楽器別に選んでいるわけではないが、チェロのデュ・プレ、バイオリンのヌヴーだったので、ピアノはやはりディヌ・リパッティということになるだろう。前の二人と同様に、今でもその早い死を惜しむだけではなく、CDを愛聴しているひとたちが少なくない。なにしろ亡くなったのが1950年だから、70年も前になるのに、新たな人気を獲得しているようにも思われる。しかし、現在現役で活躍している音楽家のほとんどは生まれていないわけで、実際にリパッティを実演で聴いた人は、ほとんどいないだろう。1917年に生まれ、50年に亡くなったルーマニア人である。しかし、後年はルーマニアには帰らず、母親も病気見舞いとして、ディヌが住むスイスにやってきた母親もスイスに亡命したという。共産化しか体制を嫌ったということだろうか。ルーマニアの演奏家は他にクララ・ハスキルやチェリビダッケがいるが、品格のある演奏をする人が多いようにおもわれる。正直なところ、私個人は、ハスキルのほうをよく聴いたし、ハスキルは好きなピアニストだ。ボックスももっている。
リパッティは、白血病といわれていたが、実際には、ホジキンリンパ腫という病気でなくなったのだそうだ。広義の癌の一種なのだろうが、現在ではかなり治療法が進んでいて、生存率も高くなっている。だから、現在に近い世代であれば、33歳という若さでなくなることもなかったかも知れない。