ルカシェンコは無事か?

 朝日デジタルによると、ルカシェンコがモクスワでプーチンを会談し、その最中に異変が起きたのか、病院に運ばれたという。かなり体調が悪かったことは間違いないから、モスクワまで出向いたのが驚きだ。核兵器搬入の最後のつめに呼ばれたのだろうが、会談から直接に病院搬送というのは、何もなかったとはだれも考えないだろう。
 だれもが考えるが、一緒に食事中に毒をもられたということだろう。ウクライナ侵攻に批判的だったベラルーシの高官が、昨年なくなっているが、ロシアに消されたという噂は耐えない。ルカシェンコも同様に、プーチンの怒りをかって、という可能性はありえないことではない。
 あるいは、最後の抵抗を試みていたところ、プーチンが激怒し、そのショックで、本当に体調が激変して、救急車で運ばれたということも、ないわけではない。かなり体調が悪そうな状態で、少なくとも喜んでいったとは思えないモスクワ訪問で、プーチンに難題を吹きかけられたのだから、どちらの可能性もないではない。

 
 前から疑問に思っていることがある。プーチンは、ベラルーシに核兵器を配備するというのだが、そんなにベラルーシを信用しているのだろうか。もちろん、操作は厳格にロシアがやり、ベラルーシは、配備してあるだけ、使う、使わない、すべてロシアの一存だということで、配備されてもベラルーシが核兵器を、自分たちの意思で使うことはできないとしても、ベラルーシに革命がおきて、反ロシア、親欧米の政府ができないとも限らない。実際に前回の大統領選挙は、ルカシェンコは敗れていた可能性が大きく、反対運動をしていたひとたちが退いたのは、ロシアが軍を派遣して威嚇したからだ。ロシアの軍隊の威嚇は、威嚇に留まらない。しかし、今革命が起きたとしたら、ロシアはベラルーシの鎮圧に軍隊を動員できるのだろうか。
 ロシア人の間にも、反プーチンの軍事組織ができて、実際にロシア領内にはいって、軍事活動をしていた。ロシア政府は、鎮圧したといっているというが、実際には鎮圧できていないことは、映像からあきらかだ。ベラルーシ人は、ウクライナに義勇兵としてはいって、ロシアに対してたたかっているひとが少なくないらしい。もし、ベラルーシで革命情勢になったら、反ルカシェンコで立ち上がるひとはたくさんいるに違いない。もし、ルカシェンコ政権が倒れたら、各が反ルカシェンコ、反ロシア勢力の手に残るのだ。
 逆から考えて、そういう反政府運動が起きないように、核を配備させた可能性は、もちろん低くない。そうやって核を配備し、ロシア側が作動させることができたら、革命が起きたら、核を爆発させる。そうしたベラルーシの新政府などひとたまりもないということになる。しかし、それはベラルーシ人全体を、反ロシアに追いやることになる。
 
 ルカシェンコの体調に戻ろう。現在では、情報はほとんどない。モスクワで入院したという報道も、現時点では朝日しかしていないようだ。(その後共同通信が配信)
 
 まったく逆のみ方をしているのが、筑波大学名誉教授の中村氏だ。彼のみ方では、唯一の盟友に近くなっているルカシェンコを、プーチンは頼りにしており、また大事にしているというのだ。だから、ルカシェンコがいなくなることは、それが政治的失脚であろうと、病死であろうと、ほんとうにこまる。
 しかし、このみ方には、あまり納得できない。そもそもプーチンが、ひとを大事にするなどということがあるのだろうか。ほんとうに心を許して、語り合えるひとなどいないし、また求めていないタイプの人間ではないだろうか。こう思いたくなるのがプーチンだ。ルカシェンコを大事にするのは、他方で、プリゴジンの謀叛を恐れているからだとも、中村氏は語っていた。プリゴジンとウクライナは内通していて、プリゴジンがモスクワに攻めてくると、ロシア国家安全保障会議のパトルシェフは疑っているというのだ。
 
 こうした情報の錯綜があり、実際のところはわからないが、当面ベラルーシが国際情勢の焦点のひとつであることはまちがいない。核兵器の配備がほんとうに進むのかどうかもわからないし、ルカシェンコが生きながらえていけるのか、そうした場合、どちちに情勢が転ぶのか、それぞれに複数の可能性があるように思われる。核兵器の使用にしても、既に途中で打ち落とされる可能性もあるから、発射国で爆発してしまう可能性もあるという話もある。だから、使うときはベラルーシから、とプーチンは決めたのかも知れないし。またルカシェンコが死んだら、どうなるのかかも、不透明だ。
 
 いずれにせよ、ルカシェンコ絡みで、情勢が流動化するだろう。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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