こっているという。そこでCNNをずっと見ることになった。
 まずは、ホワイトハウス前で、トランプ支持者による集会が行われた。そこにトランプが現れ、議事堂に向かうように演説をした。それに応じて、集会参加者は議事堂に向かい、そして、多数が議事堂の敷地内に入りこみ、かなりの人数が建物のガラスなどを壊して、内部に侵入、一種の暴動状況になった。議事を行っている会場に入る可能性もあり、中にいた議員たちは、身の危険を感じたと語っている。中にいた警官が当然排除に乗り出し、その過程で、銃弾が発射され、何人かが怪我、そして、現在一人が死亡したとされている。その後、入り込んだ人たちが押し出され、また、警官機動隊によって、敷地内からも押し出された。その状況で、私がテレビをつけたことになる。
 ワシントン市長から、外出禁止令がだされ、なかなか帰ろうとしてないトランプ支持者たちだったが、そのうち、散り始めた。催涙弾なども使用されたようだが、警官や機動隊は、かなり我慢強く対応していた。そして、ある程度時間がたってから、両院の議事が再開されている。
 これは、明らかにトランプによるクーデターだと思う。未遂に終わったのだが。戒厳令をだすなどということはやらなかったが、それに従う部下たちがいないのだろう。いたらしていたかも知れない。集会で議事堂にいけ、と煽ったわけだから、集会参加者たちが、議事堂にはいって、議事を妨害することは、余地できたはずである。
 こうした動きに対して、トランプの閣僚の一部から、アメリカ憲法修正25条の適用を考えているとの報道もある。修正25条は、大統領が職務を遂行できないことになったら、副大統領が代わるというものだが、死亡したり、みずから職務遂行不能と認めた場合は問題ないが、みずからは認めないが、明らかに異常をきたし、まわりが大統領の遂行能力を認められない事態になったときは、副大統領と、定まった規則によって、一定以上の関係者が認めた場合には、大統領の任務を副大統領に移すことができるという規定である。これを発動しようという閣僚が存在するのだから、かなり重大な事態だというべきだろう。実際に発動される可能性は低いと、CNNでは述べていたが、トランプに近く接している人たちは、トランプの精神が不安定で、誰のいうことも聞かないそうだ。しかも、かなり無茶な軍事行動をおこそうとして、閣僚たちが必死で説得して、思い止まらせることもあったという。報道でみるトランプの行動で考えれば、明らかに常軌を逸している。票が盗まれたとか、その証拠があると叫んでいるが、裁判を多数おこしても、いずれも証拠がないとして否定されているのである。本当に証拠があり、裁判所に提出していて、不当に「ない」とされたのであれば、その証拠を公表すればいいのである。しかし、具体的な証拠は一切示さずに、「あるある」と叫んでいるだけなのだから、まっとうに判断すれば、証拠はないということになる。私が不思議に思ったのは、日本人の中に、選挙が不正だった、その証拠がある、とyoutubeなどで主張している人たちが、少なくないということだ。まともな判断ができないのか、あるいは、単に視聴数をあげるために過激なことをいっているだけなのかわからないが、いずれにせよ、まったく信用できない人たちだ。
 いま、CNNでは、各州の選挙人の投票結果について、ひとつひとつ確認作業が行われている。形式的とはいえ、けっこう時間がかかりそうだ。
 ただ、今回の議事堂侵入事件を受けて、異議申し立てをするはずだった共和党の議員の多くが、取り下げたという。当然だろう。こんな暴力事件をおこした人たちと、同一の主張をしていたら、信用問題となってしまう。トランプは、やることが逆効果であることが多い。ジョージアの上院議員選挙でも、民主党が2議席確保したが、トランプの応援がかえってマイナスだったとも言われる。そして、今回のトランプの扇動で、かえって共和党議員の異議申し立てを、大きく減らしてしまった。
 議会に侵入したのだから、逮捕され罰せられる人が出てくるだろう。そして、それを扇動したトランプは、罪に問われないのだろうか。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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