高橋洋一の統計の扱いへの疑問

 高橋洋一問題は、既に収まっているかも知れないが、一言付け加えておきたい。
 高橋洋一は、とにかく統計をもとにものをいう人だ。しかし、その統計自体が、信頼できなかったらどうなるのか。彼は、中国の経済統計は信用できないと、常々いっている。では、日本のコロナ感染者数の統計はどうなのか。欧米では、日本の統計は、実態よりかなり少なくでており、信用できないという見解は少なくない。検査数が圧倒的に少ないからだ。
 高橋氏が、今回のさざ波論で示しているグラフは、「外国の集計による」、だから参考になるという前提でだした結論だが、いくら外国の集計でも、日本の数値は、日本が提出したものだろう。
 現在の日本でも、広島は非常に増えているが、これは、明らかに、広島がかなりの検査数をしているからという側面がある。それに対して、東京は、人口に比べて、感染者数がいかにも少ない。高橋氏は、この広島と東京の感染者数を、そのまま比較できると思っているのか。思っているとしたら、統計を扱う人間として失格だろうし、高橋氏ほどの優秀の人間であれば、そんなことは思っていないはずである。とすれば、日本と外国の比較はどうなのか、という問題を処理する必要が出てくるではないか。もちろん、検査数が2倍になれば、陽性数が2倍になるわけではない。広く検査を行えば、当然感染していない人も対象になるから、数字上の陽性率は下がってくる。しかし、陽性数は確実に増えるだろう。こんなことは、まったく常識の範囲である。だから、欧米と日本の感染数を、そのまま比較するのは、統計上おかしいのだ。

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ミレルラ・フレーニを偲んで

 コロナ騒動とか、自分自身の退職時期と重なったためか、ミレルラ・フレーニが亡くなっていたことを、ごく最近知った。フレーニは、もっとも好きなソプラノ歌手だった。フレーニが得意とするオペラが、もっとも好きなオペラに入っていたからともいえる。とにかく、亡くなったことを知ったので、フレーニについて少し書いてみたい。
 フレーニは生で実際に聴いたことがある。ミラノスカラ座がアバドに率いられて来日公演を行ったときだ。アバド指揮による「シモン・ボッカネグラ」でのマリアと、クライバー指揮による「ボエーム」のミミだ。どちらも、超がつく名演だったが、聴いた席によって、声の質がまったく違うように聞こえたことが印象に残っている。シモン・ボッカネグラのときには、席を一階の後方で、レコードで聴く声と似ていて、ああフレーニだと思ったの他が、ボエームではずっと前のほうで、ずっと丸くふくよかな響きだった。「私の名はミミ」などは、本当に感動的な歌唱だった。

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「日本的学校教育」中教審答申の検討9 義務教育2

 今回は、教員養成について、簡単に考えてみる。答申の提言は、小中の免許を両方とることが望ましく、とりやすいような配慮をすべきということに尽きる。しかし、これは、根本的な問題について明確にしなければ、現在行われていることの延長にしかならず、結局、特に小学校教員の負担を増やすだけのことになるし、合理的な改革にはならない。
 根本的な問題というのは、小学校の教師は全教科担当であり、中学校は専科担当だということだ。教員養成や学校の現場に通暁していない人には、あまり知られていないかもしれないが、実際には、小学校教員養成を目的とした学部では、ほとんどの学生が小・中高両方の免許を取得しているのである。小学校教員養成を柱にしているから、当然全科の学習をする。その上で、主要な科目を決めて(普通ピークという)その科目の中等教育免許を取得可能にする。そうして、小中高の免許を取得して、小学校の教師になっていくのである。中学の教師になる者もいるが、高校の教師になるものは少ない。高校の教師は、より専門的な学部で学んで、教員免許を取得した学生のほうが、採用試験に強いのである。

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高橋洋一氏の弁明の間違い

 オリンピック開催問題が、いろいろとやかましくなっているので、その都度、小さな話題でも考察していくことにする。
 まず、高橋洋一炎上問題についての補充である。
 高橋氏は、昨日の弁明youtubeで、ワクチン接種で、日本が遅れている理由は、日本のコロナ感染が低いからだと述べている。これは、昨日だけではなく、高橋洋一チャンネルで何度か述べていたと思う。しかし、これは、まったくナンセンスな理由付けだろう。まるで、日本は感染が低いから、ワクチンの必要性をあまり感じていないし、それでよいのだ、というような言い方だ。確かに、本当にそうならば、「さざ波」論と符合して、整合性がとれている。しかし、それなら、何故、菅首相はまるで狂ったように、ワクチン接種で尻を叩きまくっているのか。自衛隊まで引っ張りだして、1日1万人、東京のひとつの会場で接種するとか、7月中に高齢者の接種を終えるとか、懸命にやっているように見える。そして、国民のほうでも、予約が始まると、とたんに電話がパンクして、なかなか予約ができないという嘆きが、テレビでたくさん放映されている。こういうことは、嘘だというのだろうか。菅首相は本気ではないし、また、国民の予約などは、ごく一部を誇張してテレビか放映しているに過ぎないというのならば、それは高橋氏のいうことが、一貫していることになる。

