前のブログを書いて、その後もいろいろと調べ、考えているが、山上犯人説には、やはり疑問が残る。そこで、録画してあったが、まだ見ていなかったNHK特集「安倍元首相銃撃事件の衝撃」を見てみた。放映は事件の翌日、7月9日である。翌日だから、掘り下げが浅いことは仕方ないと思うが、いかにも紋切り型であった。しかし、いくつか発見もあった。
現場にいた人が撮影したとされる映像が、何度か流された。それまでNHKの記者とカメラマンが撮影したとされるものでは、一発目の銃撃でカメラマンが衝撃を受け、カメラがまったく統制を失って、まるで意味のないところを映し、その後警護の警官が山上容疑者をつかまえている場面になるという映像が、NHKのニュースで流されていた記憶があるのだが、この現場から提供された映像では、山上容疑者が、安倍元首相の背後から近づいて、一発目を発射し、更に近づいて二発目を発射するところまで写っている。かなりワイドな画面で写っているので、安倍元首相の姿は、鮮明ではないのだが、やはり自発的に台からおりてうずくまる様子がかすかに映っている。
この事件で、誰もが感じる警護の杜撰さを、改めて確認せざるをえなかった。つまり、明らかに背後から安倍元首相のほうに近づいてきて、鞄から何やら黒いものを取り出しているのに、警護が誰も注意しておらず、しかも、一発目が撃たれたあとも、戸惑いが支配しているように感じられる。二発目までには、更に山上は近づいており、2秒程度の間隔があるにもかかわらず、有効な措置が取られなかった。背後を警戒していなかったことは、様々な映像で確認できるのだが、360度開かれている場で演説しているにもかかわらず、これほど背後(一番危険な方向だ)に不注意なのは、何かあるのではないかと疑いたくなるほどだ。(ただし、副島氏は、みんなぐるだったというのだが、前日急遽決まった演説なのだから、奈良県警まで含めた「ぐる」を形成するのは、あまりにも難しいのではないか。やはり、きちんとした意志統一がとれていなかったと考えるほうが無理がない。)
次に不思議に思ったのは、事件翌日の家宅捜査だ。もちろん、その家の前に報道陣が陣取ることは通常のことだが、捜査員が押収した物は、かならず段ボールにいれて運ぶのではないだろうか。ところが、一部だけだが、あきらかに山上が創作したと見られる銃器、しかもかなり大きなものを、捜査員が腕に抱えて、報道陣の前を通っていくのだ。カメラに写してくれといっているようなものだ。大きいといっても、段ボールにはいらないほどのものではない。やはり、山上が犯人で、こんなに銃を準備していたのだ、という印象を国民に植えつけるための演出のように感じられてしまう。
前にも書いたが、一度に6発、それを二度発射しているのだが、誰も流れ弾に撃たれた事実がないというのは、安倍元首相のまわりにたくさんの人がいたことを考えれば、極めて不自然であると、改めて思った。番組では、かなり離れたところにある選挙カーに銃弾のあとがあり、また、銃弾と思われる金属の破片のようなものが、あたりに散らばっていたと説明していた。何故、二発だけ正確に安倍元首相の致命傷となる部分に命中し、それ以外の銃弾は、遠くの車や路上に散乱するのか。そういうことは、武器の専門家というひとたちが登場して、銃へのコメントをしていたが、その肝心な疑問点については、まったく触れていなかった。
それから、山上は、銃を取り出して、かなり無造作に撃っているように見える。そして、火薬の力で金属を撃ちだすわけだから、一瞬でも閃光が見えると思うのだが、それが映っている動画を、私はまったくみていない。どれも、煙があがっているだけだ。
こうしたことを考えると、山上が犯人であることが不自然であったとしても、自供していることだし、そこに疑いをもたせないようにしているのか、あるいは、疑いなどまったくもたずに、山上が犯人であることを信じきっているのか。番組に出ている人たちを聞いていると、後者であるようだが、事態を批判的に吟味するという、ジャーナリストとしての矜持をあまり感じられない。
東大名誉教授の御厨氏がコメントしていたが、民主主義は言論で維持すべきものだという、極めて一般論を語っていただけだった。当然、「特定の宗教団体」が統一教会であることは、政治学者なのだから知っていたろうし、統一教会こそが、民主主義や市民の生活を破壊させている団体であることも、承知していただろう。安倍晋三氏と統一教会がずぶずぶの関係であったことも認識していたはずである。表面的には民主的な選挙によって選出されていたが、その背景では民主主義を愚弄する形で形骸化していたことは、ずっと指摘されていた。確かに許されないことではあるが、個人としてのぎりぎりの抵抗であったことも、否定できないし、そうした抵抗に至ってしまう政治のあり方を、少しも触れない御厨氏のコメントには、がっかりした。
NHKの番組とは関係ないが、銃弾が体内にひとつしかなかったと報道されている。二発があたったはずなのだが、一発しかない。しかも、貫通してあともないそうだ。また、病院で治療した医師が、頸部から心臓に達するように撃たれたと発表していたのだが、確かに、山上が本当に撃ったのだとしたら、そういう軌道で銃弾が体内を進行するというのは、まったく不自然である。副島氏は、体内に入ると溶けてしまう銃弾を使ったといっているのだが、そんな銃弾があるのだろうか。
謎は深まるばかりだ。弁護士がどのような法廷戦術をとるのか、注意しておきたい。