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高橋洋一氏の炎上に関して

 内閣参与である高橋洋一氏のツイッター書き込みが炎上している。欧米のコロナの感染が多い国と日本の感染数が表示されているグラフを掲載して、日本の感染は「さざ波」として、こんな状況でオリンピック中止は「笑笑」と書いたわけだ。これには、賛同の書き込みもそれなりにあったが、大非難の渦が起き、国会で菅首相にも質問が飛んだ。例によって、菅首相は、個人の考えだ、とまともに答えなかったが、内閣参与にしているからには、やはり、もう少しまともな対応が必要なのではないか。
 ところで、高橋洋一氏については、youtubeの高橋洋一チャンネルは、頻繁にみているので、その発想は、多少理解しているつもりだ。彼は、とにかく数字に強く、逆に数字以外のことについては、ほんとうに幼稚な感じなのだ。また、数字の扱いにこそ、立場が表れることを、あまり自覚していないのかも知れない。あるいは、自覚してやっているなら、かなり始末が悪い人物である。
 今回のグラフでも、出ているのは、日本よりも圧倒的に感染が多い欧米中心である。しかし、日本は東アジアに属していて、東アジアや近いオセアニアの主な国として考えてみれば、圧倒的に感染が多く、死者も抜きんでているのだ。つまり、G7としては、感染が低いが、東アジアとしては、感染が多いのだ。そして、日本は東アジアに属していることを忘れてはならない。その数値をみせて、なおさざ波といえるか。しかも、欧米はどんどん収まりつつあるのに、日本は拡大している。しかも、インド株は、ひょっとして、これまでの欧米とアジアの立場を逆転させるかも知れない。インド株は、日本人の免疫をすり抜けるという研究がでている。そうすると、あくまでも推測だが、いままでの欧米で猛威をふるった株は、アジア人の免疫が強く働くものだったために、アジアでは感染力が弱かったが、インド株は逆転して、アジアで猛威を振るう可能性がある。しかも、他の感染を防いだ国は、対策に習熟したが、日本の対策はザルだから、もろに被害を受け、欧米と逆転する危険性がないとはいえない。

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池江選手への辞退要請問題について

 羽鳥モーニングショーで池江問題がとりあげられ、玉川氏も山口氏も、池江璃花子氏に対する「オリンピック辞退せよ」表明を非難していた。山口氏は、日本が間違った方向にいっているとさえ述べていた。既にウェブに報道されているが、私はリアルタイムで番組をみていた。玉川氏には、普段共感することが多いが、これはいただけないと思った。
 私自身、「アスリートの立場は尊重したい一方」という題で、一般論として論じ、アスリートの立場を尊重すべきであるが、アスリートも、自分たちの活躍が、コロナで苦しむ人に勇気を与えるなどと考えないでほしいと書いた。池江問題は、このことが、拗れたトラブルになっているので、もう少し具体的なレベルで考えてみたい。

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ネトレプコの「ボエーム」ザルツブルグ音楽祭

 ネトレプコがミミを歌ったザルツブルグ音楽祭のライブがあると知って、なんとか見たいと思い、テレビからの録画をたくさんしているオケの友人が持っているというので、早速借りて視聴した。素晴らしかった。少なくとも演奏に関しては。しかし、カラヤン亡き後のザルツブルグ音楽祭は、好みはあるだろうが、すっかり変わってしまって、私には馴染めない演出が多いし、これもその例にもれない。

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オリンピック政治ゲームになってきた

 オリンピック・パラリンピックは、滅多にない政治ゲームになっている。もちろん、このゲームは、人の生死にもかかわっているので、遊びではない。政治家たちの実力が試されているともいえる。専門家でなくても、また、あまり政治に関心がない人でも、今日本が直面している現実は、歴史的にも、めったにない政治ゲームになっていることがわかる。
 4年に1度の、スポーツの祭典。アスリートたちにとっては、切実な生きる中心的価値に関わることだ。だから、可能ならば、ぜひ実現してほしいと願っているだろう。しかし、自身が政治ゲームに参加することはできない。しかし、また、オリンピックを利益のあがる事業と考えている企業にとっては、ある企業は既に利益を得ている(建築関係)から、どうでもいいと思っているかも知れないが、オリンピック本番の宣伝効果を期待している企業にとっては、何がなんでも実施してもらいたいと思うだろう。

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アスリートの立場は尊重したい一方

 いよいよ大がかりなオリンピック反対署名が、元日弁連会長の宇都宮氏によって提起されたので、私も早速署名した。かなりのスピードで伸びているようだ。何度も書いているように、私は、オリンピック招致そのものに反対であったので、「コロナだから反対」というのではなく、コロナだから尚更反対という立場であり、この署名が反対のうねりになってほしいと思っている。
 他方、気になる傾向として、アスリートにオリンピック反対せよという運動がなされているという。さすがに、これは、共感しがたい。特に池江さんを名指しで、オリンピック辞退を迫っているような働きかけがあると、報道されている。オリンピック何が何でもやる派のひとたちが、池江さんを利用している雰囲気があるのも、大いに問題だと思うし、彼女としても迷惑と感じているに違いないが、しかし、彼女自身は病気を克服して、それこそ常人ではありえないような努力をして、短期間に選手として復活し、代表の座を勝ち取ったわけで、それはそれとして、本当にりっぱなことだ。そして、彼女の立場として、様々な場で、組織委員会に活用されることを、断ることは難しいだろう。そういう立場は、理解してしかるべきではないだろうか。

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神奈川県の飲食店密告制度?

 4月の20日ころに大きく話題になった神奈川県の飲食店の、マスク飲食の徹底を調べる県民モニター制度であるが、県民による「密告」制度だと、大きな批判を浴びている。もっとも、神奈川県のホームページによれば、4月30日の段階で、7月から実施し、今後募集予定としているので、実際に行われ化どうかはわからない。批判が強いという理由でやめるかも知れない。そこで、この問題を考えてみたいと思った。
 神奈川県によると、県民モニターは、「認証店舗に実際に赴き、マスク飲食実施店の工夫や努力をしている点など、優れた取り組みを利用者の目線で評価するもので、今後募集予定」ということだ。そして、チェック項目は以下の通りである。

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